
ミュージシャンの権利に関わるロビイング活動の成果。イギリスの著作権法案が明らかに
イギリスの著作権(ミュージシャンの権利と報酬)法案が明らかになりました。
イギリスは音楽ストリーミング経済とアーティストの収益をめぐる議論を先導しており、今年7月には、イギリス下院デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会(DCMS委員会)によって、政府に提出する提言を盛り込んだ報告書が公開されています。
DCMS委員会のメンバーのひとりであるKevin Brennan議員が公開したこの法案では、「正当な報酬(ER)」「契約調整」「取消の権利」「権利者の透明性確保」などが取り入れられました。
最も印象的なのは、放送による正当な報酬を得る権利(ER)を、従来のラジオだけでなくストリーミングにまで拡大していること。Soundmain Blogでもたびたび扱ってきたイギリスでのロビー活動が法案として実を結んだ形です。
契約調整とは、アーティストやソングライターに、現代の音楽ビジネスの文脈では不公平と思われる古い契約を再交渉する権利を与えることを指します。
取消の権利とは、アーティストとソングライターが過去に譲渡、移転、ライセンスした権利を20年後に取り戻すことを可能にする権利です。
また、発生した収入や支払うべきロイヤルティなど、著作物の利用に関する最新で理解しやすい完全な情報を四半期ごとに提供するという、透明性の義務を課すことも組み込まれています。
しかし、この法案が成立するまでにはまだ長い道のりがあり、英国政府の支援が保証されているわけではありません。
事実、英国レコード産業協会(BPI)やイギリスのインディーズレーベルの業界団体AIMなどは、この本案が公開された直後に否定的な声明を発表しています。
一方、音楽家ユニオン(Musicians’ Union)や音楽作家協会(The Ivors Academy)はそれぞれこの法案を歓迎するコメントを出しています。
「ストリーミング市場におけるメジャーレーベルの支配は明らかです。ミュージシャンやソングライターは十分に公平な取引を得られておらず、法整備が急がれています。今こそ、音楽業界、特に音楽ストリーミングにおける不均衡に対処する時です」(音楽家ユニオン書記長代理、Naomi Pohl氏)
「英国の文化大国としての地位は、実際に音楽を作っている人々への投資にかかっていることを理解しているKevin Brennan氏と各党の議員に、作詞家と作曲家を代表して感謝しています。ストリーミング市場の成長は、音楽制作者を犠牲にして多国籍レコード会社に多くの富をもたらしました。英国の羨望の的である音楽部門を成長させるためには、こうした市場の歪みを是正しなければなりません」(音楽作家協会CEO、Graham Davies氏)
音楽クリエイターにとって、提供した楽曲の収入がストリーミングからも得られるかどうかは、死活問題と言えます。法案が成立し、1再生あたりの報酬のレートが上がれば、クリエイターにとって喜ばしいことでしょう。
文: 三嶋 直道(PIANO FLAVA)
【参考サイト】
UK’s Copyright (Rights and Remuneration of Musicians) Bill revealed – Music Ally
https://musically.com/2021/11/24/uks-copyright-rights-and-remuneration-of-musicians-bill/
Kevin Brennan MP publishes copyright reforming bill he reckons will fix streaming | Complete Music Update
https://completemusicupdate.com/article/kevin-brennan-mp-publishes-copyright-reforming-bill-he-reckons-will-fix-streaming/