2021.05.12

音楽業界のジェンダー格差是正に向けたプログラム「Future1000」がスタート

音楽業界でも他の業界と同じくジェンダーギャップの是正が課題になっています。しかし、UK Music Diversity Surveyの調査によると、イギリスの音楽業界の全アーティストのうち、女性が占める割合はわずか16%にとどまっています。

そのような状況を解決するべく、最近、イギリスでは音楽業界におけるジェンダー格差是正を目的にしたプログラム「Future1000」がスタートしました。

Future1000は、DJ、ジャーナリストとして活動しながら、BBC Radio 1のラジオ番組「BBC Introducing Dance」のホストを務めるJaguarと音楽教育を行う民間機関の「FutureDJs」によって設立されたもの。イギリス在住の12~18歳の女性、トランス、ノンバイナリーの学生1000名を対象に音楽業界でのキャリアアップの機会を無償で提供することを目的にしています。

このプログラムでは今年5月から12月にかけて、DJや音楽制作、マネジメント、ラジオのプレゼンテーションなど、様々な音楽業界の仕事に焦点を当てながら、音楽業界の仕組みを理解するためのオンライン講習が実施されます。

講習ではLCME(London College of Music Education)の認定を受けたコースチューターによる学習プログラムが利用され、受講者はインタラクティブなセッションを通じて、専門家から業界について学ぶをことができます。また音楽制作コースがスタートするとブラウザベースDAW「Soundtrap」の無料アクセス権が与えられるなど、受講者は音楽機材や予備知識を一切必要としないこともプログラムの特徴になっています。

Future1000の共同設立者の1人、Jaguarはプログラムについて、「若者が音楽の世界に入る最初の段階で、ジェンダーの多様性と表現力を向上させるための支援を行っていきたいと考えています」と述べているほか、「自身が音楽業界に入ってから、たびたび職場で唯一の女性だったという経験から、同じような境遇の人たちのために変化を起こしたいと思うようになった」とプログラム設立の理由を明かしています。

また、FutureDJsのAusten Smartは、「プログラムを通じて、多くの女性、トランス、ノンバイナリーの学生が音楽業界への第一歩を踏み出すことを支援します。現在、時代遅れになっている業界の構造を改革することで、次世代の才能のための真のチャンスを生み出したいと考えています」と述べています。

イギリスでは、2019年にDJが中等教育のプログラムに追加され、「GCSE」(The General Certificate of Secondary Education)と呼ばれる卒業試験の選択科目のうち、音楽の試験科目のひとつとしてDJを選択することもできます。Future1000に関わるFutureDJsもすでにイギリス国内の学校授業において、DJに関する授業の教師役を務めるなど、DJを含む音楽業界の仕事に若い学生が触れる機会は以前よりも増えています。

そのことを考えると、次の世代の音楽業界を支える人材を確保し、今後の健全な発展のためにも、業界におけるジェンダーギャップの是正は、今、イギリスの音楽業界が取り組むべき課題のひとつだといえるでしょう。

また、日本の大手DTMサイト・Sleepfreaksが昨年実施した実態調査によりますと、DTMで音楽制作する女性の数は全体の4.96%にとどまっています。

そのことを考えると日本でも今後、こういった取り組みを行うことで女性が音楽業界に進出し、活躍する機会が広がりを見せるはずです。

【参考サイト】
https://future1000.org/
https://futuredjs.org/future1000/
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6062cdc4c5b65d1c2818ac86
https://sleepfreaks-dtm.com/dtm-materials/2020-daw-ranking/

画像:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ugandan_musician_on_stage_5.jpg