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Puzzle Project連載インタビュー② なきそ・皆川溺「やりたいことを突き通せる」ボカロシーンの未来にむけて

パソコン・スマホを使った音楽制作(=DTM)を行うクリエイターを支援するプラットフォームとして、各種サービスの開発を進めるSoundmain。その観点から、インターネットを活用して自身の作品を発表している次世代アーティストをサポートするソニーミュージックの新プロジェクト「Puzzle Project」に注目した連載インタビューを実施中だ。

多数のエントリーから選ばれた10組のアーティストに焦点を当てる本連載の第2回には、なきそさんと皆川溺さんに登場いただいた。皆川さんは10代、なきそさんは20歳になったばかりというお2人に、それぞれのルーツや曲作りの方法論、ボカロシーンの今に対して思うことなど、幅広く語ってもらった。

取材・文:柴那典

Puzzle Projectインタビュー連載 記事一覧はこちら

プロフィール

なきそ

2018年1月よりボカロPとして活動開始。
実体験にフィクションを織り交ぜた生々しく重たい色恋沙汰を主題とすることが多く、儚い世界観や美しく特徴的な語彙と表現に定評がある。
代表作は「花めかない」「今は限り」など。

YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC7d3Y_v5O202eo006uvvPzw
Twitter: https://twitter.com/7kiso_nakiso

皆川溺

ボーカロイド・ネット発のアーティストを聞いていたことから、一昨年の6月より制作開始。
活動当初は「23次元P」という名義で活動していたが、2020年7月に現在の名義に改名し、本格的に活動を始める。
映像編集やアートワークも自身で制作するなどマルチに活動している。

YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCAFdAoSrsbf7IZvcAzny6ug
Twitter: https://twitter.com/23dimensionsP
Instagram: https://www.instagram.com/23dimensionsp/

なきそ・皆川溺 インタビュー

お二人が音楽を始めたきっかけは?

なきそ もともと幼稚園の頃からエレクトーンをやっていて。そこからピアノをやって、その後に初音ミクを買って、ボカロに手を出した感じです。

皆川溺(以下、皆川) 自分は中学1年生の頃からずっとボカロを聴いていて、作り手側に回ったら楽しいだろうなと思っていて。何か表現したかったので、それで身近にあったボカロから始めてみようと思ったのがきっかけです。

リスナーとしての音楽の出会いはどうでしょうか?

皆川 音楽を聴き始めた頃の記憶で言うと、小5の時に星野源さんの『YELLOW DANCER』とRADWIMPSの『人間開花』というアルバムを親が買って、その2枚をよく聴いていました。それが一番の根底にあると思います。

なきそ アーティストとして好きだと最初に感じたのは、マキシマム ザ ホルモンでした。父親がそういうタイプの音楽が好きで、『予襲復讐』というアルバムをスマホに勝手に入れられていて、それをひたすら聴いていました。ただ、基本的に人間がボーカルの音楽はマキシマム ザ ホルモン以外聴いていなくて。中高生のときは基本ボカロで有名なやつを聴いていました。

ボカロで言うと、どのあたりがご自身のフェイバリットでしたか?

なきそ 小学校の高学年くらいからボカロを本格的に聴き始めたんですけど、その時ちょうど「カゲロウデイズ」のじんさんが有名な時で。カゲプロ関連の曲が一番好きでしたね。「夜咄ディセイブ」とか、ギターが格好よくて好きです。

皆川さんはどうでしょうか?

皆川 小5くらいからボカロを聴き始めたんですけど、自分も最初に聴いたボカロ曲は「カゲロウデイズ」ですね。そこからニコニコでDECO*27さんの曲とか100万再生超えの有名な作品をずっと聴いていました。でも、中学に入ってから一旦ボカロから離れたんです。そこから音楽自体もあまり聴かなくなって。めちゃくちゃたくさん音楽聴いていた感じではなかったです。(ボカロに対しては)ミーハーでしたね。

離れていたということは、そこから戻ってきたきっかけもあったんでしょうか?

皆川 1年くらい離れていた気がするんですけど、米津玄師さんの「LOSER」を聴いて、かっこいいなと思って。そこから米津さんの経歴を調べて、もともと「ハチ」という名義でボカロPをやっていたことを知って、そこからまたボカロを聴き始めました。それこそマイナーなところ、再生数3桁台の曲とかも聴き出して、その流れで作り手側になったという感じです。

なきそさんはどうでしょう? ここ数年での聴いてきた音楽の広がりや変化はどんな感じでしたか。

なきそ ボカロを投稿し始めたのが高校1年生の終わりのあたりなんですけど、その頃から自分が投稿する時にニコニコのランキングをチェックするようになって、有名な曲以外も聴くようになりました。また、高校3年生くらいから、椎名林檎さんと東京事変とか、おそらくボカロPが影響を受けてきたであろうアーティストも聴き始めました。

なきそさんが投稿を始めたのにはどんなきっかけがあったんですか?

