2021.11.05

JASRAC担当者と学ぶ“究極にわかりやすい”著作権印税の仕組み【独立系クリエイターのための音楽著作権HOW TO! Vol.1】

Soundmainが、YouTube番組「独立系クリエイターのための音楽著作権HOW TO」を2021年8月28日(土)にスタート。MCのやまだひさしさんが、「JASRAC怖い」「権利なにそれおいしいの」「権利を主張して、せっかく演奏して下さってる方からお金を取るなんて」「JASRAC加入、お高いんでしょう?」など、多くのクリエイターが抱いているモヤモヤに正面からぶつかっていく、今までに無い著作権番組となりました。クリエイターの “ヒトヤマ当てたい!” 目線を応援し、モッタイナイ誤解を解く鍵がたくさん詰まった初回番組を、ぎゅぎゅっと縮めてレポートします。

ダイジェスト動画(まとめ)は以下から!

今日くらいは堂々と、お金の話をしよう!

MCやまだひさしさんのポップでキャッチーなトークがオープニングから炸裂。「著作権のことを“知らない”ことで、クリエイターは損してるらしいんです! 何も知らずに曲や詞を作ってた人、これから作りたいと思ってるけど、ちゃんと権利は主張できるんだろうかと不安に思ってる人。今日くらいは堂々と、お金の話もしていきましょう」と、独立系クリエイターの“ヒトヤマ当てたい”気持ちを盛り上げます。

クリエイター当事者として登場して下さったのは、バンド「GEEKS」をはじめ「ももいろクローバーZ」「ヒプノシスマイク」などへの楽曲提供をしているエンドウ.さん。“明細書の鬼”の異名を持ち(?)、一般社団法人 日本音楽作家協会(MCA)の代表を務めておられます。「最初は著作権のことは知らなかったけれど、もっともらえるんじゃないか? と思って調べ始めたら、詳しくなってしまいました(笑)」という発言から、作品が持つ“本来の稼ぎ”を取りこぼさない姿勢の重要さが伝わってきます。

更にもう一人のクリエイター代表として、作詞家でボーカリストのeNuさんが登場。「アイマス」「刀剣乱舞」「おそ松さん」など有名ゲームやアニメに数々の作詞を提供しているeNuさんは、現在所属している事務所に著作権管理を委託しているとのこと。「『クリエイターがお金の話をするなんて……』とか『夢を壊さないで欲しい』と、実際に言われたこともあるんです。でも、これは皆さんのお仕事と同じことなので……」と、作品で“もっと稼ぐ!”意欲を語ってくれました。

そして著作権管理団体として知らぬ者はいない「JASRAC」より、広報部の薬師寺さんが登場。やまださんが「JASRACって仮想敵国みたいなイメージで捉えてる人もいるので(笑)、今日は、どういう形で僕たちが繋がっていくと、色んなメリットを享受したり保護して貰えるのか教えて欲しいんです」と言うと「はい!ガッツリと!」と力強くお応えいただきました。

ダイジェスト動画:#1 究極に分かりやすくした、著作権印税の仕組み!
https://www.youtube.com/watch?v=mWl277UnauI

「あなた、印税、もらい損ねてますよ!」を防ぐには?

自身がクリエイターであると同時に、クリエイター向けに権利関係の説明を何度も何度もしてきたエンドウ.さん。「作詞作曲をして音源も自分で作っている独立系クリエイターさんは、印税の徴収と分配の仕組みを知らないために、著作権使用料をもらい損ねていることが多いんです」との衝撃発言がありました。“音楽でヒトヤマ当てたい”独立系クリエイターにとって、致命的な状況です。

「独立系クリエイターが自分で作った音源を自分でSpotifyなどサブスク事業者やアグリゲーターにアップすると、その収益から“印税”が支払われます。ところが、実はそこに、著作権使用料は入っていないんです。支払われているのは著作隣接権(原盤権)の印税だけなんですよね……勘違いされているクリエイターさんってすごく多いんですよ」とのこと。

ダイジェスト動画:#2 著作権と原盤権「あなた、印税、もらい損ねてますよ!」を防ぐ
https://www.youtube.com/watch?v=qiPaFSc2DB4

