
Puzzle Project連載インタビュー③ Sohbana・モネルタP・ふたりごと プロジェクトを通じて広がる「コラボレーション」の可能性
パソコン・スマホを使った音楽制作(=DTM)を行うクリエイターを支援するプラットフォームとして、各種サービスの開発を進めるSoundmain。その観点から、インターネットを活用して自身の作品を発表している次世代アーティストをサポートするソニーミュージックの新プロジェクト「Puzzle Project」に注目した連載インタビューを実施中だ。
多数のエントリーから選ばれた10組のアーティストに焦点を当てる本連載の第3回には、Sohbanaさん、モネルタPさん、ユニット「ふたりごと」のコンポーザー・三浦良明さんとボーカリスト・杜ノ狼さんの4名が登場。Puzzle Projectへの参加をきっかけに「ふたりごと」を結成した三浦良明さんと杜ノ狼さん、ボカロPに加えて作曲家としての活動領域も広がったSohbanaさんとモネルタPさんに、それぞれのクリエイティブの由来と変化について語っていただいた。
取材・文:柴那典
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プロフィール

Sohbana
大学に入学した年の2017年に楽曲投稿を始め、2019年「Stridor」以降躍進を続けるボカロP。滋賀県出身。
ポップスや邦ロックを中心に様々なエッセンスを吸収しつつ独特の作風に仕上げ、リスナーを驚かせ続けている。
ユニークな語彙に甘酸っぱさと説教くささが同居する歌詞も大きな持ち味。
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC0Ss3V3-fJI6AiqQLdRSx4Q
Twitter: https://twitter.com/Sohbanasick

モネルタP
2019年5月よりボカロPの活動を始める。
楽曲の世界観を重視した独特のピコピコロックサウンドを手掛ける。
ボーカロイドでは珍しいウィスパーボイスを使用した色気のある調声と擬音を基調とするユニークな歌詞が特徴。
遊び心を忘れず活動していきたいと思っている。犬派。
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCTWMdK8p47nE-3IfKRxOX4Q
Twitter: https://twitter.com/mnruta_p

ふたりごと
2021年活動開始。
SNSで弾き語り動画を投稿しているボーカル「杜ノ狼」と映像音楽やサウンドデザインを手がけるコンポーザー「三浦良明」による音楽ユニット。
杜ノ狼の優しく寄り添うような声とファンタジー的な世界観を持つ音楽性、そこにいる「誰か」と「私」による物語性のある歌詞が特徴。
ふたりごと YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCdVplUZBDhv_C-P1vszMRKA
ふたりごと Twitter: https://twitter.com/futaridake02
三浦良明 Twitter: https://twitter.com/art_miura
杜ノ狼 YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCPO1vSgmUahK9VnMffTn5mg
杜ノ狼 Twitter: https://twitter.com/Wolf_tree_
Sohbana・モネルタP・ふたりごと インタビュー
みなさんがPuzzle Projectに応募したきっかけは?
三浦良明(以下、三浦) ふたりごとは、Puzzle Projectが始まったときに結成しました。それ以前にコラボという形で1曲発表していたんですが、それを継続してやっていきたいと思ったのがPuzzle Projectに応募したきっかけです。
杜ノ狼 そこから、ふたりごととして新しく活動できたらと思って、2人で応募しました。
Sohbana 僕がPuzzle Projectを知ったきっかけはInstagramの広告でした。その時点で就職も決まっていて、今もその会社で働きながら活動しています。
モネルタP 自分も知ったきっかけはSohbanaさんと全く一緒で、Instagramの広告です。2年前くらいからボカロ曲を作り始めて、もっといろんな人に聴いてもらえるようなきっかけになればと思って応募させてもらいました。
モネルタPさんがボカロPを始めたのは2年前ということですが、どういうきっかけだったんでしょう?
モネルタP それまではバンドをやっていたんですけれど、CDを出したり、ミュージックビデオを作ったり、イベントを企画したり、やりたいことをやりきった感があって。バンドが一段落したので、何か一人でできることがないかなと思ったのが始めたきっかけです。
SohbanaさんがボカロPの活動を始めたのは?
