2023.03.02

デヴィッド・ゲッタ、AIと音楽の関係について持論を語る。AI生成によるエミネム音声を使った楽曲で注目を集めたことを受けて

有名EDMプロデューサー/DJのデヴィッド・ゲッタは、最近AIが生成したラッパーのエミネムの声を使用した楽曲「Emin-AI-em」を紹介する動画をSNSで公開したことで注目を集めました。

その動画でデヴィッド・ゲッタは「Emin-AI-em」について、エミネムの音声はAIを使用して冗談で作ったものだと説明しています。また同曲はすでにデヴィッド・ゲッタが出演したあるイベントでプレイされていますが、「今後商業リリースされることはない」と述べています。

「Emin-AI-em」では、“This is the future rave sound, I’m getting awesome and underground”という歌詞がAIエミネムの音声で読み上げられています。デヴィッド・ゲッタによるとこの音声はAIで音声を生成するウェブサイトを使って作られているとのことです。また歌詞自体も特定のアーティストとキーワードを指定すると、それに応じてAIが歌詞を生成するウェブサイトを使って作られているといいます。

しかし、この動画は公開後、賛否両論となりました。それを受けて、デヴィッド・ゲッタはBBCのインタビューに対し、「(AIの音楽利用に関する)議論を呼び起こし、その意識を高めることが目的だった」と述べています。

またゲッタ自身は「音楽の未来はAIにあると確信している。確実にね。間違いないはずだ」と好意的に捉えていることを明かす一方で、AIについては「人間にとって変わるものではなく、あくまで道具として利用するものである」との認識を示しています。さらに「センスに取って代わるものはない。アーティストの定義とは、ある種のテイストを持ち、かつある種の表現したい感情を持ちながら、そのためにあらゆる現代的な楽器を使うということだ」と述べています。

そのほかにもこれまでの音楽の歴史を振り返り、次のように語っています。

おそらく、エレキギターがなければロックは存在しなかっただろう。同じようにTB-303やTR-909がなければ、アシッドハウスは存在しないし、サンプラーがなければヒップホップも存在しなかった。AIが新しい音楽スタイルを定義するかもしれない。すべての新しい音楽スタイルは、新しいテクノロジーから生まれると思う。

音楽制作において、AIを使用することについてはさまざまな意見があり、有名アーティストの中にはニック・ケイヴのように否定的な見解を示す人もいます。

一方でデヴィッド・ゲッタのようにAIをツールとしてとらえ、音楽制作に活用することで、新しい音楽スタイルを生み出す鍵と捉えるアーティストがいることも留意しておくべきではないでしょうか?

文:Jun Fukunaga

【参考サイト】

David Guetta says the future of music is in AI – BBC News
https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-64624525