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集まって声を上げれば政治にも届く――エンドウ.(GEEKS、月蝕會議)が語る、コロナ以後の音楽クリエイターのあり方(インタビュー前編)

ミュージシャンのエンドウ.さんがSoundmain Blogに二度目の登場!

エンドウ.さんは「GEEKS」「月蝕會議」といったバンドでの活動のほか、「ももいろクローバーZ」「Hey!Say! JUMP」「ヒプノシスマイク」「セーラームーン」など様々なアーティスト、コンテンツに楽曲を提供。最近では1月8日に《前編》が公開される映画『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』主題歌「月色Chainon」(歌:ももいろクローバーZ)の編曲や、1月13日発売のTVアニメ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』音楽集『Straight Outta Rhyme Anima』で2曲の作編曲を手がけられています。

劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」《前編》予告映像60秒
ヒプアニ音楽集「Straight Outta Rhyme Anima」TVCM

そんなエンドウ.さんは、一般社団法人 日本音楽作家協会(MCA)という団体の代表も務めています。MCAは、システムや音楽ソフトウェアの発達により、インディペンデントな活動形態で生計を立てられるようになってきた時代を見据え、音楽クリエイターの著作権等に対する意識を高めることを目的とした団体です。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、すべての音楽クリエイターが自分の音楽との向き合い方をいま一度考えさせられたであろう2020年。
エンドウ.さんと一緒にあらためて激動の一年を振り返るとともに、今こそ学び直したい音楽家の権利についてお話を伺いました。

前編は、エンドウ.さんが実際に調べてわかった各種補助金の制度や、MCAのような団体に入るための最初の入口についてのお話です。

コロナ禍の中で実感した働き方の変化

Soundmain Blogに2回目のご登場ありがとうございます!

こちらこそありがとうございます! 光栄です。

前回のインタビューからちょうど1年が経ちましたので、その間を振り返りつつ、今回はこれからのクリエイターの未来の可能性に触れられたらと思います。

2020年はあまり記憶がないですね(笑)。コロナ禍が始まって、自分も3、4、5月とバタバタしていて。2月の終わりに予定していたライブが急遽なくなって、そこからどんどんキャンセルが続きました。たまたま親族のつてで山奥に引っ込めたので、僕はコロナ騒ぎとは関係ない暮らしをしていましたね。

機材も持って行かれたんですか?

そうですね、制作機材も向こうに持っていって、8月頃までは隙さえあればずっと山にいたという感じで。それでもう本当に東京にこだわる必要はあまりないんだなってことを、ひしひしと感じましたね。

リモート環境で仕事をする習慣もこの期間に定着しましたね。

制作の仕事はもともとリモートワークみたいなものですけど、打ち合わせだけはレコード会社等に行かなければいけなかったので、オンラインミーティングが当たり前になって助かりました。

コロナがいつか落ち着いた後も、初めてのお相手と仕事をする場合などは地方スタートでは難しい部分もまだあると思うんですけど、ある程度関係性が出来ればもう田舎に引っ込めるんだろうなと思います。

たとえばミックスチェックとかも、信頼しているエンジニアであれば大体コンセンサンスが取れているものなので。「とりあえずスタジオに顔を出しておく」みたいなことをしなくて済みますし、オンラインチェックが当たり前になると凄く助かります。

一方、バンドという関係性においては対面でのコミュニケーションが重要だったりするようにも思うのですが。

そうですね。バンドに関しては、やっぱり集まらないとなかなか難しいです。ファイルを送って「確認しておいてください」とかいったのではない、その場でどんどん進んでいく感じというのは、自分もひさびさにバンドで集まったときにメリットとして感じましたね。

コロナ禍で配信などの活動をしていたミュージシャンの人たちを見ていると、「モヤモヤをどうにか紛らわせるため」にやっていた側面がだいぶ強かったなと思います。収益という意味では一部の特例以外、ほとんどの方が成功していない。

たとえばインディーズバンドというのは、月に何本もライブをやってずっと1年過ごしてるような人たちなわけで。1ヶ月2ヶ月と普段やっていたことができなくなった時の不安って、みんな凄かったみたいで。

ミュージシャンに限らず、タレントもお笑い芸人もアーティストも、SNSでの発信が急に増えましたよね。いかにもみんなの焦りや不安が見て取れるので、逆にそれを見て、自分は気にしないようにしなきゃと思っていました。

補助金はとにかくいろいろある

エンドウ.さんは空いた時間で、具体的に何をされていましたか?

ひたすら補助金関系を調べて申請していました(笑)。持続化給付金持続化補助金定額給付金文化庁の支援……申請できるものであれば全て申請していました。

Facebookなどで、「こうすれば申請できますよ」という情報を逐一発信もしていましたね。そうしたら皆さん読んでくださって、「うまくいった、エンドウ.君ありがとう」って言われることも多かった。感謝されるとやっぱり嬉しいじゃないですか? 「よーし、もっと調べてやるぞ!」とますますモチベーションが高まりましたね(笑)。

もともと調べものが好きなタイプですか?