Sohbana 高校の時に軽音楽部に入っていて、その時に組んでいたバンドで「閃光ライオット」という当時あったコンテストに出ようと思っていたんです。でも、メンバーが自分の熱量についてこれなくて、ボーカルが辞めてしまったりして。そういうこともあって、大学に入ったら好きにやろうと決めていて。Cubaseと初音ミクを買って、右も左もわからないまま投稿活動を始めました。
三浦さんはプロフィールに東京藝術大学大学院修了とありますが、音楽歴は?
三浦 まずは小学校の時に合唱をやっていて、高校では吹奏楽部でパーカッションをやっていました。ピアノと作曲を始めたのもその頃です。大学では、いわゆるクラシックの音楽理論を学んでいました。ポップスではない和声の概念を勉強していて、それが今に活きていると思います。大学を卒業する頃にバンドも始めて3年くらいやっていました。その前からいわゆるインストとか劇伴とか、歌のない音楽が好きで、そういうものも作っていました。
杜ノ狼さんは弾き語りでカバーを投稿することから歌い手としての活動が始まっているわけですが、どういうきっかけでしたか?
杜ノ狼 高校2年生の時に初めてギターと出会って、そこから弾き語りを始めました。そこからTwitterとかTikTokとか、いろいろなところで配信して、今に至ります。
影響を受けたアーティストにはどんな人がいますか?
杜ノ狼 弾き語りだと、りりあ。さんのように、自分の魅せ方を知っている人、自分の色がある人にすごく憧れます。
三浦さんと杜ノ狼さんとの出会いはどういう感じだったんですか?
三浦 今時だと思うんですが、Twitterで声をかけたところからです。共通の知り合いがいたので、最初はその人からDMを送っていただきました。自分は曲は作れるけれど、歌えないなと思ったので。そういう発想に至ったのはやっぱり、YOASOBIのようなネット発のコンポーザーとボーカリストのユニットという存在が出てきたのが大きいですね。
杜ノ狼さんは声がかかっての印象はどうでしたか?
杜ノ狼 私は三浦さんと逆で曲を作るのが苦手なんですけど、歌は歌いたいなと思っていたので、声をかけてもらった時はすごく乗り気でした。カバーじゃなく、新しく作った歌を歌わせてもらえるということは、すごく自分にとっても成長できることだと思いました。
最初に作った「ゆうれいごっこ」の時点で、その後のふたりごとの結成に至るコンセプトはありましたか?
三浦 その時には全くなかったです。最初は「こういう曲を作ってみたんですけど、歌ってくれませんか」というアプローチの材料として作って、それ以降の曲は一緒に作っていった感じです。今まで歌モノはあまり作ってなかったんですけど、歌モノを作る時に、個人的には、生きている人のことをあまり歌詞に書きたくなくて。見えないけどそこにいる存在みたいな、気配みたいなものを描きたいと思うんです。「ふたりごと」という名前も、見えないものの気配を感じながら生きていくというイメージがぴったりきていて、そういうのはコンセプトになっていると思います。ただ、あくまでポップでいたいので、人によっては恋愛にも聴こえるし、失恋にも聴こえるし、いろんなように聴いてもらえるように作ることを心がけています。
Sohbanaさんは、自身の作風や方向性についてはどんな風に考えていますか?
Sohbana 自分の作風は一つに縛らないようにしていて、いろんな幅を持った曲を作ることを目指しています。ただ、歌詞には自分らしい感じがあると思うので、その世界観を守るようにしています。Sohbanaは「総花」という言葉からとった名前なんですけど、「総花的」って、もともと関係者全員に利益が行くようにするような意味で。そういうこともあって、特に縛らないようにしています。
ボカロ曲を作って発表していく中で、手応えのあったものは?
