JASRACインタビュー
2021.04.16

JASRACに聞く! 著作権・YouTube対応・クリエイターがメンバーになるメリットについて

JASRAC=クリエイターの集まり

最近、事務所やレーベルに所属せず個人で作品を発信しているDIYアーティストも増えています。そのDIYアーティストが作詞作曲もしている場合、出版社経由で楽曲が管理されていないケースもあると思うのですが、JASRACとしてはそういったケースにも対応してもらえるということですね。

もちろん、対応します。JASRACは元々1939年に当時のクリエイターが集まって誕生した団体です。JASRACと信託契約を結んだ作家の第1号は、詩人としても有名な島崎藤村ですし、昨年放送されたNHK朝の連続テレビ小説『エール』の題材になった古関裕而も設立の中心となった1人です。クリエイターが集まって作ったという点はDNAとして、現在にもつながっていると思います。

現在、市場に流通する楽曲の多くは音楽出版社が権利を持ち、JASRACも音楽出版社からの管理委託を通じて多くの楽曲を管理しています。クリエイターにもさまざまな環境で活動されている方がいると思いますので、JASRACとしては、クリエイターの楽曲を漏れなく管理することができるよう、その受け皿として個々のクリエイターと直接向き合っていくことが大切だと思っているんです。

また、国際的にもクリエイターは著作権管理団体と直接契約するのがスタンダードですので、世界標準に近づけるという意味合いでも、個人のクリエイターがJASRACメンバーになっていただけるよう取り組んでいくことは重要なことだと考えています。

海外では個人契約がスタンダードなんですね。

日本の場合は著作権管理団体と契約していなくても音楽出版社経由で個人の取り分の使用料を受け取る仕組みがあるのですが、海外では、直接管理団体と契約していないと(特に演奏権の)使用料を受け取れない場合が多いんです。
つまり、日本のクリエイターの楽曲が海外で使われた場合、団体と契約をしておかないと、海外の団体から個人分の使用料は入ってこず、いわゆる取りっぱぐれという状態になるんです。

ちなみに、海外の団体とはどのくらい契約されているんですか?

96ヶ国・4地域の126団体と相互管理契約を結んでいます(2021年4月現在)。

海外でライブをしたら、クリエイターからJASRACに報告したほうがいいのでしょうか。

現地の管理団体がJASRACメンバーの公演について調べていますし、JASRACでも委託者の海外公演情報を収集していますので、報告していただかないといけないということではありません。しかし、全ての海外公演情報が現地の団体やJASRACに揃っているわけではありませんので、JASRACメンバーのクリエイターや音楽出版社からあらかじめ情報をお寄せいただけますと、その情報を現地の団体に送り、きちんと使用料を徴収するように働きかけを行うことができます。

最終的には全世界の管理団体から使用料と楽曲情報が送られてくるのですが、JASRACでは受け取った情報をJASRACのデータベースと照合して、楽曲を特定しています。海外から送られてくる情報にはJASRACが使用している作品コードは載っていないこともあるので、特定する作業が必要となります。

海外では作品はどのように管理されているのでしょうか?

音楽作品のための唯一の国際標準コードとなるISWC(International Standard Musical Work Code)に基づき管理されています。JASRACなどの管理団体が加盟するCISAC(著作権協会国際連合)は、このISWCや楽曲名、作家名などの作品データで構成するデータベースCIS-Netを設け、JASRACを含むCISAC加盟団体が作品情報を登録、活用しています。JASRACメンバーの楽曲が利用された国・地域の管理団体が速やかに権利関係を確認できるよう、確実に作品情報をCIS-Netへ登録しています。

JASRACの課題

JASRACとしての現状の課題、また新たに取り組まれていることは何でしょうか。

大小さまざまな課題がありますが、クリエイター、権利者の関心事でいうと、海外からの入金を増やすための取り組みがあります。

海外からの入金につなげるには、世界中どこで使われても楽曲が特定される必要があり、その精度を上げる必要があります。

先ほど話が出たCIS-NetにAVI (Audio Visual Index)という映像コンテンツの情報に関する国際的なデータベースがあります。JASRACが保有するキューシート情報(映像コンテンツごとに使用された楽曲、権利者、時間等を記載した資料)を登録することで、海外で日本の映像作品が使用された場合、外国団体はCIS-Net AVIを通して速やかにキューシートの入手ができるようになります。JASRACが映像のキューシートの情報を提供することで、外国団体は日本の映像作品を管理することができ、海外からの入金増が見込めます。

例えばアニメですと、『鬼滅の刃』が海外では『Demon Slayer』となるように、タイトルが変わるケースがありますよね。そういった情報をJASRACが入手してCIS-Net AVIに登録することで、外国団体が特定しやすくなり、世界のどこで使われても、本編内で使われている楽曲について全て分配を受けられるような仕組みを作る、ということを進めています。

さらに、音楽出版社からの届け出情報をCWR(Common Works Registration)という国際的な標準作品届フォーマットに変換して、音楽出版社へ提供しています。これを国内の音楽出版社が海外各地のサブパブリッシャーにフィードバックすることで、楽曲特定が容易となり、入金増につながります。

また、楽曲特定とは別ですが、海外からの入金を増やすには実際に「主張」していくことが必要です。そのために、JASRACメンバーがアーティストで、海外で公演をするような場合に、その情報を現地の管理団体へ提供して、きちんと使用料の徴収を行うよう依頼しています。

「デジタル」にも力を入れています。デジタルトランスフォーメーションを推進しており、一例では、楽曲利用に関する膨大なデータの集計・分析を効率化するため、大量のデータを蓄積・高速処理をするBIツールを導入しました。

「デジタル」で効率化を図りながら、人間にしかできないところに人的リソースを割き、いずれにしてもJASRACメンバーに新たな価値を提供できるよう取り組みを進めています。

ブロックチェーンを活用した音楽作品情報の登録と共有に関する実証実験について(JASRAC

新しいプラットフォームとの向き合い方

最近ではClubhouseなど、音声を使った新しいサービスが次々出現しています。そういった新規サービスが出てきた時は、どのような対応をとられるのでしょうか?