なきそ 小学生の時からボカロPになりたいと思っていたんですけど、中学1年の時に初音ミクを買ってもらって。そこから頑張って使い方を覚える期間が高校1年生までありました。高1の時に一瞬吹奏楽部に入ったんですけど、それを辞めた時に「吹奏楽部を辞める代わりに、ボカロPとして音楽を頑張っていこう」と思って投稿を始めました。

上の世代のボカロPにはもともとバンドをやっていた人も多いですが、なきそさんは最初からボカロPに憧れていた?

なきそ そうですね。バンドを組みたいとかそういうのは一切なくて、ボカロPになりたいとずっと思っていました。

皆川さんが投稿を始めたきっかけは?

皆川 自分はボカロの初投稿が13歳のときだったんですけど、その時期って誰しも「自分を見てくれ」みたいな欲求があるじゃないですか。自分もそういう気持ちで曲を作り始めて。作り始めてから、すぐ投稿したと思うんですけど、自己顕示の欲求がそのまま形になっていたので、衝動的な初投稿だったなと思います。

なきそさんは初期からひねりのある、言葉にもこだわりもある曲調ですが、最初からテーマやコンセプトは考えていましたか?

なきそ 初投稿は適当に作った変な曲なんですけど、その次の「アザレアシティ」からは今のスタイルになっていると思います。でも、特に考えてはいなくて、自然とそういう形になった感じがします。その頃は椎名林檎さんとかも全く聴いていなくて、いわゆる“丸サ進行”(注:丸サ=椎名林檎の楽曲「丸ノ内サディスティック」のこと)みたいなのも全く知らずに使っていて。その後から椎名林檎さんを聴いたので、どういう影響を受けたのか、自分ではよくわかっていないんです。

投稿した曲に「椎名林檎さんの曲っぽい」って言われて、初めて聴いてみた感じだった?

なきそ そうですね。「似てるね」と言われて聴いてみたらめちゃめちゃかっこよかった、みたいな感じです。

皆川さんはどうでしょうか? 最初に投稿したときには、どんなことをやりたい、どんな音楽を表現したいという衝動がありましたか。

皆川 最初に出した曲は、今は(ウェブ上からは)消しちゃったんですけど、King Gnuの「Flash!!!」という曲をめちゃくちゃ聴いていた時期に作った曲で、「Flash!!!」の猿真似みたいになっちゃった曲なんです。その曲は般若心経のサンプリングから始まるんですけど、そのインスピレーションが湧いてきたのが、曾祖母が亡くなってお葬式に行ったときのことで。お坊さんが3人くらいで般若心経を唱えていて、それがかっこいいなと思って、それをそのまま曲にしたんですね。後々聴いたら意味わかんないエピソードだと思うんですけど(苦笑)、始めたばかりだったので、他のアーティストの真似をしつつ、自分のわけのわからない衝動の部分を含めた感じで作っていましたね。

その曲はもう消してしまったということですが、ウェブ上に残っているもので最古の曲は?

皆川 YouTubeに残っている、「立入禁止閲覧注意」という曲ですね。この曲は2年くらい前に作った曲で、歌詞がいわゆるボカロらしい毒づいた歌詞で。自分なりに「ボカロらしいもの」を作りたいという気持ちがあって、がむしゃらに作った曲です。

皆川さんは投稿した曲の感想や反響を受けて、「自分ってこういう感じなんだ」みたいにだんだん気付いていったような感覚はありますか?

皆川 自分がどういう音楽を作っているのかは、正直に言うと、まだわかっていないです。曲を作るに当たっての衝動は最初からあるんですけど、自分の曲の色がまだわかってないっていうのが悩みではあって。でも、逆にそこが自分の曲らしさなのかなと思ったりしています。

なきそさんはどうでしょう? 「この方向性は自分らしさになっている」と気付いていった感覚はありますか。

なきそ ずっとバンドサウンドの曲を聴いていたので、最初はバンドサウンドっぽいものを作っていたんですけど、最近はトラップっぽいものも作り始めたので、編曲の面ではそういう変化があったりします。ただ、「失恋」みたいなものを曲にしようというテーマだけは一貫してやっているかなと思います。

今おっしゃった「失恋」とか、ダークなモチーフを曲にするというのは、どういう風にしてご自身のコンセプトになっていったんですか?

