
Taylor Swift『Evermore』がアメリカでのアナログ初週売上枚数記録を更新。その意味とは?
近年、音楽の視聴体験の主流がストリーミングに移行し、CD市場が縮小する一方、アナログレコード市場は15年連続で成長を遂げています。
アメリカで2020年にリリースされた全アルバムのうち、アナログレコード(LP盤)は、そのうちの27%を占めており、売上枚数は2754万枚を記録しています。これはデータ分析会社の「MRCデータ」が1991年に市場の電子追跡調査を開始して以来、アメリカのアナログレコード・アルバムの年間売上枚数の最高記録になります。
そのような状況の中、Taylor Swiftの最新アルバム『Evermore』のアナログレコード盤が、アメリカで5月28日にリリースされてから5月30日までのわずか3日間で4万枚を売り上げています。
MRCデータが電子追跡調査を開始して以来、アメリカにおけるアナログレコード・アルバムの初週売り上げ記録を保持していたのは、リリース初週に4万枚を売り上げたJack Whiteの2014年のアルバム『Lazaretto』でした。
『Evermore』の売り上げ枚数は、それを上回るペースで伸びており、発売初週の集計が終わる6月3日までにさらに売り上げ枚数を伸ばすと予想されています。
『Evermore』のデジタルリリース(ストリーミングとダウンロード)盤は、昨年12月11日にリリースされていますが、それと同時期にアナログ盤の予約も開始されていました。そのアナログレコード盤リリースまでの間の約5ヶ月の間にファンによって積み上げられた予約販売枚数が、今回の『Evermore』の初週販売枚数に大きな影響を与えているとみられています。
最近では、Taylor Swiftのようなストリーミングで膨大な再生数を稼ぎ出す人気アーティストでも、アナログレコードやカセットテープのようなフィジカルフォーマットで作品をリリースするケースが増えています。
また、Spotifyがファンの動向調査から分析したニーズについてまとめたサイト「FAN STUDY」のデータによると、最もアナログレコードが購入されているのはストリーミングに慣れ親しんだ若者が支持する若いアーティストの作品でした。
このようなアナログレコードの人気を受けて、アーティストの間でもアナログレコードのリリース需要が高まっており、Bandcampでは、クラウドファンディングでアナログレコードをプレスできるサービスの対象者を1万組追加しています。
また、「PHONOCUT」のような自宅で簡単にアナログレコードをプレスできる機材にも注目が集まっています。
今後は、ファン層や音楽性によっては、ストリーミングやダウンロードのデジタルリリースと併用してアナログレコードをリリースすることも、アーティストが成功を掴むきっかけになるかもしれません。