2021.09.30

ストリーミング収益の半分を333人のファンとシェア。「楽曲の所有権販売」のもたらす可能性

今年初め、ほかのアーティストに先行してNFTアルバムを販売し、1170万ドル(約12億9000万円)という巨額の収益を上げたことで注目を集めたEDMプロデューサー/DJの3lau(ブラウ)が、10月8日に新曲「Worst Case」をリリースします。

コロナ禍をテーマにした曲だという「Worst Case」では、楽曲のストリーミング収益の50%を333人のファンとシェアするという試みを実施。これにより、誰かが「Worst Case」を再生するたびに3lauとともに楽曲の所有権を持つ333人にも、ストリーミング収益が分配されることになります。

NFTを積極的に利用してきた3lauは、ビジネススクール出身の音楽クリエイターで、投資家としても活動。これまでにミュージシャンが暗号資産を利用して作品を収益化する方法を模索する目的で、数多くのスタートアップを立ち上げてきました。

今回の新曲は、3lauが住宅購入スタートアップ・Opendoorの共同設立者であるJD Rossと共同設立した、楽曲の所有権をNFTとして販売する音楽マーケットプレイス・Royalの機能紹介を兼ねているとのことです。

Royalのサービス開始時期は現時点では未定ですが、Rolling Stoneが3lauに対して行ったインタビューによると、「Worst Case」のストリーミング収益をシェアする333人は、Royalに登録済みで友人への紹介数が多いユーザーから選出されたといいます。

3lauは、「Royalでは近日中に楽曲の所有権の販売が開始される予定で、最初にラインナップされるのは4~5組の様々なジャンルの有名アーティストになる」と語っています。また、Royalが発表されて以来、すでに2000人以上のアーティストから問い合わせがあり、そのうち200人以上は月間50万人以上のリスナーを持つことも明らかにしています。

3lauとJD Rossは、Royaleはストリーミングサービスではなく、トークン化された契約を販売しているに過ぎないため、ファンはSpotifyやAmazon、Apple Musicなどの音楽プラットフォームでオンチェーンとオフチェーンの両方でロイヤリティを得ることができると説明しています。同サービスでは自分で楽曲の所有権を持つインディペンデントアーティスト以外に、メジャーアーティストも歓迎するとのことで、現在メジャーのある1社との交渉が進んでいることも明らかにしています。

3lauはRoyalについて、「楽曲の部分的な所有者になることで、ファンがより多くの音楽をストリーミングしたり、広告を出したりする動機付けになる」として、理論的にはアーティストからファン、レーベルまで、すべての人にメリットがあると考えているようです。

このようなサービスを通じて、音楽の作り手と聴き手に双方向性が生まれると、音楽ビジネスがより民主化される可能性があります。今後の展開に注目です。

文:Soundmain編集部

【参考サイト】

Every Time Someone Streams 3lau’s Next Song, Fans Will Get Paid – Rolling Stone
https://www.rollingstone.com/pro/news/3lau-streaming-rights-royalties-nft-crypto-marketplace-1230638/

楽曲の所有権をNFTとして販売、ファンがロイヤリティを受け取れるようにする音楽マーケットプレイス「Royal」 | TechCrunch Japan
https://jp.techcrunch.com/2021/08/27/2021-08-26-founders-fund-backs-royal-a-music-marketplace-planning-to-sell-song-rights-as-nfts/