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長く現役でいたい人ほどインディペンデントな活動を――エンドウ.(GEEKS、月蝕會議)が語る、コロナ以後の音楽クリエイターのあり方(インタビュー後編)

ミュージシャンのエンドウ.さんがSoundmain Blogに二度目の登場!

エンドウ.さんは「GEEKS」「月蝕會議」といったバンドでの活動のほか、「ももいろクローバーZ」「Hey!Say! JUMP」「ヒプノシスマイク」「セーラームーン」など様々なアーティスト、コンテンツに楽曲を提供。最近では1月27日発売の声優・小林愛香さんの2ndシングル『Tough Heart』収録曲「Lorem Ipsum」の編曲、また2月11日に公開の『劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」』《後編》の挿入歌「Moon Effect」の作詞・作曲・編曲を手がけられています。

劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」《後編》予告映像

そんなエンドウ.さんは、一般社団法人 日本音楽作家協会(MCA)という団体の代表も務めています。MCAは、システムや音楽ソフトウェアの発達により、インディペンデントな活動形態で生計を立てられるようになってきた時代を見据え、音楽クリエイターの著作権等に対する意識を高めることを目的とした団体です。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、すべての音楽クリエイターが自分の音楽との向き合い方をいま一度考えさせられたであろう2020年。
エンドウ.さんと一緒にあらためて激動の一年を振り返るとともに、今こそ学び直したい音楽家の権利についてお話を伺いました。

後編は、長く現役で音楽を続けていくために必要なインディペンデントな活動の方法や、これから職業ミュージシャンを目指す人たちに覚えておいてほしいことなどについてのお話です。

▼前編はこちら▼

インディペンデントな活動をするべき理由

現在の音楽業界で見えている課題はありますか。

ほとんどの作家やミュージシャンが、レコード会社や事務所、プロダクション、出版社からのお仕事で世の中に羽ばたいていくじゃないですか。でもそういう形でずっとやっていると、クライアントと下請け企業の関係になってしまうわけです。「ここから仕事もらえなくなったらクリエイターとして終わりだ」とならないために、色々な所と仕事をしておくのがいいんですけど、その中の1つとして、インディペンデントな活動手法をどんな作家でも持つべきだと思っています。

たとえばタレントさんが続々独立していたりするじゃないですか。インターネットを活用して、1人でも可能な活動の幅が広がっているから、ほとんどのクリエイターが本当の意味で個人事業主になっていくと思うんですよね。となると、ますます作家団体だとか業界団体に所属していることで得られる情報や恩恵は大きくなると思うんです。

人気作家の中にも、売れっ子だからこそ自主制作、原盤を自分で作ってSpotifyに配信してという個々のインフラを整えている人たちがいっぱいますね。売れっ子になればなるほどレコード会社とかテレビ局とかの仕事が中心になっていくわけですけど、それらの会社がなくなってしまったら、自分の仕事もなくなるので。

インターネットを活用する場面は、コロナをきっかけに加速しましたね。

そうですね。何かしなきゃというところで、楽曲を作ってネットで発表しようって思った人もいっぱいいますしね。

たとえばメジャーレーベルの楽曲コンペで1曲採用されたとしても、その曲の著作権印税が1年間に100万円稼いでくれるかというと、ヒットしない限りそんなことはなかなかないんですよ。

キャリアのスタート時には、とにかく作家としてデビューしたり作家としてリリースしたりということがまず目標になる。でもある時気づくんです。コンペばかりやって曲を出せたとしても、「あれ、これだけしかもらえてない」とか、そういうことに。世の中の音楽全てが売れるわけじゃないので。

でもたとえばボツ曲を自分自身でネット投稿していって、結果1曲でもバズれば自分の収益につながるわけじゃないですか。誰からもマージンを取られずに。

クリエイターとしての持続可能性という意味でも、インディペンデントな道を作っておくことは重要だということですね。

音楽作家の作家売り上げ年間ランキング100みたいなのを見ると、20代が少しで、ほとんどが30代40代なんですよ。逆に50代でバンバン現役でやれていれば、それはもう奇跡的なレアケースなんですよね。

特に日本の商業音楽、いわゆるメジャーなポップシーンで重用されるのは40代までというのは見えています。40代と20代で同じクオリティの曲を作る人がいたら、ディレクターは全員20代にお願いしますからね。年下の若い奴をコントロールしながら「教えてやるぜ」みたいなノリで仕事したいに決まってますから(笑)。

とにかく我々音楽作家の賞味期限って意外ともの凄く短いんですよ。TikTokやTwitterやYouTubeとかで若いクリエイターがどんどん出てるのを見ると、ますます業界全体が今後若返っていくと思います。でも多くのクリエイターは一生音楽を楽しみたい、なるべく長く続けたいと思ってこのシーンに入ってきている。そこで、インディペンデントな戦場ならば意外と若手やベテラン関係無くチャンスがあったりもする。