Sohbana こういうノリでやったらいいのかなと気付き始めたのは「Stridor」という曲ですね。2019年11月に発表した曲なんですけれど、そこで自分なりに聴いている人がより深く入り込めるサウンドと曲が書けたと思っていて。その時のインパクトと比べて聴いた時に侘しく聴こえる曲は書かないようにする基準になっています。
歌詞としてはどうでしょうか? なかなか上手く言えないんですが、Sohbanaさんの歌詞には独特な切なさと情緒がある感じがします。どんなことを考えて書いていますか?
Sohbana 今おっしゃった「上手く言えない感じ」って、まだ言葉が付いていないということなので、一番新しいものだと思うんです。自分としても「○○系だよね」と言えないような歌詞を書くことは気をつけています。あとは日本語の美しさみたいなものを追求しているというのもありますね。
モネルタPさんはどうでしょうか? 自分の作風や方向性として考えていることは?
モネルタP 自分の曲の特徴としては、まずは聴きやすさを重視しています。たとえば基本的にサビは2回だけにして、1番と2番は違う展開を持ってくるような作り方をしていたりしています。歌詞については、自分は意味よりも響きのほうを重視しているので、メロディにあった擬音を入れたり、遊び心を忘れずに作っています。
Sohbanaさん、モネルタPさんはPuzzle Projectに参加したことをきっかけに、作家として楽曲提供としてのお仕事を始められたということを伺っています。お二人は作曲家としての経験はそれまでありましたか?
Sohbana 完全にこれが初めてになります。
モネルタP 自分も初めてです。
作曲家というのは、ボカロPとしての活動と違ったオーダーありきの制作だと思うんですが、どんな違いがありますか?
Sohbana 作家として指定をいただいて曲を書く時には、ボカロPとしてのスイッチが一度切れるんです。ボカロでウケる曲、ボカロっぽい傾向の曲を書くとは限らない。「Stridor」以前の自分を思い出しつつ、自分の音楽性を広げるような位置づけで考えています。チャンネルを分けてやっている感じです。
モネルタP 自分もボカロPとしてのスイッチが切れる感じですね。参考音源をもらって、それをもとに作っていくような感じなので。
やってみて、どうでしたか?
Sohbana 純粋にやりやすい部分とやりづらい部分がありますね。思い浮かぶ時は「リファレンスをくださって、ありがとうございます」になるんですけど、浮かばない時は本当に浮かばない。でも、そうやって苦しい時に成長している実感はあります。
モネルタP 自分は曲を作る時に一番時間かかるのが0から1にする作業なんです。でも、最初から「こういう曲を作って下さい」という感じで渡されると、そこをかなり省略できる。それまで曲を作るのは遅くて、1曲に2~3ヶ月くらいかかっていたんですけど、1週間くらいで1コーラスくらい作れるなっていう発見がありました。
三浦さんはふたりごと以前にも作家として活動されてきたと思うのですが、そのあたりはどんな感覚の違いがありますか?
三浦 僕は歌モノの楽曲提供より、映像音楽を多くやってきたので、かなり違う感覚でやっています。劇伴では、基本的にみんな作品を観ているので、音楽が勝っちゃいけないと思うんですね。音楽を弱く作っているわけではないんですけど、台詞や人の動き、作品の中での出来事よりも音楽の印象が耳について残ることのないように気をつけています。むしろ音楽と効果音がつくことによって、映像がよりよく見えるように心掛けています。
杜ノ狼さんはどうでしょう? 歌い手としての自分の得意なところや、ふたりごとの活動が始まってからの変化などはどう感じていますか?
杜ノ狼 私はもともと綺麗な曲や優しい曲が自分に合うと思っていて。速い曲は苦手分野だったんです。でも、ふたりごととして活動していく中でアップテンポで歌わないといけない曲もあって。苦手なところも自分のものにできるように頑張ろうと思うようになりました。
三浦さんとしては、杜ノ狼さんの歌声の魅力はどんなところに感じていますか?
