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未来のクリエイションは若手から学べ! アーティスト/作曲家/プログラマー松本昭彦が語るテクノロジーと音楽(インタビュー後編)

東京藝術大学で現代音楽の作曲やプログラミングを修めた経歴を持ち、インスタレーションなどのメディアアート領域や研究開発なども手掛けているアーティスト/作曲家/プログラマーの松本昭彦さん。

最近ではテクノロジーとアートに関するワークショップ「RESONANCE」や音楽・音響プログラミングに関する学習エンタメAMCJ、モジュラーシンセのライブイベント「SOURCE CORD」を主催するほか、サンプルパックの開発・販売もインディペンデントに行い、海外のユーザーからも好評を博している。

そんな松本さんにインタビューさせていただいたのだが、松本さんならではの「音楽家ならではの創造性を仕事に変える」ことに関する大変触発的な内容となった。

音楽系クリエイターのみならず、「テクノロジーとどのように向き合いながらクリエイティビティを発揮していくか」という命題について関心のある、すべての人にとってヒントになる内容のはず。公開中の前編と合わせて、ぜひご一読いただきたい。

前編はこちらです。

インディー発・海外を経由したクリエイティブな循環

世界の中の日本の音楽という視点に立った時に、注目しているアーティストはいますか?

Goth-Trad(@GOTHTRAD)というダブステップのプロデューサーに注目しています。Back To ChillというGoth-Tradが主宰するイベントに出演しているKarnage(@Karnage_jp)、Dayzero(@tsuyoshidayzero)、Helktram(@HELKTRAM)ら日本人アーティストは個人的にもめちゃめちゃ好みで、最初は日本の人だと気づいていませんでした。

Goth-Tradは日本ではアンダーグラウンドなアーティストだと思うんですけど、世界中のイベント、フェスからオファーがあり海外で凄く人気がある。(日本ではダブステップといえばすぐ連想される)Skrillexとかよりも早い時期からダブステップをやっていて、ヨーロッパやアメリカのダブステップにはない独自の音楽性があるんです。

Liquid Ritual(前回のインタビュー参照)を主宰しているKarefulのように「自分が音楽を始める前に、ロンドンでGoth-Tradの演奏を見て衝撃を受けて音楽を始めた」と言っているアーティストがいるんですよ。

JK Flesh B2B Goth Trad at Le Guess Who? 2019

ええ!? それは凄いですね。

アメリカやヨーロッパ、世界各地の小さいハコでライブをやって、次世代の新しいジャンルを作るようなアーティストに大きな影響を与えている。そうして生まれたジャンルがディーン・フジオカみたいな、日本のポップミュージックというか芸能界のど真ん中にいるような人の音楽に影響を与えたりするという循環は、何か凄くクリエイティブな感じがするんです。

ネット以降変わっていくことを願っていますが、日本は自国発祥の音楽ジャンルというのがほぼないので、国内でインディー発でメジャーに還元されていくジャンルってあまりないと思うんですよ。日本のほとんどのメジャーカルチャーが、ロックにしろヒップホップにしろEDMにしろ、海外で流行ったメジャーカルチャーを輸入するという形になっていると思うので、インディーがメジャーよりも音楽的に進んでいるという前提が通用しない。

でもアメリカやイギリスではインディーから生まれたものをメジャーがフックアップするみたいなことが普通にある。Goth-Trad → Kareful → ディーン・フジオカのように、アンダーグラウンドからオーバーグラウンドに転換する過程でいったん海外を挟んでいる……こういうことも日本ではあり得るんだなと驚くと同時に、凄く価値があることだと思いますね。

前編記事でシリアの音楽クリエイターの話をしましたが、そのときもKarefulのエピソードを思い出して、異国の若者に対してできるささいなことでも、それが独自の文化の起点になったりすることもありうると思い、今日本から国外に対して貢献できることは何なのかを考えました。 

「日本の音楽はガラパゴス化してしまった」とか、悲観的な調子で言う人も中にはいますね。

そこに関してはあまり悲観的には考えてないですね。それは僕が大量生産・大量消費をゴールにするのではなく、いかに個性的なものを生み出すのかというところで考えているからでもあるんですけど。

例えばK-POPはJ-POP以上に世界中で聴かれていますが、音楽的にはかなりアメリカのポップス寄りですよね。グローバル・スタンダードな音楽を目指そうとする方向性は、僕自身はあまり面白くないと思っていて。東京にいてもロンドンにいてもニューヨークにいても大体同じような音楽が流れている、みたいなことになってしまうと、何か世界がつまらなくなってしまう気がするんです。