最初にお話ししたように、音楽を利用される事業者の多くは、サービスインの前にJASRACにご相談いただきます。プラットフォームの場合も、エンドユーザーの利便性を確保する観点で、JASRACとの契約を考えられるケースが多いようです。実際のサービスの内容や音楽の利用方法を伺って、適用する使用料等の交渉を行い、最終的に契約を交わします。

もちろん、JASRACからアプローチしていくケースもあります。プラットフォームとの交渉は決して容易なものではありませんが、著作権使用料がサービスにおける単なる「コスト」ということに止まらず、クリエイターへの対価還元を通じて音楽業界、音楽文化の発展につながるという意識を共有できるようになると、関係はより深いものになっていくように感じます。

クリエイターからもプラットフォームとの取り組みについて色々意見がきていたりするのでしょうか。YouTubeのUGCからきちんと徴収してほしい、とか。

はい。ここ数年、YouTubeでの楽曲利用やその使用料分配は、JASRACメンバーから大きな関心が寄せられています。

YouTubeのコンテンツIDの仕組みでは必ずしも楽曲が特定されないと聞いたことがあります。

YouTubeには数え切れないほど多くの動画がアップされており、動画で利用されるあらゆる楽曲が機械的に特定されるというところにまでは至っていません。動画投稿者による自作の音源やカバーなどの場合、コンテンツIDの仕組みで楽曲を特定することは難しい状況です。JASRACは人的な照合で楽曲を特定して、コンテンツIDの仕組みで特定された楽曲と同じ条件で分配しています。

アニメ本編の場合は、台詞やSEも乗っていますから、検知するのも難しそうです。

「1話無料」のような形で公式にアップされている動画も特定が難しい動画の一つです。そこでJASRACでは、放送事業者等からの報告データを元に作成したキューシート情報を活用し、それらのアップされた動画とひも付けて分配につなげる取り組みを開始しました。動画と楽曲情報はそれだけでは紐づいていませんが、JASRACでは地道にキューシートの情報を整備しているので、このような分配が可能となります。

YouTubeで自分の曲がカバーされていたら……

例えばYouTubeで自作曲のカバー動画を見つけた場合、クリエイターはJASRACに報告できるのでしょうか。

はい。JASRACメンバーであれば、所定の連絡票でJASRACへご報告いただけます。

YouTubeでひたすらエゴサーチして、JASRACに連絡をするほうがクリエイターにとってメリットがあるような気がしてきました。自分の作品のUGCが多いクリエイターであれば、そういった利用状況を直接報告できるのはJASRACメンバーになるメリットですね。

はい。JASRACとしても楽曲の特定精度を上げるための取り組みを進めていますが、YouTubeの圧倒的な数の動画に向き合うため、現状ではJASRACメンバーからのご報告をお願いしています。

UGCへの取り組みで合ったり、利用状況の報告であったりと、メンバーが色々な声を出していけばJASRACも色々と動いてくれるということですね。

おっしゃる通りです。先ほどのYouTubeの利用状況の報告もメンバーの声を受けて簡便化しました。また、今日は詳しく紹介できませんでしたが、メンバーの皆さまには、使用料の分配の際に楽曲ごとに利用されたサービス名やイベント名などの詳細情報をご提供している(詳細はこちら)のですが、これも最初のきっかけはメンバーからの声でした。

JASRACを知ることがクリエイターを強くする

最後に、これからの時代に音楽を生業にしていきたいと思っているクリエイターの方々へコメントをいただけますでしょうか。

ご質問にもありましたように、デジタル技術の発達で、制作はもちろん、楽曲の発表からディストリビューションまでクリエイター自らのコントロールで行うことができる時代になりました。また、海外展開も容易になり、世界中のリスナーとつながり、支持を獲得することができたりと、クリエイターが取り得る選択肢が増えていると思います。クリエイターの皆さんには、その選択肢の一つとしてJASRACとの契約や、契約せずとも管理の仕組みや、権利のことを知っていただきたいなと思っています。

JASRACはメディアでの取り上げをきっかけにいろいろな形で指摘を受けることがありますが、誤解に基づく事実でない情報だったり、かなり古い時代の情報だったりします。先ほども触れたとおり、デジタルトランスフォーメーションを推進するとともに、メンバーの声を受けて、よりよい仕組みに進化させる取り組みも続けています。

JASRACとしてはあらゆるタイプのクリエイターをサポートできたらと考えています。ウェブサイトをご覧いただいたり、現在はコロナで実施できていませんが、クリエイター向けのイベントも開催していますので、そちらにご参加いただいたり、お気軽に連絡いただければと思います。

クリエイターの方々がまずはこのようなことを知っていただくことが、コロナを乗り越え、クリエイター自身そして音楽カルチャーの未来を切り開いていく一つの武器になるのではないかと思っています。

取材・文:岩永裕史、関取大(Soundmain編集部)