音楽や楽器の知識に関しても全部独学だったので、もちろん調べること自体は好きなんですけど、行政の支援だとか法律とかは今回が初めてでしたね。こういう状況がきっかけであることは間違いないです。

官公庁のページは文字がぎっしり並んでいて、正直わかりづらい印象があります。

本当に。だから「これはみんな挫折するだろうな」と思って。僕も最初のほうはいくつか諦めたものもありました。お役所って、あらゆる問い合わせやツッコミに対応すべく、すごく細かいことまで網羅してから発表するんですよね。それで法律みたいなサイトの書き方になっているんです。

エンドウ.さん

でも持続化給付金という、個人事業主に100万円出してくれるものは意外と簡単で分かりやすかったんですよ。それを申請してみてうまく行ったので、「根気よく調べてちゃんと読み込めば分かるかもしれないな」と続けてみて、途中からは平気になりました。

どうしてもわからないことがあった時は各事務局に電話もしてみました。問い合わせが殺到していてなかなかつながらなかったですけど、つながると非常に丁寧に教えてくれましたね。

申請されたものについて、可能な範囲で教えていただけますか?

持続化給付金と、特別定額給付金、あと日本商工会議所が実施している持続化補助金ですね。新規事業の企画書を持っていって相談して申請するというもので、こちらはまだ審議中なんですけれども。

家賃補助も申請しました。国が実施している家賃補助と、東京都の家賃補助と両方。あとはパブリックソース財団という団体が実施している「アーツ・ユナイテッド・ファンド」という表現者に対する助成金も、結果的に不採択だったんですけど申請はしました。他にも舞台役者とか舞台関係者向けのものもありますね。

また、面白いのはFacebook社が実施している助成金です。中小の法人や個人事業主に対して25万円の現金を振り込んでくれるのと、15万円分のFacebook上で使える広告のクーポンをくれるものです。民間企業がやっているのだと、他にはNetflixが実施している10万円の映画に関係するスタッフへの助成金みたいなものもあって、これは僕自身には該当しなかったので、まわりの映像系のクリエイターに教えたり。

あとはJ-LODlive(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)という、経済産業省が軸となってやっているライブの助成金は通りましたね。僕が延期したのは小さいライブでしたけど、規模によっては最大5000万円まで出るので、規模の大きい公演は限度額まで申請しているんじゃないでしょうか。

すごい。民間企業も含め、探せば助成してくれるところがたくさんあったんですね。

そうなんですよ。普段だとクリエイターから「会社員はいいよな、守られていて」みたいな声が出ることって多いと思うんです。僕らクリエイターというのは、基本フリーランスで保障もないので。けど実はこの緊急時に関しては、圧倒的に個人事業主が有利な仕組みがいくつもあるんです。

エンドウ.さんが代表理事を務めているMCAのような団体は、こうした支援策に対してどのようなスタンスなんでしょうか。

団体として助成金をクリエイターに出すということはないんですけど、国の支援への申請に必要な手続きをお手伝いするということはやっています。例えば我々音楽関係の芸術家にとって非常に強力な「文化芸術活動の継続支援事業」という補助金制度が文化庁によって実施されたんですけれど、最初、MCAは(申請に必要な)確認番号を発行できる団体ではありませんでした。ですが、皆様のために確認番号を発行できたらなと思ったので、芸団協(公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会)に相談しに行きました。

なぜ芸団協に相談に行かれたのでしょうか。

芸団協は伝統芸能の担い手も多く所属している歴史の長い実演家団体で、行政とのつながりも深いんですね。

今年第2次補正予算案が通って、509億円の予算を芸術家に使うということになりました。なので政治家や官僚の人たちも、全額を無駄なく色々な人の支援に使いたがっているんですけど、どうすれば適切に配分できるかわからない。そこでまず芸団協のような芸術活動家たちが集まっている団体に相談するそうです。

政治の側もサボっているわけではなくて、むしろ予算を使いたいと思っている。それを我々クリエイターサイドからも歩み寄らないで「何もしてくれない!」とか「書いてあることがわかりにくい!」とか批判するのは、ちょっと違うなと思うんです。「冷静になって、よく読んで考えて勉強すればしっかりもらえるものなので、まずはみんな勉強しようよ」ということですね。

音楽を仕事としてやっている自覚を持つこと

何事もやってみるのが大事ですね。文句を言うのはその後でもできる。

これってコロナをきっかけに僕らが変わらなきゃいけないところなんです。せっかく国が509億円僕らのために出してくれることになったのに使い切れなかったら、「なんだ、結局いらなかったのか」という反応になってしまう。だからこそしっかりこの509億円を困っている皆さんに行き渡らせて使い切らないといけないと僕は思っているんです。

ミュージシャンというその日暮らしの昼も夜もない職業であっても、自分が社会の一員としてきちんとしようとすれば、支援もきちんと受けられる。それがコロナ禍でみんな分かったと思うんですよね。そういう風に意識が変わってくると、音楽家や芸術家が職業として世間的にももっと認知される世の中になるんじゃないかなと思うんです。

