2023.03.16

音楽生成AIは音楽制作の未来なのか? 米企業「Audialab」の共同創業者が見解を述べる

昨年はイラストなど、ビジュアルの分野で画像生成AIの活用に注目が集まりました。今年は音楽の分野でGoogleによる文章の記述に基づいてAIが音楽を生成する「MusicLM」の発表が話題になるなど、今後は音楽生成AIにも注目が集まっていきそうです。

そんな中、音楽系Webメディア・Music Radarでは、AIを活用して音楽制作を行うアメリカの企業「Audialab」の共同創業者であるBerkeley Malagon氏へのインタビューを通じて、今後の音楽制作におけるAI活用の可能性を探る記事を公開しています。

Audialabによる「AIがロイヤリティフリーのドラムサンプルを無限に生成する」プラグイン、「Emergent Drums」のデモ

記事ではMusicLMについて、楽器の種類や演奏者の経験値、特定の場所の雰囲気など高度な指示を理解でき、これまでのAIツールによって生成されたものよりも際立って優れた音楽を生成していると評価しています。しかし、このような音楽生成AIは音楽制作のツールとして使えるものではないため、音楽クリエイターにとっては便利なものとは言い難い点も指摘しています。

また、このことを例に「これまでの音楽の分野におけるAIの進歩のほとんどはプロデューサーが自分の音楽を作るのを助けるというよりも、完成された音楽を生み出すことに向けられている」と音楽分野におけるAIの進歩の実情について、意見が述べられています。

一方、インタビューでBerkeley Malagon氏は、「私たちはボタンを押すと完全に完成した曲が生成されるようなものを研究をしているわけではありません。それよりもサウンドデザイナーに力を与えることに興味があります」と述べています。

また、「(自分たちが知るサウンドデザイナーの中には)AI搭載ツールによって単純作業的な部分を効率化できることで、より発展したアイデアを形作ることに時間をかけられる​​ことを好意的に捉えている人がいる」とも述べています。

その上でBerkeley Malagon氏は、AI搭載ツールの価値について次のように語っています。

すべてのサウンドデザイナーに受け入れられるとは思っていませんし、このような技術が将来的に生活にどのような影響を与えるかについて、懸念を持つ人がいるかもしれないことも認識しています。しかし、AI搭載ツールの価値については、制作のプロセスを冗長にするのではなく、補強する、あるいは経験の浅い人に代替手段を提供することにあるのは明らかです。

今後もAIは、ボタンひとつでよりクオリティが高い曲を生成できるような方向に進歩していくことは間違いないと思います。しかしその一方で、音楽クリエイターをより高度にアシストする存在として進歩していくことも、音楽の分野におけるAI活用の未来のひとつとして考えられるでしょう。

過去にSoundmain Blogで紹介した事例を踏まえると、将来的にはたとえば「AI搭載シンセが文章の記述に基づいてカスタマイズされたパッチを生成​​する」あるいは「AI搭載DAWが学習したユーザーの作曲スタイルから次のトラックの方向性について有益な提案をしてくれる」といったものが普及することになるかもしれません。

文:Jun Fukunaga

【参考サイト】

Is AI the future of beatmaking? We spoke to the developers working on “DALL-E for sound design” to find out | MusicRadar
https://www.musicradar.com/news/ai-future-beatmaking

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