作家活動を始めた瞬間にできること

今までの話を踏まえて、これから作家として活動していきたい人が今すぐ出来ることには何があるでしょうか。

前のインタビューでも言いましたけど、作家として手がけた音源がリリースされるのと同時に、著作権印税の分配をしっかり受け取るため、まずJASRACに入会する。特に演奏権の分配が出版者を通さずに自分で直接受け取れますから。そして著作隣接権の分配金をもらうために、MPNにも入る。

……と言うとみんな構えちゃうんですけど、ただ名前を登録して、お金を分配してもらう権利を得るというだけです。JASRACやMPNの管理下に置かれて縛られてしまうとか、そういうことはないです(笑)。自分のお金をもらえる仕組みを確立しておくということですね。幸い両方入るのはタダですし。

エンドウ.さん

あとこれも繰り返しになりますけど、自分に適した作家団体、もしくはプレーヤー・ミュージシャン・アーティスト系の団体に1つ入っておくと、何かあった時に相談に乗ってくれます。本当に1人でポツンと宙ぶらりんになった時に、周りに相談出来る人がいて情報を得ることが出来るというのは大事ですよ。団体というものを利用しない手はありません。

その後はもうひたすら音楽を作って何らかの形で公開する。インターネットでも路上ライブでも、何か収益につながる道を探していってください。

ここまで作家という目線でお話を聞いてきましたが、いわゆる顔出しの、アーティスト的な活動をしている人についても考え方は同じでしょうか。

同じですね。そういう人のための団体もありますし、たとえば芸能人アーティストだったら芸能人保険だってありますし、実演家の団体もいくつかあります。この先おそらくYouTuber、VTuberの団体もできるでしょうね。

アーティストから作家になる人もいるので、自分の活動範囲を見極めて、入るべき団体に入ることが必要なわけですね。

そうですね。もともとシンガーソングライターだったけど、他のアーティストに楽曲提供して生きていくようになったという人は今いっぱいいますし。そういう人たちは早いうちに状況を整えておいた方がいいです。分配系の団体に入っていれば何年も遡って著作権使用料を配分してくれたりするんですけれども、あくまで所属してから以降の範囲に限られている場合もありますし。

MCAの会員数は増えているんでしょうか。

最近は文化庁の支援策の確認番号発行団体になったのをきっかけに増えましたね。自身の著作した楽曲の第三者利用がある事が入会の条件なんですが、JASRACのJ-WID(ジェイウィット)というデータベースを調べるとそこに名前が載っている方々もたくさん入ってきて下さってます。

団体に入っていると、支援策が始まった際に通知が来たりもするんでしょうか。

そうです。今回の文化庁支援についても、世の中に発表される前に僕らの団体の会員はみんな知っていたんですよ。行政側が「何かやるよ」となったとき、僕らクリエイター1人1人に届けられないので、団体をまとめる協会みたいなのに一斉に通知が届いて、その後各団体に連絡がいく仕組みになっているんです。こういうつながりがあるのは団体ならではの強みでしょうね。

これから会員の間口を広げるために、どういった施策を考えていますか。

直近では2月に代々木上原のけやきホールで「音楽クリエイターのための権利勉強会」という大変手作りなイベントを入場無料でやりますので、お近くにお住まいの方はぜひ来てほしいですね。

権利周りの話は、クリエイターの間でも需要は高いですか?

そうですね。この間も友達のクリエイターに聞かれて著作権の話をしたんですよ。「結局僕らのもらえる額って売上の6%なんですか」と言うから、「CDはそうだよ、でも全然テレビとかラジオとかは全然考え方が違うんだよ」と言うと、「えーっ!」とすごく驚かれて(笑)。

あとは「JASRACから印税もらえるんですよね? JASRACのそのお金ってどこから出てるんですか?」と言うのに「それは放送ならテレビ局が年間の売り上げの1.5%を納めてるんだよ……」とか、そういうところからよく説明しています。でもみんな知らなくて当然ですよね。勉強してなかったり、団体に所属してたりしない限りは。

これからのクリエイターのための「最低限セット」って?

ビジネスとクリエイティブは別の仕事だと言われてきた部分もあるかと思います。

それはもう極めて日本的で。海外であれば芸能事務所とかもないわけじゃないですか。タレントやクリエイターひとりひとりが自分のエージェントを立てて、ちゃんと個人事業主であることを自覚している。ビジネス的なことがわからないとか、周知が徹底されてないのはいかにも日本の音楽クリエイター業界の良くないところだなと思いますね。

リスナーの「お金を落とす」というフレーズがありますよね。クリエイターになるべく配分されるような形でお金を使いたいという意味で。

そうですよね。コロナで大変な時期だからこそ、好きなクリエイター、アーティストにお金を届けたがっているという声を聞きます。でもリスナーの皆さんがちゃんとお金払ってるのにクリエイターに届かないのは、多くの場合クリエイター側に原因があったりします。

えっ、そうなんですか?