三浦 ウィスパー的な声質、声を張り上げない歌い方が杜ノ狼の良さだと思っていて。だから、速い曲とかには相性は良くなくて、やっぱり優しい曲、テンポの遅い曲が合うとは思います。それはわかっているんですけど、それでも何か新しい一面を引き出したいと思って作っていますね。
SohbanaさんとモネルタPさんにもお伺いしたんですけど、ボカロPとして、作曲家として、歌い手の声の表現についてはどんな風に考えていますか?
Sohbana ボカロと違って調声ができないぶん、共作の考えが強いのかなと思っています。シンガーの方の表現で自分が意図してなかった良さが出てくることもあるけれど、その一方で、ケースバイケースだと思うんですが「違うんだよな」というところに関しては言わなきゃいけないということを実感したりもする。当たり前なんですけど、コミュニケーションが大事になってくると思います。
モネルタP 自分の曲の「歌ってみた」をあげてくれる人もいるんですけど、自分は生身の方が好きですね。自分の曲を歌ってもらうんだったら、声質や歌いまわしに個性がある人に歌ってもらいたいなと思います。
最後に、この先のこともお伺いさせてください。SohbanaさんとモネルタPさんは作家としての活動領域も広がってきているということですが、この先のビジョンや目標についてはどういうイメージがありますか?
Sohbana 「こういう感じだったらSohbanaにしよう」というブランドができればいいなと思っています。目指すところで言うと、最近は大石昌良さんと川谷絵音さんですね。スタンスとしてリスペクトできる、尊敬できる方だと思っていて。自分の作品と、人に提供している時の自分の役割を自覚して相手に合わせた曲作りが器用にできる方だと思います。そういう感じを目指しています。
モネルタP 最近Puzzle Projectのホームページから作曲の依頼をくださった企業さんがいらっしゃるんですけど、自分が曲を作って、それに価値がついて、感謝されるという経験が初めてだったので、ものすごく嬉しくて。今後も誰かのためになるような曲も作っていきたいです。すごくメジャーな感じというよりは、この人の曲を聴いていたら格好いいと思われるような、ちょっとアングラな感じの路線で行きたいなと思ってます。
三浦さんと杜ノ狼さんはどうでしょう? ふたりごとの活動で目指していくイメージは?
杜ノ狼 少しずつ数を伸ばしていくことが目標です。「三浦さんが作った歌は杜ノ狼の声じゃないと」って言ってもらえるくらいに歌いこなせるように自分も頑張っていこうと思っています。
三浦 まだ活動し始めたばかりということもあって、今はより多くの人に聴いていただけるような曲を作りたいし、曲だけじゃなくて、表に出る機会があれば積極的にやっていきたいなと思っています。音楽的な内容で言うと、自分はもともとクラシックとかオーケストラが好きでよく聞いていたので、ゆくゆくは生の音を取り入れたりとか、たとえば米津玄師さんのような、オーケストラとポップスの融合のようなものにも挑戦していきたいなと思ってます。ポップスではあまりやらないことにも躊躇せず挑戦していきたいなと思います。
「Puzzle Project」とは?

「Puzzle Project」は、次世代アーティストの音楽性・楽曲・世界観とソニーミュージックグループが持つソリューションを掛け合わせ、作品を世界に広げていくプロジェクト。プロジェクト参加アーティストには、小説を音楽にするユニット“YOASOBI”を誕生させた小説投稿サイト「monogatary.com」によるクリエイティブサポートや、世界に45ヵ国以上の拠点があり、2019年より日本でサービスを開始した大手音楽ディストリビューション会社「The Orchard」での世界配信サポートが行なわれる。また、その他ソニーミュージックグループが持つさまざまなソリューションを活用し、楽曲制作、映像制作、ライブ制作などのクリエイティブサポートなどが行なわれる。
公式サイト
https://puzzle-project.jp/
随時エントリー受付中。エントリーはLINE公式アカウントより。
https://lin.ee/cPUfl4c
参加資格
- インターネットを活用し自身の作品を発表している方
- 年齢不問
- 国籍不問 ※日本国内在住の方に限ります