東京なら東京で、物凄いガラパゴス化したような、東京に行かないと体験できないような音楽がいっぱいあったほうが面白い。そういう意味ではガラパゴス化していった方が面白いんじゃないかと。日本にしかないものに向き合うというか、もっと根源的なことをいうと自分自身の頭の中にしかないものを煮詰めまくれば、世界の誰よりも先端を行くことになりますし、簡単ではないけれど突き抜けていると個性が目立つので、自然に海外からも声が掛かってくる……Goth-Tradもそのタイプだと思うんです。 

逆にガラパゴス化したほうが面白いと。

そういう意味ではJ-POPも物凄くチャンスがあるものだと思うんですよ。洋楽の二番煎じみたいになってない、ガラパゴスに、世界のトレンドなど脇目も降らずに、我流に凝り固まったJ-POPほど価値がある。

音楽通の人ほど「洋楽と全然違う」ことを劣等感として持って「J-POPってダサいよね」と言いがちな気がするんですけど、自分は真逆じゃないのかと。 

J-POP黄金時代と言われる90年代の音楽はどれもこれも特徴的だと思いますし、アニソンやV系などにいたるまで、日本のポピュラー音楽は独特の個性があり海外に類似作品を探しても見当たらない。日本の音楽が好きな人は日本の音楽文化だけで完結するような傾向は僕の世代にもすでにあり、ますます今も加速しているように思います。

LUNA SEA – 「LOVELESS 」
Mana-sama plays de memoire 〜 記憶と空. Mana様本人が弾いてみた。
Final Fantasy IV Soundtrack
 DIR EN GREY「羅刹国」
モーニング娘。 『Help me!!』
SKY-HI / 「Seaside Bound」
sora tob sakana/New Stranger

日本語を輸出するのはかなり難しいと思うんですけど、J-POPのコード進行やA-B-サビ構成、唐突な転調、サビのメロディーの際立たせ方に力点を置くセンスはかなり日本独特のものだと思うんです。

欧米の一流作曲家にJ-POPスタイルの作曲の依頼をしても、専門の訓練と文化習得をしない限り、日本のガラパゴス文化で大衆に共感される作曲、編曲するのはかなり難しいと思う。J-POP由来の音楽的特徴、独自性みたいなものを日本語を使わずにきちんと日本式ポップスのスタイルとして、アーティスト単位ではなく無形の作曲文化として海外輸出できたら、チャンスがあるだろうと感じています。

そこで今一番可能性がありそうだと思っているのは日本のフューチャーベース、アニメやゲーム文化と密接に繋がっているKawaii Future Bassというシーンですね。 

フューチャーベース系のイベントって、小さなハコだともう酸欠になるレベルで満杯になりますからね。オンラインのイベントだと、視聴者数のべ3万人とか軽く突破するようなイベントもありますし。ベースミュージックというくくりで見るとありえないほどのメジャー感がありますし、イベントに行くと若者の猛烈なエネルギーを感じます。

フューチャーベース系のアーティストで好きな人はいますか?

日本人ではないんですけど、韓国のトラックメイカーでSynthion(@synthionmusic)という人の音楽が好きです。日本のアニメカルチャーやゲームカルチャーが凄く好きな人で、確か今アメリカの音楽系の大学で勉強してるんだと思いますが、コントラバスを弾いている動画を見たことがありますね。

彼のトラックメイキングの実況動画は日本スタイルのフューチャーベースを作ろうとしている人に大いに参考になると思います。アニソンのオーディオファイルを徹底的に変形して、自作で印象的なヴォイス素材として埋め込むところなどとてもじゃないけど定量的に理論化できるような技術ではなく、感性が爆発していて面白いです。

最近だと、ジャズミュージシャンの人がアニソンを分析している翻訳字幕つきの動画も話題になっていましたね。

うん、そういう分析能力がある人で日本の文化に興味がある人が真面目に日本のポップスを聴くと、かなり個性があるというのは分かるんだろうと思いますね。

あとベースミュージックという括りではジューク/フットワーク系のDJ Paypalも日本のアニソンやグラビアアイドルの歌を大々的にサンプリングして日本の音楽を全く違う音楽へと進化させていて、面白いと思います。

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