権利は与えられるのを待っているだけでは確立されない。ひとりひとりがきちんとするところから始まるものだということですね。

そうですね。たとえば街のライブハウスで活動しているインディーズバンドの人たちだって、「ちゃんとプロとして、職業としてやってるんだ」と胸を張って言えるようになってほしい。こういう状況になって社会と向き合うということが、例えば「音楽の稼ぎが月に数万円でも、誇りをもって1つの職業としてやってるんだ」という自覚をクリエイター全体に芽生えさせるきっかけになるんじゃないかなと思うんです。

海外だと、たとえばタクシードライバーが「俺はシンガーソングライターなんだ、週末は〇〇というクラブで歌って金もらってるんだぜ」というのを、堂々と言えたりするわけじゃないですか。でも日本は全然そうなってない。

それってJASRACの会員数にも表れていて、JASRACメンバーと言われる信託者は1.1万人(注:著作者数。正会員数は1200名強)くらいなのに対して、たとえばアメリカの音楽作家団体の会員数って、延べ160万人(BMIとASCAPの合計)くらいいたりするんですよね。フランスなんか日本の総人口の半分くらいで、音楽市場規模も3分の1ぐらいなのに16万人もの音楽作家が音楽作家団体に登録してるんですよ。海外では本当に1回でも歌ってお金をもらったら「俺はミュージシャンだ」と堂々と言う。そんな風に変わっていってほしいなと思います。

エンドウ.さん

コロナ禍においても、海外は芸術家に対する補償が手厚い、日本は全然だというのは一時期ニュースで流れました。

それは我々クリエイター自身がいけなかった部分もあったと思っていて。海外は、作家も現地の団体にしっかり所属してるんですよね。
数が集まれば声が大きくなるわけで、それが政治に届くわけです。日本もコロナをきっかけに声を上げれば届くということが分かったので、ちゃんと自分と関係のある団体に所属して声を上げる土壌を作っていけば、何かあるたびに保障をちゃんともらえるようになると思うんです。それをしないで「何もしてくれない」って叫んでるだけでは何も変わらない。

団体の会員数が増えるということイコール団体のロビイングのパワーが増えていく、ということですね。

その通りです。今自分にある権利がどうやって勝ち取られたものなのか、あまり意識していないんですよね。たとえばテレビ放送で曲が流れたら著作権印税がもらえるのも、昔の音楽作家たちが大きな声で叫んで活動したからであって。YouTubeもTikTokもLINEも、音楽作家としてJASRACに所属しているみんなが声を上げたことで、現在進行形でひとつずつ契約が実現してるわけです。

利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧

クリエイターの皆さんも音楽を作ること専念していると知る機会も少ないでしょうし、そこはまだまだ各団体も広報面で改善の余地があるところだと思います。

「団体に入る」ってどういうことなの?

JASRACのサイトにあるリストをざっと眺めただけでも無数に団体がありますし、自分がどれに所属するべきかを判断するのも難しそうです。

逆を言えば、どれかには当てはまるくらい網羅されているんですよ。我々MCAもそうですし、例えばドラクエのすぎやまこういち先生等がいらっしゃる日本作編曲家協会は大御所の皆さんもいますけど、実は若い人も多い団体だったり。

比較的新しいところだと、日本ネットクリエイター協会(JNCA)がボーカロイド系やネットクリエイターが集まる協会であったり、WATUSIさんが代表を務めていらっしゃるDJ・トラックメイカーの協会(JDDA)もありますよね。

団体について、若い人に訴求するわかりやすいセールスポイントって何になるのでしょうか?

確かにそれぞれの団体が色々なサービスを整えているんですけど、本質はそこじゃないんです。先ほども言ったように、人数を集めて声を大きくしていけば世間や業界、さらには行政に届くということが大事で。正直に言って団体に所属することによって個人にとって得なことはあまりないかもしれないけど、自分を含めた未来のクリエイター、業界全体にとって良いことがあるということが重要なんです。だから「得するから団体に入りなよ!」というよりも、「音楽作家の未来のためになるべく団結してください、お願いします!」というのが本音だったりもします(笑)。

ただ、せっかくこういう機会なのでサービスについても説明しておくと、たとえばMCAではNexToneとデジタルディストリビューションの契約を交わしているのでYouTubeのコンテンツIDの登録ができたり、出版社としての機能も持っているので、JASRACのメンバーじゃなくても著作権使用料の分配を受け取ることができたりします。コンクールや賞、イベントを開催していたり、健康保険組合に加入できることを打ち出している団体もありますね。

「集まれば声が届く」ということは、これまでどういったときに感じられましたか。

それは日々感じていますね。先日も権利周りのことで参議院会館に行ったり、公正取引委員会の方とお話したりしたんですけど、彼らも有権者のために色々やりたいと思っているようです。

「何も声が届いてこないから、ぜひ話を聞かせて下さい」という状況なんです。でもSNSでワーワー言ってるだけではダメですよ、一言一言に信憑性や責任がないので。変えようと思ったら、みんなが集まって言葉を届けていかないといけないなと、行政に関わる人たちと実際に話すと思います。

エンドウ.さん

▼後編はこちら▼

Interview & Text:岩永裕史、関取大(Soundmain編集部)

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