
アーティストとして成功するために、ファレル・ウィリアムズが大切にしていることとは?(世界に学ぶ! Vol.4)
2017年、米ニューヨーク大学傘下の音楽学校「The Clive Davis Institute of Recorded Music」にて、第一線で活躍するアーティストから直接学ぶことができる特別講習(マスタークラス)が開催され、講師としてファレル・ウィリアムズが招かれました。
ファレルが実際に学生の曲を聴くというコーナーがあり、マギー・ロジャーズという学生が、8日前に作ったという新曲「Alaska」を提出。曲を聴いたファレルはマギーを大絶賛、その映像がネットでバズを起こし、瞬く間にマギーの争奪戦がメジャーレーベル間で勃発。
大学卒業後Universal Music傘下のCapitol Recordsよりデビューし、2017年にはフジロックフェスティバル、昨年には米コーチェラ・フェスティバルにも出演。また今年のグラミー賞にて最優秀新人賞にノミネートされています。
動画公開後2ヶ月で彼女は時の人となったわけですが、今回の「世界に学ぶ!」シリーズでは、ファレル・ウィリアムズが何故彼女の作品を絶賛したのか、また何故彼女がヒットすることを事前に感じ取れたのか、彼の言葉を紐解きながら分析します。
マギ・ロジャーズは18:14より出演。彼女の曲を初めて聴いた時のファレルのリアクションは必見です!
自分の判断に素直になって、自分自身の音楽を進んで探せるかどうか
ファレル:ワオ、凄いね。この曲には何も言うことないよ。理由は、君は君自身の音楽を作ってるからだ。非凡なんだよ。
ウータン・クランが出てきた時もそうだったけど、彼らの音楽は他のどの音楽とも比較できなかったから、好きか嫌いかしか言えない。誰も評価できなかったんだ。
これは凄く特別なことだけど、誰でも持っている才能なんだ。でも大事なのは(クリエイターはこの才能を使って)自分の音楽に対して素直になれるかどうか。自分の判断に素直になって、自分自身の音楽を進んで探せるかどうかなんだ。
結構多くの人が、「あんな感じの曲を作ろう」っていうスタンスで曲作りをするけど、そうすると、目指してた曲のような曲に仕上がってしまったり、また以前聴いたことのあるような曲になってしまう
でも君の曲には、君の人生を聴くことができる。どういう経歴の持ち主かとか、君が辿ってきた道を聴くことができるんだ。
あと君のシンガーソングライターとしてのメロディーも素晴らしいね。僕はシンガーソングライターが大好きなんだよ。例えばスティーヴィー・ワンダー。彼の作品はポップだけど、シンガーソングライター系というか、彼も音楽を通じて物語を語っている。そんな要素を君の音楽にも感じたんだ。
君が作る曲のような曲を聴いたことがないし、こうやって、今まで聴いたことがない音楽と出会うことが、僕にとってのドラッグだよ(笑)。
誰でも自分の音楽に対して素直になれる
(クラスの生徒に向けて)君たちにもわかってもらいたいんだけど、彼女に言ったことは、君たちも同じことが言える。君達もそれをできる才能を持っているということだ。
曲を作っていて、たとえ人気が出なそうに聴こえたとしても、(自分に素直に)それを進んで受け入れて作らなければいけない。難しいとは思うけど。
僕の音楽に誇りを持っている部分といえば、例えば、違う要素を組み合わせて一つのものを作る手法があるんだけど、例えば、REESE’S CUPってクッキーがあるでしょ?あれは僕にとっては、とてつもない発明だと思ってて(笑)。
というのも、チョコレートはチョコレートとして素晴らしい。で、ピーナッツバターも素晴らしいよね。それぞれ素晴らしいものを混ぜ合わせて、第三の素晴らしいものを作り出す。
この2つの要素が混ざり合う最も美しい角度を探し出して、その角度からスクリーンショットを撮って自分の曲の土台にする。こういったことは、皆誰でもできることなんだよ。
サポートしてくれる人がいなければステージには立てない
別のインタビューでは、ファレルとマギーが当時のことを振り返っていましたが、そこでもファレルが大事にしていることが語られていました。
マギー:直接会ったことがない人達が私の人生を変えてくれて、ツアーでそういう人達と直接会えることは信じられないくらい感動的で。彼らが、私に能力をくれたおかげで、私がずっとやりたいと思っていた音楽を今できているわけだから。
ファレル:その謙虚な姿勢がとても好きだね。会ったことがない人によって自分の人生が変わったということをわかっていることがね。
僕も、クリエイターに常に言うんだけど、「自分がステージに立っているのは自分の才能のおかげって思うかもしれないけど、そうじゃない。サポートしてくれる人がいなければステージには立てないんだ」って。良い音楽を作ってるかもしれないけど、それだけでいいのか?って。
大抵のクリエイターは、良い作品があればそれでいいって思ってる。でもそう言う人たちが上手くいってないとき、「どうしたの?良い作品があるのに?」って言うと、彼らはそこでわかってくれる。何か別のものが必要なんだって。
だから君が、サポートしてくれている人たちに感謝していることはとても大事だと思う。彼らが僕らをステージに上げてくれているからね。
<編集後記>
「自分の音楽に対して素直でいよう」「サポートしてくれる人がいなければステージに立てない」というファレルの言葉が沁みますが、言うは易く行うは難し。これらを実践しているからこそ、彼を招聘した教授ボブ・パワー氏をして「出会った中で最もクリエイティヴなアーティスト」と言わしめる存在なのでしょうね。
文:岩永裕史(Soundmain編集部)