2021.06.13

初音ミクら「ピアプロキャラクターズ」を使用したYouTube動画の収益化が解禁! その登場から現在まで、動画サイトにおける創作文化の歴史をたどる

ニコニコ動画を中心に「あなたの歌姫」(azuma、2007年)や「みくみくにしてあげる♪」(ika、2008年)、「恋するVOC@LOID」(OSTER project、 2008年)など初音ミクのキャラクターソング的楽曲がボカロシーンを席巻していた2007年~2008年に対し、2012年より米津玄師として活動を開始したハチや、2011年よりロックバンド・ヒトリエのボーカル、ギターを担当していたwowaka、2018年に自身の作品に関わるクリエイターを中心とした企業OTOIROを設立したDECO*27らが頭角を現した2009年以降は、投稿される動画に、オリジナルキャラクターを描いたイラストが使用されることも多くなった。

加えて、ボカロPの活動形態も多岐にわたるようになり、「P」として裏方に徹するだけでなく、本人が表に出てくるケースが増えていったのも時代の変遷を感じさせた出来事だ。例えば、「シャルル」「雨とペトラ」「レディーレ」などで知られるバルーンは2017年に須田景凪名義で、「quiet room」で知られる有機酸は2018年に神山羊名義で、シンガーソングライターとしての活動を開始した。彼らは、シンガーソングライターとしての活動開始と併せて自身の素顔も明かしている。また、新名義は作らずにボカロ楽曲製作と並行しながら自作曲をセルフカバーし、素顔を明かすボカロPも増えた。

ボカロ作品でトレンドになる曲調が、比較的ダウナーなロックサウンドになってきた2010年代の終わりには、「ベノム」(かいりきベア、2018年)、「ヴィラン」(てにをは、2020年)をはじめとして、そのメロディーの雰囲気から、ロックに特化したキレのあるパワフルな歌声が印象的なv flowerなどクリプトン社以外が開発したボーカロイドが使用されることも多くなっていった。

実況者を筆頭に歌い手、ボカロPが主戦場をニコニコ動画からYouTubeへと移行する動きが出てきたのが、初音ミクの登場からちょうど10年が経とうとする2016~2017年である。最大の理由は、ニコニコ動画よりもYouTubeで作品を公開したほうが多くのユーザーに見てもらえる可能性があると実感するクリエイターが増えたからだろう。具体的には、煮ル果実の「紗痲」が2018年、柊キライの「オートファジー」が2019年にYouTubeで公開されると大きく再生回数を伸ばし、彼らはYouTube発の新世代ボカロPとして名を馳せるようになった。動画のアニメーションを手がけたのは、いずれも人気イラストレーター・WOOMA。すでにピアプロキャラクターズを彷彿とさせるイメージを用いた動画は少なくなってきてはいたものの、映像作品としてのクオリティーは確実にアップしてきた。

2020年には和のテイストを取り入れた「百鬼祭」でボカロPデビューしたKanariaなど、新進気鋭のボカロPがYouTubeを起点に次々と存在感を露わにすることになる。米津玄師に続き2020年以降は、YOASOBI、Eve、ヨルシカ、Adoなどのボカロカルチャー出身アーティストが、J-POPシーンを駆け上がった。彼らの人気曲もまたYouTubeから広く再生されており、いまは作品を世界に届けることのできるYouTubeの利用は必須だ。

そしてこのYouTubeを起点としたボカロカルチャーの隆盛を受けて、2020年からは企業側も動き出した。12月には、ニコニコ動画を運営するドワンゴがボカロカルチャーの祭典 【The VOCALOID Collection】(ボカコレ)を年に数回開催していくことを発表。人気の歌い手・踊り手らを迎えたライブイベントの他、公式に設定されたタグをたどることで、新たな才能の種を見つけることができる。なかでも、ボカロPデビューしてから2年以内のクリエイターにスポットを当てたボカロオリジナル楽曲ランキング「ボカコレルーキーランキング」が注目を集めている。

同年9月30日には、セガとCraft Egg(後に初期から開発に関わっていた子会社・Colorful Paletteへ事業譲渡)がスマートフォン向けゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」をリリース。ボカロ楽曲を使用した「リズムゲーム」と、初音ミクとプロセカのオリジナルキャラクターによるストーリーが展開される「アドベンチャーゲーム」の側面を持つスマートフォンアプリで、ゲームにはDECO*27やピノキオピーをはじめ、シーンを牽引してきたボカロPによるオリジナル曲の書き下ろし曲に加え、本稿でこれまでたどってきたすべての年代のボカロ楽曲も多数収録。ゲームに収録される楽曲を募集する、「楽曲コンテストプロセカNEXT」も定期的に開催されている。

ボカコレとプロセカに共通しているのは、初音ミクをハブ(きっかけ)として誰もがクリエイティブの世界と繋がることができるということ。これらを通してボカロに触れたユーザーが、少し先の未来のボカロシーンを彩るクリエイターになる可能性は十分にある。

いまや初音ミクは日本国内を超えて世界中のライブステージに歌手として立つ存在だ。キャラクターイメージを守りつつ、クリエイティブをさらに加速させる。「初音ミク NT」におけるユーザー契約の変更と、今回のYouTubeでの収益化の解禁は、クリプトン社がこれらの求めに応えようとしていることの表れと言えるだろう。これまで辿ってきたような過去のボカロ作品、様々な活動形態といったベースができあがっている上でのこうした変化から、いままでとは大きく異なる楽曲・動画作品が生まれることになるかもしれない。今回のアナウンスを機に、まだ見ぬボカロカルチャーを創造するひとりとなってみてはいかがだろうか。

文:小町碧音