音楽作品にまつわる“印税”には、作詞・作曲に発生する「著作権」と、音源や実演に発生する「著作隣接権(原盤権)」の2つがあります。

エンドウ.さんからは「作詞と作曲の著作権を作った人がそれぞれ持っているというのは、分かりやすいですよね。原盤権というのは、音源を作った企業やレコード会社(例えば株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)が持っている権利です。独立系クリエイターだと、音源を作った本人が権利を持っています」と、具体例を挙げての解説がありました。

著作権使用料は、TVやラジオなどの放送局、カラオケ、ライブハウス、サブスク事業者(Spotify、YouTube等)など、プラットフォームや企業が、著作権管理団体(JASRAC、NexTone)に支払います。そして楽曲の利用報告に基づき、権利者に分配されます。薬師寺さんによれば、JASRACが2020年度に著作権使用料を分配したのは約277万曲、金額にして約1,200億円にもなっているそうです。

やまださんは「そうか、ラジオで僕らが好きな曲をかけられているのは、ラジオ局が印税を払っているからなんだね。オンエアリストで使った楽曲は報告するから、それを元に権利者へ分配されているんだ」と合点がいった様子でした。

「TV局からは1秒単位で利用報告が出ていますし、1円単位でかなり詳細に権利者に分配されているんですよ」と、エンドウ.さん。「ライブハウスで利用された楽曲情報は利用者からの報告がない場合もありますが、セットリスト情報をインターネット上ににアップしている人がいますよね。そういうデータも使って、分配先データを充実させています」と、薬師寺さんがJASRACの地道な努力を披露してくれました。

エンドウ.さんは、「世間からはよく『どんぶり勘定なんだろ!』『中抜きしてるんだろ!』って叩かれてますが(笑)、管理団体の手数料は約10%程度。9割はちゃんと権利者に還元されていて、しかも内容は詳細に公開されてます」と解説。JASRAC広報部の薬師寺さんからは「今日お話ししようと思っていたことのほぼ全てを言っていただきました」と、にこやかにコメントがありました。

「JASRAC、お高いんでしょう?」「会員になるのはタダです」

「多くのサブスク事業者やアグリゲーターは、著作権使用料の支払いについて個別に行うのは大変すぎるので、JASRACかNexToneとの取引を指定しています。NexToneは現状、音楽出版社などの法人しか契約できません。Soundmainを利用している皆さんは独立系クリエイターが多いですよね。個人が直接契約しようと思うと、選択肢はJASRACだけなんです。ですから、まずは気軽に契約してみましょう!」と、エンドウ.さんは大プッシュ。

やまださんが「でも、JASRACに入るのって、お高いんでしょう〜?」と質問を投げかけると、エンドウ.さんから「JASRACメンバーになるのはタダです。昔は入会料がありましたが、クリエイター達が交渉して、無くしてくれました。解約手数料も無いし、とりあえず入っておいた方がいいです。嫌ならやめればいいし」と明快な回答がありました。

ダイジェスト動画:#3 「JASRAC、お高いんでしょう?」「会員になるのはタダです」
https://www.youtube.com/watch?v=mcFA0-PtgV8

JASRAC入会~著作権使用料受け取りまでのフローチャート

薬師寺さんからは入会案内として、「契約には、“自分以外の第三者が自分の楽曲を利用した”事実が必要になります。あとは申込書類を送っていただくだけで会員になれます」と説明がありました。エンドウ.さんからは“稼げる”道筋への案内として、「会員になるだけじゃなくて、『作品届』を出して楽曲を登録してくださいね。それで著作権印税を受け取るルートに乗る事ができます。更に、作品と利用届が合致すればお金がもらえるわけです」と補足がありました。

入会すると、分配金の明細データをもらえるというのも大きなメリットです。利用報告をベースに“11月2日に〇〇という番組で背景音楽として37秒流れ、リピート放送があり、2回分で合計3,736円”というように、内容が詳しく書いてあるとのこと。エンドウ.さんからは「90円とか20円という細かい利用料の場合もありますが、塵も積もれば山となるというヤツです。自分がウケている傾向もわかるので、得しかないです」と、“明細の鬼”ならではのコメントもありました。

