2023.04.04

Spotify「Loud&Clear」2022年度版が更新。約6万人のアーティストが年間1万ドル以上の収益を獲得していることが明らかに

Spotifyが2021年に開設した「Loud & Clear」が更新されました。

Loud & Clearは、アーティストへの支払いにまつわる疑問に答えるウェブサイト。ストリーム数とアーティストへの支払い額の基本的な関係から、「昨年100万ストリームを超えた楽曲は何曲?」といった情報まで、長年音楽業界の議論の的となってきた同社およびストリーミング・サービスという業態の実態を、自ら透明化する試みとなっています。

Spotifyの録音音楽収入は全世界の20%以上を占める

最新のデータによると、2022年時点でSpotifyの音楽業界への支払額は400億ドル(レコーディングと出版の両方のロイヤリティが含む)に迫っており、これは同社が全世界の録音音楽収入の20%以上(2017年の15%未満から増加)を占めていることを意味するとのことです。

Spotifyを利用する900万人のアーティストのうち、キャリアの一部としてストリーミングを適切に活用しているのは推定20万人で、Spotifyは「これらの『プロあるいはプロ志望のアーティスト』は、少なくとも10曲をリリースしており、毎月の平均リスナー数は1万人以上で2022年中にストリーミング以外の商業活動も行っている」と報告。データによると、この20万人のうち4分の1強にあたる29%、約6万人のアーティストが、2022年に1万ドル以上のSpotify収益を上げているとのことです。

このような結果を踏まえ、Spotifyは過去20年間でストリーミングが大幅に音楽エコシステムを変革したと主張するほか、「参入障壁が低いことで世界中から情熱的な新人ミュージシャンやクリエイターが集まってきている」と分析。

今年2月にはThe WeekndがSpotify史上初の月間リスナー数1億人を達成したアーティストとなったことが大きな話題になりましたが、Spotifyは2022年のアメリカでの同サービスのストリーミングにおいて、トップ50のアーティストとされたのは全体のわずか12%であることから、音楽業界の収益が世界中に多数のファンを持つ超有名アーティストや音楽クリエイター以外にも及んでいるとしています。

セルフリリースのアーティストの割合

また、2022年にSpotifyから1万ドル以上の収入を得たアーティストの4分の1がセルフリリースのアーティストであり、35%が音楽市場における上位10ヶ国以外の国に居住していることも判明しています。

さらに年間10万ドル以上の収益を上げるアーティストの数は、2017年から2022年にかけて135%増加しており、1万ドル、10万ドル、100万ドルというマイルストーンとなる年間収益レベルに到達したアーティストは、過去5年間で2倍以上に増加しているとのことです。

カタログの価値の上昇

Spotifyは今年発表した2022年第4四半期(Q4)決算報告書において、同サービスの有料会員数が2022年12月31日時点で2億500万人に達したことを発表していますが、同社の報告によれば、配信されている楽曲のストリーミング数にも上昇が見られます。これまでに91万3000曲が100万回ストリーミングを達成しているほか、2022年だけでも28万1000曲が100万回ストリーミングを達成しており、さらに昨年末時点ではおよそ350曲が10億回ストリーミングの大台を突破したとのことです。

さらに配信される音楽カタログも「かつてないほど価値が高まった」とし、「依然として毎年健全な収益を上げることができる」と主張。カタログミュージシャンを“ヘリテージ・アーティスト”としてスポットライトを当て、月間平均リスナー数が50万人以上、ストリーミング数の80%が5年以上前の楽曲によるアーティストと定義しています。

この層は3400人のアーティストで構成され、2022年にSpotifyだけで43万3000ドルの収益を上げているとのこと。Spotifyは、これらのヘリテージ・アーティストが、ストリーミングサービス全体で100万ドルをはるかに超える収益を上げていると推定しています。

この結果を受けて、Spotifyは、カタログを「音楽の未来の価値に対する楽観の兆し」と表現し、Spotifyのロイヤリティデータが、ストリーミングと音楽業界全体の未来が明るいことを示唆。同社は「Loud & Clearで示される成長率が継続することに期待している」と述べています。

おわりに

ストリーミングからアーティストが得る収益に関してはこれまでも議論の的になっていましたが、この結果を見る限り、音楽リスニング体験がストリーミングへと移行する中で、これまでのように大規模なファンベースを持つ有名アーティストに限らず、着実に収益を上げているアーティストも増えているようです。

とはいえ、これでストリーミング収益による問題が全て解決するというわけではないため、引き続きこの動向を注視するとともに、音楽クリエイターは自分の音楽を広げて収益を増やしていくための戦略を時代に合わせてアップデートし続ける必要もあるのではないでしょうか?

そのためのヒントとなる情報も盛り込まれたLoud & Clearを改めてチェックし直してみることをおすすめします。

Loud&Clear
https://loudandclear.byspotify.com/

文:Jun Fukunaga