
Googleアシスタントでサンプリングの「元ネタ」を特定可能に!? AI時代に「Sample Snitching」を考える
エレクトロニックミュージックの分野において、サンプリングは主要な音楽制作方法のひとつとして知られています。
サンプリング元へのリスペクトによって成り立つ文化である一方、著作権の問題とは切っても切り離せない制作方法でもあります。作り手同士の問題であればまだ話はシンプルなのですが、ファンの中にアーティストがサンプリングした「元ネタ」を特定することに情熱を傾ける人がいるのが、また事態を複雑にしています。
インターネットが普及した現代においては、特定された元ネタ情報が「Who Sampled」のようなサンプル紹介サイトやRedditやDiscordなどコミュニティ型のSNSなどでリリース直後に公開されるケースも少なくありません。
このような“サンプル特定職人”は以前から一定数いましたが、サンプリングプラットフォームのTracklibが公開した記事によれば、最近ではサンプルの特定にもAIが活用されているようです。
Tracklibによると、GoogleのAIアシスト機能「Googleアシスタント」を使うことでサンプリングの元ネタを特定できるとのこと。この方法はMobb Deep、Nujabes、Madlibなどの作品からサンプリングの元ネタを発見してきたDiscordのサンプル特定コミュニティ「Sample Hunting」によって発見されています。
Sample Huntingの共同設立者のlobeliaは、2016年にGoogleアシスタントとShazamを使ってサンプルの特定を開始。その後、Daft Punkのアルバム『Discovery』収録曲の「Face To Face」で使用されているサンプルを特定していたところ、Googleアシスタントを使ったサンプル特定方法に可能性を感じたといいます。
lobeliaは、この方法について「2021年末にGoogleアシスタントを使ってThe Doobie Brothersの「South City Midnight Lady」が「Face To Face」のギターサンプルとして使われているのを見つけましたが、その時にこの方法は広く知られるようになると思いました」とコメントしています。
また別のSample HuntingのメンバーのDJPastaは、Googleアシスタントを活用した別のサンプル特定方法を発見しています。
DJPastaによると、Googleアシスタントは1秒未満のサンプルや刻まれたり、タイムストレッチされたりしたサンプルかでも元ネタを検出できるとのこと。DJPastaは自身が発見したGoogleアシスタントを活用したサンプル特定方法について次のように述べています。
「Bluestacksというソフトを使って、PCからGoogleアシスタントに直接オーディオを流す方法を思いつきました。当時は、主に「Face To Face」でTodd Edwardsが使ったサンプルを特定しようとしていましたが、Googleアシスタントを使ってみるとほとんど見つかってしまったのでびっくりしました。それで次はCarrie Lucas lyricsの「Sometimes a Love Goes Wrong」のような短いサンプル(「Face To Face」で使用されている)でもこのやり方で検出できるか試してみることにしました」
ファンによるサンプル特定は時に“Sample Snitching”と呼ばれ、問題視されることがあります。この問題点は、ファンとしては無邪気に、「このアーティストとこのアーティストの間に文化的なつながりがあったんだ!」くらいの気持ちでした特定が、意図せずして権利侵害の「告げ口」になってしまうというところにあります。
AIによって、これまで以上にサンプリングの特定が容易になっていくことでこうしたケースがより増えていく可能性は十分に考えられます。
いずれにしても、著作権への意識がこれまで以上にサンプリングする側にも求められることになるでしょう。ロイヤリティフリーのサンプルやTracklibなどで適切に権利処理されたサンプルを使用するメリットは、AI時代を迎えてますます大きくなるのかもしれません。
文:Soundmain編集部
【参考サイト】
Artificial Digging: How Google’s AI Now Reveals What Producers Sampled
https://www.tracklib.com/blog/digging-samples-ai