
2021.10.14
AIが音楽制作・DJに与える影響は? 英月刊誌「DJ Mag」にて特集が掲載
エレクトロニックミュージックとDJに焦点を当てたイギリスの月刊誌「DJ Mag」のウェブサイトで、「AI(人工知能)が楽曲制作やDJプレイにどのような影響を与えるか」についてのロングコラム(全3回)が掲載されています。
第1回は「人工知能が音楽をどう変えるか」という観点から
- YouTubeやSpotifyなどの音楽プラットフォームでは、AIを利用することで、次に再生する楽曲をオススメしたり、再生の中断を極力無くしたり、リアルタイムに音量を調整したりしている
- SpliceやLoopcloudは、機械学習を利用して、楽曲制作時に新たにサンプル素材をオススメしたり、サンプルのキーや音色などの属性から何百万ものサンプルライブラリをスキャンできる
- EndelやAIMIのようなアプリは、Richie Hawtin、Grimes、Black Loops、Shanti Celesteなどのステムを使用して、リピート無しの、無限に続く音楽を生成している
- VirtualDJやDjayといったDJソフトは、リアルタイムに曲をパート(ボーカル、ベース、楽器、ドラムなど)ごとに分解させることができる
- DJソフトでは他にも、機械学習を利用して、今かかっている曲と次にかかる曲の混ざり方を学習してプレイリストを作ったり、Pioneer DJのrekordboxでは、AIによるボーカル検出機能で、ボーカルがふたつ重なってしまうのを防ぐことができる
などの例を挙げつつ、
- 曲のサンプリングが80年代以降問題になったように、音楽におけるディープフェイク(機械学習でアーティストやプロデューサーのスタイルを識別し再現する)が2020年代以降大きな問題になる可能性がある
と述べています。
第2回は「人工知能が音楽制作に与える影響」という観点から
- iZotope社のプラグインNeutronには顔認識の技術や機械学習を利用したTrack Assistantという機能が搭載されていて、入力を 「聞いて」、楽器を識別し、ミキシングのテクニックを提案してくれる
- 「ミックスエンジニアとして、自分の創造性や人間性を一切加えずにミックスをして生計を立てているのであれば、テクノロジーに取って代わられる」「レコーディング後にセッションファイルを開いたところ、レベルはいいし、周波数のぶつかりもなく全体的にいい音がする。でもこれはクリエイティブの出発点であって終着点ではない」
――Jonathan Bailey(iZotope最高技術責任者)の発言 - AIがミキシングや楽器の抽出を支援するツールから、本格的な機械学習DAWまで、プロデューサーやエンジニアの状況は、ここ数十年で最大の変革を迎えようとしている
と語っています。
第3回は「人工知能がDJブースに浸透していく様子」と題して
- 音楽へのタグ付けと分類を自動でしてくれるMusiio社のAIは、キーやBPM、アーティストなど無機質なタグ付けではなく「感情」「エネルギー」「ムード」「ボーカルがどのくらい入っているか」「ジャンルの割合」などで分類してくれる
- (メタバースのSensoriumやAIが自動生成する音楽アプリMubertの例を挙げつつ)人工知能は、実際に録音された何百時間ものデータに基づいて音楽を生成することも、バーチャルDJが実際にダンスフロアから学ぶこともできる
ことなどについて書いています。
今後のAIと音楽制作/DJの関係を読み解く上で、非常に面白く読み応えのある記事となっています。是非みなさんも一度目を通されてみてはどうでしょうか。
文: 三嶋 直道(PIANO FLAVA)