クリエイター本人の無知が原因だったりしますね。受け取る方法というのはもう既に整備されているのにみんな気づいていない。お役所系とか、JASRACのような団体もそういう道筋は用意してるのに、クリエイター自身がちゃんと登録していないとか、そういうことが大半だという印象はありますね。

なるほど……そういった意識を持って活動している人って、エンドウ.さんから見てどなたかいらっしゃいますか。

誰かな……Soundmain Blogにも登場していた林ゆうきさんは色々考えていらっしゃると思いますね。

まさに作家として大きな仕事をいくつも手掛けながら、インディペンデントに自分の音楽を届けることも積極的に実践されている方でした。

エンドウ.さん

どんな音楽クリエイターもみんなやらなきゃいけないところではあると思うんですよ。加えて積立NISAとiDeCoは一応やっておくとか(笑)、小規模企業共済とか、法人化した場合は必ず経営セーフティー共済に入るとか……明日も知れない身なので、「個人事業主クリエイターオススメセット」みたいなのをちゃんと全部やっとかないと(笑)。

エンドウ.さんによる「個人事業主クリエイターオススメセット」

※オマケ

そういった備えは、若い頃からしていたほうがいいですか?

大抵、ある程度落ち着いてからこういうことを考えるんですけど、それは非常にもったいない。自分のキャリアがスタートした瞬間にやってほしいんですよね。

「まずはいい作家事務所に所属して頑張らないと」というのは、それはそれで全然いいんです。ただ目標に足が掛かった瞬間に準備を始めておいてよ、とは思いますね。こういうと後半戦に入った人からのアドバイスみたいに聞こえるかもしれないですけど(笑)、生活を安定させるために工夫するのは、すべて大好きな音楽を長く続けていくためですから。

音楽を長く続けるため……こういったことは現場では教えてもらえないですよね。

この間専門学校のオンライン授業で講義させて貰った時も、他の授業はみんな「DAWを立ち上げて、一曲ここで打ち込んでみましょう」といった内容でした。そんな中僕は1回もDAWを立ち上げずに、パワポでずっと音楽でどうやって喰っていくかという話をしたんです(笑)。

「あなたたちはボカロPや歌い手になりたいとのことなので、皆さんがこの先どういう人たちと出会うことになるかを一個ずつ説明します。まずプロデューサーの仕事って何だか分かる? ディレクターとの違いは? A&Rとか、レコード会社が何するところなのか知ってる? 事務所とは違うんだよ」とかそういう話をして。

それが終わったあとにお金周りの話、「君がアーティストだったら固定給かもしれないし、歩合給かもしれないし、それとは別にCMが決まったとかで特別報酬とかもあったりする。それ以外ではグッズ売り上げの何%とかライブのチケットからの売上はどれくらいだとか、作詞家だったらリリースされた作品の作詞の印税だけで生きてるんだよ」みたいな話をして。そうしたら「初めて聞きました!」って言う人ばかりで喜ばれましたね。

ある意味、非常にリアルな反応ですね。

目に見えているモノを売る商売ではないから想像しづらいんでしょうね。八百屋さんが何で食べてるのかと聞かれたら、まあわかるじゃないですか、野菜1個いくらで売ってというのを。それが音楽だと難しいみたいですね。

だから若い人たちと接する機会がある際には、「もちろん音楽家を目指すのはいいんだけど、自分が目指そうとしている“商売”がどういうものかだけは、別に細かい金額は知らなくていいから、なんとなく仕組みだけでも知っておいた方がいいよ」と伝えてます。全然華やかじゃない部分も当然あるんだよ、と。

エンドウ.さんは、音楽を志す人にとって今はいい時代だと思いますか。

思います。爆発的なヒットが生まれる歌謡曲時代とは違うけど、色んなところで小さな活躍をみんなができる時代になったので、それこそタクシードライバーをやりながらシンガーソングライターをやって、そっちでの収入もあるとかいうのができるようになると思いますし、そこから認められて一発逆転して大ブレイクする人もどんどん出てくるでしょうし。日本の商業音楽シーンでは若手が活躍していますが、若くはないクリエイターがインディペンデントな活動で評価されていくという例も実際にあります。

だから繰り返しになりますけど、これから少しでも音楽でお金を稼ぐということを考え始めた人には、みんなどこかの団体に入って欲しいなと思います。もちろん僕も頑張っていきますけど、常に組織として新陳代謝し、現場に立っている音楽クリエイター達が声を上げ続けていくことで、より正当な対価を得られるようになっていく。

だからこそMCAでも、売れてる・売れてないは関係なく、現役で音楽を作って活動している人たちと出会っていきたいですね。

Interview & Text:岩永裕史、関取大(Soundmain編集部)

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