
BTSの所属先として知られるHYBEから、AI技術を活用した新人バーチャルアーティスト「Midnatt」がデビュー
世界的K-POPグループのBTSの所属先として知られる韓国の総合エンターテインメント企業HYBEが、今年5月に音楽とテクノロジーを融合した「Project L」の新たなバーチャルアーティスト「Midnatt」を発表。デビュー曲となる「Masquerade」の公式MVを公開しました。
「Masquerade」公式MVは、韓国語のほか、英語や日本語、中国語、スペイン語、ベトナム語の6言語で視聴可能ですが、多言語でのMidnattのデビューは、その背後にあるテクノロジーが大きな役割を担っています。またMidnattは、韓国の実在する有名アーティストであるイ・ヒョンの仮想分身でもあるという点が大きな注目を集めています。
このプロジェクトでは、HYBEが2022年10月に買収したAI音声スタートアップ企業のSupertoneのAI音声技術が活用されています。
この技術は、アーティストが外国語で歌唱した発音をAIが補正し、自然な発音で伝えられるようにすることで、より多様な言語圏で没入感のある音楽を提供可能とのこと。
また「Masquerade」では、ボイスデザイン技術を通じて音源の中に挿入された女性の音声も制作。 アーティストのオリジナルボイスに基づいて、プロジェクトのサウンドやビジュアルに最適化された女性ボイスがデザインされています。これによりアーティストは技術を補助的な手段として活用し、音楽的な表現を様々なカテゴリーに拡張して、ファンに提供したい体験を一層高度化できるようになりました。
さらに「Masquerade」のMVでは、リアルタイムコンテンツソリューション企業であるGiant Stepとの協業で、XR(拡張現実)システムが活用されています。このXRシステムは、空間、時間、季節、天気などの環境に関わらず、音楽のストーリーに必要な最適化された仮想空間を作ることができ、MVに登場する森のロケーションを除いた映像がこのシステムに基づいて制作。これにより、音楽が持つストーリーの無限の視覚的表現が可能となっています。また、MV制作過程で拡張現実システムが合成された仮想画面を制作現場でリアルタイムで確認できるフリービジュアル技術を導入し、コンテンツ制作における効率性が一層高められているとのことです。
最近では、HYBE傘下レーベルである「SOURCE MUSIC」より、日本のアイドルグループのHKT48やK-POPグループのIZ*ONEメンバーだったサクラも所属するK-POPガールズグループのLE SSERAFIMや、同じく傘下レーベルのHYBE LABELS JAPANより、&TEAMがデビューするなど新人グループも登場していますが、HYBEとしては、同社に所属する看板アーティストのBTSの活動休止により、さらなるグローバル展開や新人アーティストの育成が急務とされています。
そのような状況で人間の新人アーティストだけでなく、バーチャルアーティストの育成に注力している点は音楽ビジネスとしても注目が集まる展開です。
K-POPにとどまらず、BTSをグローバルスターにまで成長させたHYBEのノウハウが今後、AIテクノロジーを活用したバーチャルアーティスト育成において、どのような結果を生み出すことになるのか。特にMidnattは実在するアーティストをモデルとしているだけにアーティストにとっても、リアルの世界に限らない別の可能性を模索する意味でも注目すべき取り組みと言えそうです。
文:Jun Fukunaga
【参考サイト】
HYBE’s virtual artist Midnatt releases debut in six languages – Music Ally
https://musically.com/2023/05/15/hybes-virtual-artist-midnatt-releases-debut-in-six-languages/