2021.05.17

Apple MusicがロスレスのHiFiストリーミング開始!? iOS 14.6から導入か

TidalやDeezerといったストリーミングサービスが提供している、ロスレスのHiFi音質ストリーミング。2月にはSpotifyも、かねてからユーザーからの要望を多かったHiFi音質でのストリーミング機能である「Spotify HiFi」を今年後半から開始すると発表するなど、ストリーミングサービスの高音質ストリーミング機能に注目が集まっています。

そんな中、最大のライバルであるSpotifyのこの動きに追従するかのように、Appleも自社のストリーミングサービス「Apple Music」のHiFi音質サービスを始める可能性が高まっています。Apple製品に関する情報を扱うニュースサイト「9to5Mac」の5月初めに公開された記事で、iOS 14.6の最新ベータ版のApple Musicアプリに追加されたコードに「Dolby Atmos」や「Dolby Audio」、「Lossless」という文字列が明記されていると指摘されたことがきっかけで、この観測が浮上したのです。

現在までの「ミュージック」アプリは、ALAC(Apple独自のロスレスオーディオフォーマット)には対応しています。しかし、Dolby AtmosやDolby Audioには対応しておらず、このことからiOS14.6では、Apple Musicに何らかの変化があることを示唆していると考えられます。

これまでAppleは2012年から音楽レーベルがiTunes Store向けに提出する音源を「Mastered For iTunes」と称し、解像度が24bit以上、サンプリングレートが96kHz以上である、レコーディングスタジオの最終的なマスターとほぼ同じレベルのものを求めてきました。

Apple MusicのHiFi音質ストリーミングが開始されれば、HiFi音質楽曲のこれまでにはない巨大な規模のカタログが実現することになります。

また、先行するTidalやDeezerのHiFi音質ストリーミングの利用料金は、通常のサービスの約2倍の月額19.99ドルとなっています。しかし、Appleは、HiFi音質であっても月額9.99ドルを維持すると見られています。もし、そうなればApple MusicのHiFi音質サービスは、ユーザーにとっては価格面では大きな魅力であり、Appleにとっては競合サービスとの大きなアドバンテージになり得ます。

ハイレゾ、ロスレスなどの高音質なHiFi音質のメリットは、再生機器など音源の再生環境に左右されるため、多くの一般的な音楽リスナーにとって、違いが判別しにくい部分もあります。

しかしながら、近年は音楽制作機材の進化により、一部のプロに限らず、セミプロやアマチュアレベルの音楽クリエイターでも以前よりも高音質な音楽を作れる環境が整っています。それに伴い、音楽の作り手の間では音質に対するこだわりや意識も以前に比べて高まっています。

HiFi音質の音源はこれまではハイレゾ音源ファイルのダウンロードやUHQCDのような高音質CD盤が担ってきました。しかし、ストリーミングが主要な音楽の聴き方になって久しい現在、そのプラットフォームとなる音楽ストリーミングサービスがHiFi音質サービスを提供することで、よりアーティストの意図が音源を通じてリスナーに届くことになるはずです。

最近では音源のミックスダウンやマスタリングを手がけるサウンドエンジニアの仕事も「SoundBetter」のような音楽業界向けクラウドソーシングサービスで募集されていることから、以前よりもプロのサウンドエンジニアとの距離も近くなってきています。

これらのことを考えると今後、音源のHiFi化はさらに浸透し、その受け皿となるHiFi音質ストリーミングの需要も高まっていくのではないでしょうか?

音楽クリエイター、ユーザー双方から注目が集まるApple MusicのHiFi音質ストリーミング。続報を楽しみに待ちましょう!

【参考サイト】
https://9to5mac.com/2021/05/01/ios-14-6-beta-1-hinted-at-apple-music-hifi-support-with-dolby-audio-references/
https://forbesjapan.com/articles/detail/41250
https://soundbetter.com/s/mastering-engineers

<2021.05.18 追記>
Apple Musicから正式にロスレスオーディオでの配信がスタートするとの発表がありました。サブスクリプションの登録者には追加費用なしで提供されます。

また、ドルビーアトモスによる空間オーディオの提供も同時にスタートするとのこと。こちらも追加費用は不要です。

開始時期はともに6月とのことです。詳しくは下記のApple公式ニュースリリースをご覧ください。