2023.06.14

Ballhead インタビュー ヒップホップの“踊れる”側面を追求する、ビート職人の生きる道

〈EPISTROPH〉のレーベルメイトから受けた影響

Table Beatsといえば、Ballheadさんは〈DRS〉だけではなくて〈EPISTROPH〉にも所属していますよね。加入のきっかけを教えてください。

tajima hal君が主催しているレーベルの「Hermit City Recordings」から出ている、『Beats In Cycle』というコンピレーションのリリースパーティに遊びに行ったのがきっかけです。コンピレーションのリリースパーティが東京であったんですけど、前日に大阪でコンピに参加しているYotaro君と飲んでいたら「また明日東京で」みたいに言われて。それで「おし、行きます!」って言って行きました。

行動力がすごい!

その頃は好きなビートがずっと流れている環境に飢えていたんですよね。それで行ったら、Kavvdっていう東京のビートメイカー仲間から「こいつ紹介するよ。こいつはヤバいバンドマンで……」とWONKの(荒田)洸君を紹介してもらったんです。それで「おお、WONK! 俺Tinderで女の子とメッセージのやり取りをしていたらバンドの話になって、『俺WONK聴いてるよ』って連絡したら、そこから返信来なくなったんだよね」みたいなことを話して(笑)。そういうくだらない話をした後、「そういえばこれ、この間出したビートテープ。聴いといてよ」ってパッと渡したら翌日に電話がかかってきたんです。「〈EPISTROPH〉っていうのをやるんですけど、良かったら加入してくれませんか?」って。「え、いいの? じゃあ、やりますか!」って感じで、そこから2~3ヵ月くらいでアルバム(『WEDO』)を出しました。2017年のことですね。

Tinderの話を本人にするのすごいですね(笑)。しかもそれで加入って……。なんていうか、もうコミカライズされてほしいです。

ね。アホみたいな出会い方だった(笑)。

〈EPISTROPH〉の人たちから受けた影響はありますか?

かなりあります。MELRAW君のライブを観た時に、テクニカルな部分を見せつけるところや、お客さんを喜ばせるためにやっていることがあるのがすごい良いと思ったんですよね。プレイヤーとお客さんって遠すぎてもダメだし、こっちがお客さんに迎合するようなスタンスでいても憧れる対象にはならないと思うんですよね。MELRAW君のお客さんとの距離感の程良い感じがすごくて、それからステージングみたいな部分も必要だと思うようになりました。

なるほど。

WONKからもそういう部分で影響を受けました。ステージングで音楽の印象ってめちゃくちゃ変わると思ったんですよね。変拍子とかって、俺らみたいなヒップホップ上がりからはわかんないじゃないですか。それをステージングによって、お客さんが上手く乗れるようにコントロールしてくれる。それはWONKのライブを観て学んだことですね。

音、割っていこうぜ!

また制作の話に戻りたいと思います。よく使う技法って何かありますか?

ブーンバップ的なリズムパターンだけどエレクトロっぽい固い質感のドラムが、最近SoundCloudでビートを聴いていると多いんですよね。多分J.ROBBが始めたことだと思うんですけど、キックがボコンとしていてスネアがすごいクリスピーみたいな。

NYドリルが好きになったって話にも繋がるんですけど、あの固いドラムをどうやって出せばいいのか全然わかんなくて考えたんです。それで見つけた技法が、「(メーターを)赤にぶっち切る」。「音、割っていこうぜ!」みたいな方法なんですよ。サチュレーターやダイナミックチューニングを駆使したりして、音をどんだけぶっち切らせるかみたいなことを最近はよくやっています。

あの強い圧のキックはそうやって作っているんですね。ドラムといえば、Ballheadさんは打ち方も面白いですよね。聴いていると「あれ、今一個ドラム多くなかった?」みたいな時があったり。

ドラムは長めの時間を手で打って、調子の良い部分を大体4小節くらい抜き出してループをかけ、あとは抜き差しで作っています。MIDIみたいに置いてやってみたこともあるんですけど、本当にいつも同じものを作っちゃうのに気付いてやめました。

ドラムもそうですが、Ballheadさんのビートは抜き差しも多いし展開も凝っていますよね。以前dhrmaさんに取材した時「展開を考えるのに一番時間がかかる」と話していたのですが、Ballheadさんもそこは時間がかかりますか?

