2021.10.07

イギリスの実態調査で、ストリーミングだけで生活できるクリエイターは720人と報告

先月、英国知的財産庁(UK Intellectual Property Office)が、イギリスのアーティストを対象に行ったストリーミングで得られる収益に関する調査結果をまとめた報告書を公開しました。

「デジタル時代の音楽クリエイターの収益(Music Creators’ Earnings In The Digital Era)」と題された調査では、2014年から2020年までのストリーミングサービスのデータが収集・分析されています。

この調査では、2020年10月のデータを参考に、その期間にイギリス以外の国のアーティストも含めたアーティストで、イギリスからのストリーミングで100万再生以上を達成しているのは1723人(0.41%)だったと報告されています。

オフィシャルチャート・カンパニー(OCC=The Official Charts Company)と英国レコード産業協会(BPI=British Phonographic Industry)から提供されたデータによると、2019年時点での前年の全英シングル上位5000枚の「売上」(フィジカルおよびダウンロードの売上データとストリーミングの数値を組み合わせて合成した数値)のうち、イギリスのアーティストに起因する割合は41.8%で、アメリカのアーティストに起因する割合は43.2%だったとも報告されています。

この数字を先述の1723人のアーティストに適用すると、「およそ720人(1723人の41.8%が720人なので)のイギリス人アーティストが、イギリスで月に100万再生以上のストリーミングを達成していることになり、その720人は我々が設けているキャリアを維持するための“最低基準”を超えていることになる」と報告書は述べています。しかし、この1723人という数字は、「変数が多いため、これは非常に大まかな目安に過ぎない」であるとも。

このデータを参考にすると、イギリス人であろうとなかろうと、イギリスからのストリーミングで収入を得ているアーティストのうち、その収入だけで生活できるのは0.41%ということになります。

報告書では、他にも音楽を専業とするミュージシャンのうち、年間収入2万ポンド(約304万円)以下のミュージシャンは43%で、3万ポンド(約456万)以下のミュージシャンは64%だったことも報告されています。

また現在、メジャーレーベルと契約しているアーティストの収入の2019年の中央値は5万1816ポンド(約787万円)となり、以前、メジャーレーベルと契約していたアーティストで2万5500ポンド(約387万円)、インディペンデントレーベルと契約しているアーティストで2万250ポンド(約307万円)、セルフリリースしているアーティストで1万2944ポンド(約196万円)となることから、メジャーレーベルと契約しているアーティストの収入は、他のアーティストに比べて“かなり高い”としています。

今回の報告書は、最近、イギリス下院デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会(DCMS特別委員会)が「ストリーミングが音楽業界に与える経済的な問題」に関する報告書が提出されたことを受けて、イギリス政府がストリーミング改革を検討するために音楽業界のリーダーたちを招集したことがきっかけになっています。

DCMS特別委員会は、昨年からストリーミングのビジネスモデルを検証し、そのモデルがソングライターや実演家にとって公正であるかどうかを検討しています。

【参考サイト】

Fewer than 800 UK musicians make a living solely from streaming(NME)
https://www.nme.com/news/music/fewer-than-800-uk-musicians-make-a-living-solely-from-streaming-3058288

文:Soundmain編集部