なきそ 僕が今音楽をやっている理由みたいなところに繋がってくると思うんですけど、「自己表現をひたすらしたい」というのが根底にあるんです。自分にとっての自己表現というのが「失恋」みたいなことを歌詞にして、曲にして、作品として発表することだったので、そういうコンセプトに自然になっていったのかなという風に思います。

「毒して頂戴」ではトラップビートを打ち出していますが、これはどういったアイデアから?

なきそ 柊キライさんの「ボッカデラベリタ」とか、syudouさんの曲全般とか、トラップの風味が強い曲を聴いてかっこいいなと思ったんです。あとは、今までバンドサンドの曲を作っていて全く伸びなかったので、新しいことをしなくちゃいけないと思ったというのもありました。それで、最近かっこいいと思っているトラップにチャレンジしてみようかなと、ボカロ以外にもトラップっぽい曲をいろいろ聴きあさって、取り入れた感じですね。

楽曲制作の方法についても聞ければと思います。たとえばビートから作るのか、メロディから作るのか、弾き語り的に作るのか、人によっていろんなやり方があると思うんですけど、なきそさんはどういうスタイルでやっていますか?

なきそ 歌詞は日常的に考えていて、思いついたらiPhoneのメモに取るということをやっています。その中で良いメロディと一緒に歌詞が浮かんでくるものもあるし、言葉のアイデア的が先なものもあるし……いろいろあるんですけど、そういうものをまずボカロで打ち込んで作るやり方です。まずメロディを打ち込んでから、その後にコードをつけたりしています。Aメロとかはビートとかコードを先で作ったりすることもありますけど、サビはメロディ先という感じですね。

皆川さんはどうでしょうか?

皆川 大体のBPMを決めて、基本的にリズムから作ります。楽器の中で一番かっこいいのはドラムだと思うんです。だから、一番かっこいいと思うドラムから打ち込んでいって――最近は打ち込み系のドラムのサウンドも取り入れているので、そういったものも打ち込みながら――ドラムサウンドだけで聞いてもかっこいい状態になってきたら、ギターを入れて行くという形で作っています。

皆川さんの曲は、「ラディカリズム」とか「青」とか、ギターのノイジーさが曲のフックになっていると思うんですが、ギターはどんな風に入れていますか?

青 – 皆川溺 feat.Eye

皆川 ギターは全部自分で弾いていて。自宅でラインで録って、アンプシュミレーターで音を作っているんですけど、自分はギターが上手くないのでコピー&ペーストしたりしていて、録音の仕方は雑なんです。イントロで使ったリフをそのまま間奏に付けたりして、実はちゃんとは弾いてないんですけど、そこが打ち込みっぽい曲調にも合っているのかなと思います。

最近はボカロ界隈で、リリースカットピアノというのが流行っているじゃないですか。

残響音のないピアノですよね。

皆川 あれと同じ感じで、「リリースカットギター」とはまでは行かなくても、ギターの音をマイクロサンプリングみたいに切り貼りして、普通とは違った音にするということをやったりしています。

なきそさんは、皆川さんにお話ししていただいたような音色のこだわりとか、あるいは曲調とか構成とか、自分なりのアイデアみたいなものはありますか?

なきそ 最近やっているのは、リバーブをボーカル以外ほとんどかけないということです。僕はどちらかと言うと、打ち込みの中でもEDMっぽい派手さが嫌いで、スタイリッシュな感じ、最近だとビリー・アイリッシュみたいな洗練されたかっこよさを目指しているというのもあって。あとは硬い感じの音が最近は好きなので、コンプレッサーの「OTT」を使って、音をできるだけ硬く、粒感がある感じにしています。

ソフトウェア音源は、どんなものを使っていますか?

なきそ 基本的には、NATIVE INSTRUMENTSのKOMPLETEに入っているものを使っています。生音っぽいものは、MODO BASS、MODO DRUMです。シンセだとSerumを最近は使っていて。それらに加えてSpliceのサンプリング素材もよく使っています。

バンドサウンドとトラップビートで手法は違いますか?

なきそ 全然違いますね。パッと作れちゃうのはバンドサウンドなんですけど、どっちかと言うと打ち込みっぽい、トラップっぽい曲の方が自分には合うのかなと思っています。

皆川さんはどうでしょう?

皆川 「基本的にこのプラグインや音源を使ってます」みたいなものはないんですけど、自分は歪みが好きなので、DAWに付属のビットクラッシャーをよく使っています。あとはSpliceのサンプルをところどころ入れたりもしています。

皆川さんはTHIS IS JAPANの「new world」のリミックスを手掛けたり、「青」のEyeさんが歌ったバージョンが出たり、いろんな人と作る経験が最近広がっていると思うんですが、このあたりはどんな感じですか?