ダイジェスト動画:#5 愛に気付ける自分になる!魅惑の明細ワールド☆
https://www.youtube.com/watch?v=4QNm10qp1Vs

自作品を世界からマイニング! “使われた”実績報告が印税になる

利用者側がきちっと利用した楽曲を報告してくれれば、著作権使用料の分配金が貰えることは分かりました。ここで肝になるのは「利用報告」です。TVやラジオのように、報告フローがきっちり出来ている所で使われれば報告も漏れなくされますが、現状ではYouTubeやライブハウスでの利用把握は難しいというのが実態のようです。

「せっかく曲を使ってくれた人に、請求が発生するんじゃないか」と心配しているクリエイターの方がいますが、既にプラットフォーム運営企業が支払っている著作権使用料の中から、報告した利用分が分配されるだけですので、迷惑はかかりません。

「ライブハウスで自分のバンドで演奏したものを、自分でJASRACに報告したら、ちゃんと分配されてきます。数千円だったりするので、結構バカにならない金額ですよね。あとは、YouTubeを月に1回巡回して、自分の楽曲が使われていないか探して、見つけたものをJASRACに報告しています」とエンドウ.さん。

やまださんは「えっ、エンドウ.さん、自分で探して報告しているの!?」とビックリ。「自分の作品をマイニングして、報告する。これがお金になるんです! 勝手に曲を使われた時に、怒るんじゃなくて、『おっ、使われてる!』って思えるようになりますよ(笑)」と、エンドウ.さんの解説にも熱が入ります。

ダイジェスト動画:#4 STOP 取りこぼし!!明細の鬼エンドウ.さんがやってる事
https://www.youtube.com/watch?v=CvIeWv5JP_A

真剣な顔で聞いていたeNuさんが遂に口を開き「……そういうの、ゴロゴロあります! これまで事務所に任せっきりだったので、ここまではやれてないです! この番組が終わったら、今すぐやりたい!」とうずうずした様子です。エンドウ.さんが、「売れっ子ほど、こんな作業はやらないんですよね」と残念そうに語り、やまださんも「主張しないのはもったいないよね」とコメント。

生放送ならではのシーンとして、「生々しい話、『どれくらい分配されるんですか?』ってことですが……YouTubeでたまたま、めちゃくちゃ有名なYouTuberさんに僕の楽曲が使われたことがあって。特定されていなかったので報告したところ……スゴイ再生数だったので……実は、こんくらい入ってきました」と、エンドウ.さんから金額ご開帳の場面もありました。

薬師寺さんからは、「クリエイターの方々にはJASRACを使いこなしていただきたいですね。現在、JASRACと直接契約しているのは1万1千人で、6万人くらいは音楽出版社経由で分配を受けている方です。個人で契約してもらえれば利用報告の明細が見られるようになるので、是非入って欲しいです」と案内がありました。

JASRACと契約はしているものの、明細受け取りの手続きをしていなかったeNuさんは「早く明細が欲しいので、早く申し込もうって思いました。スゴイおもしろいですね! 本当に収入に直結する学びでワクワクしてきました。取りこぼさないようにしたいです!」と熱いコメントがありました。

エンドウ.さんはこれまでの経験から「クリエイター側が『俺は音楽を作るだけでいいんだ』って思っちゃってるところがある。仕事である以上、自分の収益源については勉強しておいた方がいいし、JASRACも分配精度が上がるし、信用も上がるので、全員得なことしかないです」と語りました。

ダイジェスト動画:#6 音楽クリエイターも、堂々とお金の話をしよう!
https://www.youtube.com/watch?v=vpuk46Dyxs8

番組の最後では「有名ミュージシャンの明細見てみたいねー!」と盛り上がった、何もかも型破りな「“音楽でヒトヤマ当てたい!”独立系クリエイターのための音楽著作権HOW TO講座」。

今回の配信番組のダイジェスト版は以下から。見逃した方はぜひご覧ください!

Soundmain YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCtbLPfWLLv88YLahdCgCoCw

構成・文:かのうよしこ

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