2021.03.29

Spotifyが「Loud & Clear」を開設。アーティストへの支払いにまつわる疑問に答えるサイト

現地時間3月18日、Spotifyが「Loud & Clear」という新たなウェブサイトを開設しました。ストリーム数とアーティストへの支払い額の基本的な関係から、「昨年100万ストリームを超えた楽曲は何曲?」といった情報まで、長年音楽業界の議論の的となってきた同社およびストリーミング・サービスという業態の実態を、自ら透明化する試みとなっています。

Spotifyのアーティストへの支払いの仕組みは、いったん巨大なプールにユーザーの月額利用料などがすべて入ったのち、各人のストリーム数に応じて比例配分されるというものです。したがって、「ヒット曲を量産するポップスターほど有利となり、ジャズやクラシックなどインスト中心のジャンルのミュージシャンには不利となるのでは?」という疑問であったり、「再生回数を増やすために短めの楽曲が多くなったり、ヒットした楽曲と似たような楽曲が多くなる傾向が加速してしまうのでは?」という懸念であったりも、たびたび指摘されてきました。

今回のサイト開設は、そうしたよくある疑問や懸念にQ&A方式でひとつずつ丁寧に答えています。サイト内に「Our aim with this site is to provide a valuable foundation for a constructive conversation(このサイトの目的は、建設的な会話の価値ある基盤を提供することです)」とあるように、これまで憶測交じりに語られていた点を当事者自らがクリアにすることで、(ポスト・)ストリーミング・サービス時代における音楽のあり方について、思考を促してくれるものとなっていると言えるでしょう。

また、サイト中腹にある、Spotifyによる独自のアーティスト分類も興味深いです。「SONGWRITERS & PRODUCERS」「DIY」「HERITAGE」「MARKET MOVERS」「ESTABLISHED」「SPECIALIST」「CHART TOPPERS」「BREAKTHROUGH」の8つがあり、たとえば「SPECIALIST」は、(プレイリスト文化によって需要の大きさが顕在化した)瞑想やリラックスなど、特定のシチュエーションに合わせた楽曲を作ることに長けたタイプのミュージシャンです。デジタル・ディストリビューション・サービスを用い、配信まですべて自分でやる方法が適しているのか(DIY)、レコードビジネスでいうところの、A&R的な存在を必要とするタイプなのか(BREAKTHROUGH)といった活動形態に合わせた区別も設けられており、ストリーミング・サービスが顕在化させた「職業としてのミュージシャン」の多様性についても、改めて考えさせられるものになっています。

Loud & Clear」より

また付属の機能として、月間リスナー数と全体の上位何位のアーティストであるかの照合も可能になっています。ユーザー各自でアーティストページTOP右端にある「今月のリスナー」の数字を調べた上、「Loud & Clear」上の検索ボックスに打ち込みボタンを押すことで算出できます。

Loud & Clear」より

いまそのアーティストがどのような立ち位置にいるのか、もし不十分な数字だと思ったら、Spotifyで彼ら彼女らの曲の再生回数を増やす以外に、何か応援する手立てはないものか、ファン一人ひとりが自分にできることを考えるきっかけにもなるでしょう。

編集・執筆:Soundmain編集部