皆川 今までずっと一人で作ってきたこともあって、特にリミックスをやった時には(やれることの)「狭さ」は感じました。自由がきかない部分もあって、でも逆に制限があることで、その中で「ここをこういうパターンもあるんだ」とか、そういう発見もあって。人とやることによって小さい枠の中でも深さがあるという発見もあって、勉強になりました。

特にバンドの曲を素材に料理するというのは、今までやってきたこととは違う作り方ですよね。

皆川 リミックス自体初めてなので、「どうなるんだろう」と思いながら、前も後ろも分からずやっていました。このリミックスは作り始めてから2週間ぐらい何もできなくて、ずっとDAWと顔を突き合わせて「これも違う、あれも違う」って、苦し紛れにやった結果できたものなんです。でも、その中でも自分の色を出せて、楽しくやれました。

なきそさんは、ロスさんが歌唱した「げのげ」など、ここ最近で作風がさらに広がっている感じがします。

なきそ – げのげ feat.ロス

なきそ 僕は最近のボカロシーンの傾向があまり好みではなくて。自分なりの回答的な編曲とか作詞をするということを、一番に念頭に置いてやっています。さっきも言ったようにマキシマム ザ ホルモンが元々好きで、ロックをずっと聴いていたことが大きいのもあって、曲に対しての思いとか表現こそ音楽だと僕は思っているんですけど……ボカロって、もともとはそういう側面が強かったと思うんですね。商業音楽とは違って自分のやりたいことをやっている、そういう感じで育ってきた部分があると思うんです。

でも、最近のボカロシーンは、流行りをひたすら皆繰り返すみたいな傾向があって。さっき話に出たリリースカットピアノとかは代表的ですけど、YOASOBIさんっぽいサウンドとか、ローファイっぽいサウンドとかを、ただ流行っているからやっている、と感じてしまう曲が多いように感じるんです。

それに対して、自分は自己表現としての音楽を貫きたいというのが一番にあります。ボカロの中ではトラップなんて全然流行ってないですし。歌詞も最近だと、TikTokの派生や、「歌ってみた」とかを念頭に置いたようなキャッチーでポップな感じの歌詞が流行っていたりするので、だったら自分はもっと大人っぽくて詩的な歌詞にしようという風に思って作っています。

この先やってみたいことについても訊かせてください。クリエイターとして幅を広げてみたいとか、たとえばライブをやってみたいとか、この先に考えていることはありますか?

なきそ バンドの経験はないので、ライブをしたいという気持ちはあまりなくて。これからも動画投稿を続けていきたいなと思っています。目標を言うと、流行りに流されないで、自分を貫いた音楽をもっと流行らせたいというのがありますね。「流行りに乗らずして、それを流行らせる」みたいなことをやりたいなと思っています。

皆川さんはどうでしょうか?

皆川 今のなきそさんの話、めちゃくちゃわかります。自分も一番やりたいものをやれていると思うし、それを突き通さないといけないな、という義務感みたいなものがあって。流行りというか、「これをやれば伸びるよ」みたいな、そういうのに傾くのは自分に負けている気がするので、そういう意味でも自分のやりたいことを突き通せればいいなと思います。

あと最近、カネコアヤノさんとか、羊文学さんとかを聴いているんですけど、優しい、生活に寄り添った曲みたいなものも新しく作っていけたらなと思っています。そういう音楽も作っていけたら、より一層音楽家として強くなっていけると思うので、チャレンジしていきたいですね。

「Puzzle Project」とは?

「Puzzle Project」は、次世代アーティストの音楽性・楽曲・世界観とソニーミュージックグループが持つソリューションを掛け合わせ、作品を世界に広げていくプロジェクト。プロジェクト参加アーティストには、小説を音楽にするユニット“YOASOBI”を誕生させた小説投稿サイト「monogatary.com」によるクリエイティブサポートや、世界に45ヵ国以上の拠点があり、2019年より日本でサービスを開始した大手音楽ディストリビューション会社「The Orchard」での世界配信サポートが行なわれる。また、その他ソニーミュージックグループが持つさまざまなソリューションを活用し、楽曲制作、映像制作、ライブ制作などのクリエイティブサポートなどが行なわれる。

公式サイト
https://puzzle-project.jp/

随時エントリー受付中。エントリーはLINE公式アカウントより。
https://lin.ee/cPUfl4c

参加資格

  • インターネットを活用し自身の作品を発表している方
  • 年齢不問
  • 国籍不問 ※日本国内在住の方に限ります

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