
DAWとは何か? 3つの主要機能を押さえよう
DTMで用いる制作用ソフト「DAW」周りの用語についてまとめました! 細かい操作や見た目については、一般的なものにつきすべての場合に当てはまるわけではないのでご注意ください。
DTM(Desk Top Music)
もともとの意味は、文字通り「机の上で作る音楽」。
1988年にYAMAHAが発売したソフト「ミュージくん」のパッケージにあしらわれていたのが最初だそうです。
そして衝撃の事実は……これが和製英語だということ!
海外では一般に「Computer Music」と呼ばれるのだとか(諸説あります)。
最近では「机の上(デスクトップパソコン)」ではなく、スマホで音楽を作ることもできるわけですが、今後も「コンピュータを使って音楽を作ること」を表す記号的な表現として使われていくのかもしれませんね。
DAW(Digital Audio Workstation)
DTMをするためのメインツール。日常的には、「コンピューター上で動作する音楽制作用ソフト」というほどの意味で使われます。
DAWは大きく分けて「録音」「打ち込み」「ミックス」の3つの機能を持っています。
①録音機能
文字通りの録音機能です。単純なボイスメモなどと違うのは、複数の音を重ねながら録音できるということ(多重録音、マルチトラックレコーディング)。まずはドラムだけを録音、次に録音し終えたドラムの音を聴きながらベースを録音、さらにギター、キーボード、ボーカル……という風に、さまざまなパートの音を重ね録りしながら、ひとつの曲を作ることができるのです。
トラックとは?
それぞれのパートの音が記録された入れ物のことです(DAW上では、時間軸に沿った横長の行として表現されます)。基本的に1つの音色につき1トラックを使用し、音量や音質、左右のバランスなどをトラックごとに調整することもできます。
トラックに格納される=DAW上で扱える音データには以下の2種類があります。
オーディオデータ
「音そのもの」を記録しているデータのことで、いわゆる「波形」が表示されるもの。現実の空間にマイクを立てて、ロックバンドやオーケストラの演奏を生録音したら、すべてひと塊のオーディオデータとなります。
MIDI データ
オーディオデータとの違いは、一個一個の音に対して「どのくらいの音程で、どれだけの強さで、どれだけの長さで弾かれたか」といった情報が記録されているという点。「演奏情報をデジタル化して記録しているデータ」「デジタル版の楽譜」と説明されることもあります。DAW上では、波形ではなく、高さ(縦軸)と長さ(横軸)の二軸の中に音が四角いブロックとして配置され、クリックなどをすることでどんな種類の音色かなどの情報も確認することができます。
②打ち込み機能
MIDIデータを入力する機能のこと。前述のピアノロール画面で入力する方法のほか、譜面を書くことで入力する方法、数値を使って入力していく方法などがあります。マウスやトラックパッドでちまちま打ち込んでいくのが基本ですが、ピアノが弾ける人は、USB接続したMIDIキーボードをコントローラーとして用いるとより作業がしやすいでしょう。
なお、ピアノロールという言い方をしますし、MIDIキーボードもピアノのような見た目ですが、ピアノの音しか入力できないということはありません。MIDIキーボードで入力した信号をソフトウェア上で別の楽器の音に変換することで、ギターの音やドラムの音を打ち込むこともできるのです。
ソフトウェア上で鳴らすことのできる楽器=ソフトシンセサイザーの音(単に「音源」「シンセ音源」とも)は、DAWにもともと備えつけのものがあるほか、「プラグイン」という形で追加していくこともできます。プラグインには「VST」「AU」「AAX」などいくつかの規格があり、DAWによって対応している規格が異なるので注意してください(逆にいえば、たとえば「A」というVST規格のプラグインは、VST規格に対応している「X社」製のDAWと「Y社」製のDAW、どちらでも使用することができます)。
また、一般に打ち込み機能と呼ばれる中には「シーケンス機能」というものも含まれます。MIDIデータの記録・再生を行う機能のことで、トラックの上を縦線が横移動しながら走っていき、各音を表すブロックの上に線が重なったら実際に音が鳴る、というよくあるイメージを思い浮かべてもらうといいでしょう。
DAWを用いて作曲を行う人は、①+②の機能を使って、トラックを「作る」作業をしていると言えます。DTMで作曲をする人のことを指す「トラックメイカー」という呼び名は、こうしたイメージから来ていると言えるでしょう。
③ミックス機能
録音機能、打ち込み機能で作った複数のトラックを、ひとつの「音楽」へと混ぜ合わせる=ミックスするための機能です。ミックス作業は、いわゆる作曲、トラック制作の工程の後に来る工程ということで、「ポストプロダクション」という段階に位置づけられます(プロの現場においては、「レコーディングエンジニア」や「ミックスエンジニア」と呼ばれる専門家が担います)。マルチトラックレコーディングの最終的な出力形態を「ミックスダウン」と呼び、2chのステレオ音源としてミックスダウンされた音源のことを「2ミックス」と呼びます。
ミックス作業においては、各トラックの関係性に配慮しながら、音量や左右バランスの調整(パンニング)、エフェクトをかけるなどの作業を行っていくことになります。それぞれの作業をしやすくするためのプラグインもあり、シンセ音源と同じようにDAWに追加していくことができます。
代表的なエフェクトと、それぞれに対応する作業を紹介します。
イコライザー(EQ)
特定の周波数を増減させたり、カットしたりする作業がイコライジング。そのためのエフェクト(プラグイン)がイコライザーです。イコライジングは、もともとは低音から高音まで均等な音量になるよう補正するための作業ですが、周波数を操作することであえてラジオ風の音を作るなど、積極的に音を作り込むことも含まれます。
リバーブ
残響音や反射音を加えて、音に空間的な広がりを出すエフェクト(プラグイン)です。たとえば、「教会で鳴っているような」「コンサートホールで鳴っているような」といった3次元のサウンドデザインを行うことができます。
コンプレッサー
音を圧縮することにより、曲全体の中での音量の上限と下限の幅(ダイナミックレンジ)を狭める作業がコンプレッション。そのためのエフェクト(プラグイン)がコンプレッサーです。「コンプをかける」「音圧を上げる」といった言い方もよくされますね。静かな部分を大きくし、うるさく感じられる部分を小さくすることで、一定のバランスの取れたリスニング感を作ることができます。
ミックスダウンの後に来る最終工程が「マスタリング」です。平たく言えば、音源が再生されるメディアやサービス、スピーカーのフォーマットに合わせて(あるいはどんなメディアやフォーマットにも対応できるように)全体を整える作業です(これもプロの現場においては、「マスタリングエンジニア」という専門職がいます)。
【主要参考サイト】
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2009/08/news112.html
https://www.dtmstation.com/archives/51928188.html
https://info.shimamura.co.jp/digital/knowledge/2016/05/86923
https://www.landr.com/ja/jp-how-to-mix