展開というより、ライブで使ってフィードバックを取りながら作っていくので時間がどうしてもかかっちゃいますね。「ここちょっと間延びするから切り詰めよう」とか、「こんな感じだから低音を切っておくか」みたいな感じで、ライブで得た経験を持ち帰って修正していくんです。一曲にかける時間は長いと何か月にもなりますね。

なるほど。ビートメイクの際、最初に取り掛かるのはどの部分からになりますか?

最初にネタを聴いてインスピレーションを持ってから制作に取り掛かっています。そこからネタを大事にしたビートをまず組んでドラムをハメていくこともありますけど、作る順番はまちまちですね。ウワモノもドラムも何度もやり直すので、最終的にはどっちが先だったのかわかんなくなることも多いです。

最新作『StrictlyButterSoulBeatSmith』のこだわり

先ほどライブパフォーマンスでの経験がビートに反映されるという話がありましたが、最近出たアルバム『StrictlyButterSoulBeatSmith​』でそれが特に強く出た曲を挙げるとしたらどれですか?

カセットテープにはライブ用じゃない曲も入っているんですけど、基本的には全部ライブ用に作った曲なんですよね。ライブで破壊力を持たせたり、DJで飛び道具になるようなものってイメージでほぼ全曲を作りました。でも、強いて言えば一曲目の「B.O.K」ですね。あれはどこに行ってもどんな場所でも、大体フィットしやすい曲です。

『StrictlyButterSoulBeatSmith​』には何かコンセプトはあるのでしょうか?

それこそDJユースっていうところですね。最初はアナログレコードにしようとしていたんですけど、最終的にはODD TAPEさんとテープを作ることにしました。

今回のアルバムはシンセが目立つ曲も多いですよね。

ああいうアディショナルキーは全部弾いて入れています。ああいうシンセはTable Beatsの影響ですね。Phennel Kolianderはほぼほぼシンセでガンガン作るんですよ。dhrmaも最近は弾きでガンガン作っているし。Dyelo thinkもシンセの使い方がめっちゃ上手くて。ああいうのを直で食らっているので、そりゃシンセがメインの曲を作るでしょみたいな感じですね。

Dyelo thinkさんがこの間出したアルバム(『Sasakia charonda』)もすごかったですよね。それは日本のビートシーン独自のものが開いている瞬間のような気がします。

あるかもしれないですね。あれだけ一緒にやっていたらお互いに影響されるので。Table Beatsはそれぞれ活躍するフィールドも広がってきていて、話の規模も大きくなっているように感じます。日本のビートシーンの時代がまた一つ動いている実感はありますし、自覚もありますね。

収録曲の「OKIRELOADED」には、某ヒップホップ名曲のメロが入っていますよね。

あれは作っている時にKomplete Kontrolを買ったんですよね。「買ったからなんか弾きたいな~」と思って入れました。

伸び伸びと音楽を楽しんでいる感じがしますね(笑)。今回特に思い入れの強い曲はありますか?

「all_my_life_bxxxheees」ですね。あの曲がきっかけで色んな人に声をかけてもらいました。俺も好きなんですけど、「これなの?」って思ったっすね。でも、意外とああいう2000年前後みたいな感じのヒップホップをやっている人は少ないかもしれない。

タイトルに入っている「ビートスミス」とはどういう意味ですか?

「Smith」は職人的なニュアンスがある言葉で、「俺はビート職人っす。渋いっす」みたいな感じで使っています。自己紹介する時も「ビートメイカーです」と言わずに「ビートスミスです」って言うことにしています。

以前からSNSとかでちょくちょく使っていましたが、作品タイトルに入れるのは今回が初めてですよね。

今ビートメイカーが増えてきて、誰もが「ビートメイカーです」と言いたがるところを「俺はビートスミスだけどね」とイキってみました(笑)。このタイトルは元々〈DRS〉のアルバム用に考えたものだったんですよ。長ったらしい名前が好きだったのと、『StrictlyButterSoulBeatSmith​』は頭文字を取るとSとBがループされている感じも良いなと思って。でも俺が自分のことでいっぱいいっぱいになっちゃって、〈DRS〉のアルバムを作るのを面倒臭がってしまったんです。それで〈DRS〉用のタイトルを自分で使いました。

なるほど。今回のようなソロではなく、〈DRS〉のアルバムでは色んな人のビートが入りますよね。その中で自分はこういうビートを作ろうみたいに意識をすることはありますか?

