
南アフリカ発のダンスミュージック「Amapiano(アマピアノ)」とは? 「和製アマピアノ」をリリースした日本人プロデューサーが作り方を解説
現在、Amapiano(アマピアノ)という南アフリカ発祥の新たな音楽ジャンルに世界中から注目が集まっています。
ここ日本でも今年に入ってから、SNSでそのジャンル名を見かけることが少なくありません。そんな中、昨年、東京のコレクティブ「TYO GQOM」を母体とするレーベル「USI KUVO」からデビューEP『This is Japanese Amapiano EP』(Spotifyリンク)をリリースし、話題を呼んだ日本人プロデューサーのaudiot909と、音楽プロデューサー/マスタリングエンジニアとして、現在はHip-Hop/R&Bを中心に楽曲を制作するPIANO FLAVAがコラボ。今年10月に「メロウなアマピアノの中でも日本人が作るとどういう特徴が出るのか如実に表れた」(audiot909のツイートより)デジタルシングル「East Bird」をリリースしました。
そこで今回はaudiot909とPIANO FLAVAにAmapianoの作り方についてインタビュー。制作に必要な定番機材やサンプルパック、初心者にもわかりやすいチュートリアルや制作の参考になるリファレンス曲、さらに「East Bird」を参考に打ち込みのコツまでをお伺いしました。
Amapianoとはどんな音楽?
Amapianoとはどういったジャンルの音楽なのでしょうか?
audiot909 Amapianoは、南アフリカ発祥のハウスから派生したジャンルです。ハウスのほかにもクワイト(Kwaito)、ヒップホップ、ジャズなど南アフリカで今まで培われてきたグルーヴの結晶のような最新のダンスミュージックです。
またハウスの派生ジャンルではありますが、BPMはハウスに比べるとだいぶ遅くて、ほとんどの曲のBPMが112前後になっています。それとキックがすごく弱いのですが、その反面シェイカーの音はかなり大きいですね。それと最も特徴的なのは、タムとベースの中間くらいの音程のある「ログドラム」と呼ばれる音がベースに使われていることです。
今、Amapianoは海外でどのように注目されているのでしょうか?
audiot909 現在、本国の南アフリカでは、本当に国民的な音楽と言っても差し支えなさそうな感じで盛り上がっています。他にもナイジェリアでは独自解釈された「Nigerian Amapiano」と呼ばれる派生ジャンルもあったり、本国以外のアフリカの国でも盛り上がっていますね。
それとアフリカ以外では、イギリスは早くからAmapianoに反応するミュージシャンが多く、独自にAmapianoを解釈した音楽を作っている人も結構います。
また、イギリスではAmapianoに特化した大規模なイベントも行われていたり、Vigro DeepやKamo Mphelaのような南アフリカのスターがライブをするようなことも増えています。
他にもアメリカだとMajor League DJzという南アフリカの有名Amapianoユニットの動画にDiploがMajor Lazer名義で出演していたりもいます。
日本ではどうでしょうか?
audiot909 日本もAmapianoに対する反応は結構早かったのですがが、今年11月に新進気鋭のプロデューサーの1人であるTeno Afrikaが来日したことで、さらに知名度が上昇したような気がします。また、最近だと全国各地のクラブでもAmapianoがプレイされていると聞くようになってきたので、いよいよ日本でもちょっとしたブームになってきた印象があります。
Amapiano制作に必要な機材・ソフト
Amapianoのトラック制作に興味をもったきかっけを教えてください。
audiot909 以前、南アフリカの留学生と友達になった時に実際にFL Studioを使ったハウスの制作を見せてもらった時に、価格的にも性能的にも大したことのないプラグインで作っているにもかかわらず、それがすごくリズミックな曲になっていたことに衝撃を受けました。
その後にDJのmitokonさん経由でジャンルとしてのAmapianoのことを知ったのですが、その時に「もしかしたらあの留学生が作っていた感じでやれば、自分でもAmapianoが作れるのでは?」と思って、Amapianoの制作を始めました。
PIANO FLAVA 2年ほど前にSoundCloudでAmapianoというタグが付いた曲を聴いたことがあったのですが、その頃はまだAmapianoのことはよくわかりませんでした。その後、audiot909さんがAmapianoについて書かれたnoteを拝見したことがきっかけで面白さに気がつき、実際に曲を作り始めました。
それと僕は普段、J-POPや西洋音楽など洗練された音楽を聴くことが多いのですが、Amapianoには良い意味で洗練されていない土着的なアフリカのリズムとハウスミュージックが持つ洗練された音楽性が合わさっているところがあって、そこにすごく魅力を感じたことも制作を始めるきっかけのひとつですね。
Amapiano制作でよく使われている機材にはどういったものがあるのでしょうか?
audiot909 Amapianoの制作では、DAWのFL Studio付属のプラグインをよく使うという傾向があります。その中でも特に重要なのは、先ほどのログドラムの音を鳴らすために使うFM音源のFruity DX10ですね。実際に南アフリカのアーティストもログドラムの音を求めて、FL Studioを使っているようです。
それとFL Studio付属のプラグインでは、GMSとMorphineというソフトシンセもAmapiano制作では多用されているポピュラーな機材です。あと、FL Studio付属以外のものだとマルチ音源のPurityもAmapianoを制作する上ではよく使われています。他にはちょっと古い機材ですが、Hypersonic、Albinoというソフトシンセも定番の機材です。
これらのソフト音源の使い方としては、細かくパラメーターをいじって音色を作り上げていくという感じではなく、どちらかと言えばいい感じの音をプリセットから選んで作っていくことの方が多いです。
FL Studio付属のFruity DX10が重要とのことでしたが、FL Studioを持っていない場合、何か代用する方法はありますでしょうか?
audiot909 Windowsユーザーの場合は、DDX10というフリープラグインで代用することができます。それ以外だとログドラムのサンプルをサンプラーに入れて打ち込んでいくという方法もありますね。