
2021年のフェス体験はどうなる? 3月までの国内・国外ニュースから
COVID-19の世界的流行を受け、昨年大打撃を受けた音楽フェス。文化的・経済的な損失の大きさを鑑みつつ、野外フェスは屋内イベントと比較しても「密」を避けられるということを踏まえ、After/Withコロナの時代においても安全・安心なフェスを行っていくべく、株式会社スペースシャワーネットワーク(「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」主催)をはじめとする7社合同の「野外ミュージックフェスコンソーシアム」が立ち上げられました。
名前を連ねる7フェスのうちFUJI ROCK FESTIVALについては3月26日、<国内アーティストのみ>という基準を設けて今年の開催に踏み切ると発表。ここでしか観られない海外アーティストのアクトが観られるということで国内音楽ファンのみならず、近年はYouTube無料配信も積極的に行うことで海外からの注目度も高まっていた同フェスが、国内アーティストに限定してどのようなラインナップを揃えてくるのか。縛りがあるからこそ「フジロックらしさ」がより見えてくるのではないかと、音楽ファンの間では早くも予想合戦の様相を呈しています。
海外での動きはどうでしょうか。下記はヨーロッパで晩夏~初秋にかけてフェスが開催される見通しが立ち始めているというリポートですが、キャンセルの判断をいつまでにすればいいのか、キャンセルされたとしてそこに補償はあるのか、ギリギリまで判断が伸びた場合、設営のために他の現場に回ってしまった建設スタッフを集められるのかなどの問題が浮上してくるだろうと示唆しています。
COVID-19とは直接関係ないところでは、イギリスがEUから離脱したことによる、ツーリングの課税問題についても触れられています。フェスという空間は、会場までの移動や現地での食事も含めた、さまざまな産業が交差する点に現れるものだということを忘れてはならないでしょう。
世界最大のライブ・エンターテインメント企業、Live NationのCEO・Michael Rapinoは、「ライブ音楽は2022年に復活する」との予測を公表〔参照:世界最大級のライブ・エンターテインメント企業、Live Nation(ライブネーション)のCEOが「国際的なツアーやイベントといったライブ音楽は2022年に復活する」と予測(iFLYER)〕。今年1月には有料配信サービスのVeepsを買収し、ビジネスを再編成する準備も進めているといいます。
Live Nationはライブ配信への参入に出遅れたとする見方もありますが〔参照:ライブ・ネイションが有料ライブ配信に本格参入、スタートアップVeepsの買収はライブ収益化を加速させるか?(All Digital Music)〕、Michael Rapinoは「フェスとテクノロジー」ということで真っ先に思いつくライブ配信について、100%楽観的ではない見解を述べています。実空間のライブを代替するものではなく、あくまで実空間でのライブを補完するものと捉えているのです。
「This is just now an opportunity with Veeps to do some of that direct-to-consumer on the club shows, amphitheater, festival shows that we think will have that added capacity and demand that will help increase some of the revenue for the artist. So, we think it’s kind of like a T-shirt and merchandise in a VIP platform. It’s another incremental revenue stream to the current physical show. […] So, when we’re putting those on sale, just like today, we try to sell you an upgrade, VIP package or a T-shirt, for those that can’t come to the show — but possibly even if you come to the show and you want some — to look at some other camera angles on your phone, we think it’s a good complement or an add-on to our physical show.」
ライブ・ネイション社の決算発表にて(訳:Soundmain編集部)
「Veepsでクラブショーや円形劇場、フェスティバルなどを消費者に直接販売することで、アーティストの収益向上につながると考えています。VIPプラットフォームにおけるTシャツやグッズのようなものです。実際の空間上でのショーに加えて、別の収益源を増やすことができるということです。〔…〕今日のように、会場に来られない人のために、VIPパッケージやTシャツなどを販売することもしていきますが、実際にショーに来て、スマートフォンで他のカメラアングルからステージを見たいという方にとっても、実際の空間でのライブ体験を補完することができると考えています」
「国内のアーティストしか呼べない」「会場に行くことができない」といった否定形で語られがちな制限のある中で、どのようにしてユニークな体験を作り出せるか。「いつも通り」と「非常事態」を対立させるのでなく、新しい選択肢を(これまでは出来ていたことの「代わり」ではない)オリジナルなアイデアとして育てていけるか。5年後10年後の音楽の未来に向けて、主催者のみならず、受け手の側も変化をポジティブに受け入れる心構えを持つべきなのかもしれません。