ほかの人どうこうじゃなくて、誰よりも格好良いビートを作ろうと思ってやっています。「このアルバムで俺はかます!」みたいな感じですね。

ビートメイカーのためのメディアを作りたい

〈DRS〉内外で共作も結構やっているイメージがあるのですが、今後コラボしてみたいアーティストはいますか?

自分から「この人とコラボしたい」って願望はないですね。でも自分のできることを増やしたいので、技術が学べるようなコラボはしてみたいです。例えば、めちゃくちゃ弾ける人じゃなくて、いい具合の鍵盤ができる人。例えばKieferとか観ても、「そんなのわかんないっす」みたいになっちゃうので。そうじゃなくて遠すぎない、いいレベルの鍵盤ができる人と一緒に曲を作りたいですね。「これとこれを、この動かし方をすれば大体そうなるんだ」みたいな発見をしたいです。

あとはダブステップとかの全くジャンル違う人ですね。そういう人と一緒にスタジオに入って、後日そのスキルを別のものに置き換えるのをやりたいなって感じっす。

今後やってみたいことはありますか?

音楽自体の話じゃないんですけど、ビートメイカーのための動画メディアを作りたいと思っています。ビートメイカーって既存のメディアに出たくても、ある程度のキャリアがないと出られないと思うんですよ。この「極上ビートのレシピ」はすごく良くて毎回読んでいるんですけど、親近感が持てるメディアはまだまだ足りない。これだけビートを作っている人がいるのに、そこはアンバランスだと思っているんですよね。

一回Table Beatsで、福岡の9uirk君を紹介する企画をやったことがあったんです。そのときやったオンライン通話対談みたいなことを、高いクオリティでやれたらいいなと思いますね。今は有志で身銭を削ってやるしかないので、それに賛同してくれる仲間を募集中って感じです。

なるほど。最後に、SoundCloudのアカウント名に入っていて、2020年リリースの作品のタイトルにもなっている「STAYYOUNGMOVEMENT」について教えてください。

あれは長ったらしい名前にハマり始めた時に考えた言葉ですね。それまで俺はネットであまり発言していないキャラだったんですけど、頭悪そうなキャラを目指したくなって(笑)。それで誰でもわかりそうな単語を並べて、でも全然意味がわからない言葉を作って「この人頭悪い」って思われようとしたんですよね。

あとは人生のスローガンというか、「フレッシュでいたい」って気持ちです。作る楽曲もそうだし、立ち振る舞いも全て。つまりBボーイマインドですね。「STAYYOUNGMOVEMENT」を作っていた時は30歳を過ぎてからだったと思うんですけど、やっぱり先輩扱いされることが増えてきたんですよ。でも、「俺をそんな担がんでもいい」みたいな気持ちがあって(笑)。何年か先に生まれただけだと思うので、それに対する「全然自分は下っ端っすよ」みたいなノリもあります。「常に20代半ばくらいの気持ちで若くいよう」。そういうスローガン的な意味を、意味わかんない文字列で表したのが「STAYYOUNGMOVEMENT」です。

Ballheadさんのバイタリティはまさに「STAYYOUNGMOVEMENT」そのものですね。今回はありがとうございました!

こちらこそありがとうございました! 俺みたいな地方のやつがこういう場に出たことで、ほかの地方の連中が「俺も頑張ればワンチャン」って思ってほしいし、そういう風に思わせていきたいですね。

取材・文:アボかど

Ballhead プロフィール

日本人離れした推進力のあるグルーヴを武器にするStrictly butter soul beat smith。時代に左右される事の無い価値観を提示する厳格な一面を持ちつつ、大胆さと不自然なユーモアを併せ持つアンバランスさが特徴。
WONKやMELRAW擁する新進気鋭のレーベル“EPISTROPH”からのリリースや国内屈指のbeat musicコレクティブ“Table Beats”への参加、海外アーティストとの共作等、ボーダーレスな活動を続けている。

Bandcamp
https://ballhead.bandcamp.com/

Instagram
https://www.instagram.com/ballhead_sbsbs/