2023.01.02

“21世紀の楽器”としてのパッドコントローラー――音楽機材マーケットプレイスのディレクターが動向を語る

DTMで音楽制作を行う場合、MIDIキーボード1台さえあれば、メロディやコード、あるいはドラムの打ち込みが可能です。しかし、最近では、MIDIキーボードの代わりにパッドコントローラーを使い、メロディーやベースラインを打ち込んでいくという制作手法も徐々に広がり出しています。

そんな中、音楽機材マーケットプレイスReverbのプロダクトマーケティング、コンテンツ&キュレーション担当ディレクターのJustin DeLay氏はMusicTechのインタビューで、AKAIのサンプラー「MPC」シリーズのほか、Abletonの「Push 2」、Novationの「Launchpad」など、ループやワンショットサンプルのクリップをグリッドパッド上に配置し、それに対応するパッドを叩いて打ち込めるパッドコントローラーが今後、21世紀の楽器として認知されていくとの見解を述べています。

Justin DeLay氏はインタビューで、「私の直感では、“グリッド”は21世紀の楽器とみなされるでしょう。Akai MPCシリーズ(とその新しい楽器「Force」)の遺産を基に、Novation Launchpad、Ableton Push 2など、同様のパッドコントローラー製品を通じて、グリッドコントロールがもたらすノンリニアなアプローチが活用されていくようなります」と語っています。

この見解はあくまでJustin DeLay氏の個人的な見解ではあるものの、2020年にはAppleも同社が提供するDAW「Logic Pro X」に、上記のパッドコントローラーとも連動させやすい「Live Loops」という機能を搭載しています。

このような現状を踏まえてJustin DeLay氏は、「今後、主要なDAWと音楽機材にまたがって、グリッドを使ったモダンワークフローのアプローチがさらに強化されていくだろうと思います」とコメント。その上でJustin DeLay氏は次のように最近の音楽機材のトレンドについて、自身の考えを語っています。

「“ハイブリッド”な楽器と連動したワークフローが明らかにトレンドになっています。Ableton、Native Instruments、AKAIなどの楽器メーカーは、私たちが愛するハンズオン体験とPCやスマートフォンの無限の可能性を使ってユーザーの創造性を高める製品を作っています。またグリッドにとどまらず、ギタリストが自宅でレコーディングをしたり、DJがドラムマシンを手にして、ビートを刻んでいます。さらに新しい世代はギターを自宅で録音する方法を再発見し、デジタルファーストの美学に加えようとしています。このような傾向から現在は、カテゴリーと音楽的アイデンティティの境界はますます曖昧になっていると言えるでしょう」

なお、Justin DeLayが語ったパッドコントローラーを使った楽器的なアプローチに関して、日本でもすでにそのアプローチを実践しているアーティストがいます。例えば、モノンクルのベーシストである角田隆太氏は、ライブステージでの鍵盤楽器としてAbleton Push 2を使用。パッドの配列をギターやベースとよく似た“ホリゾンタルに4度、バーティカルに半音”という設定にして使用しているとAbletonのインタビューで述べています。

またガジェット系YouTuberの瀬戸弘司氏も、早くからAbleton Push 2を楽器的なアプローチとして使用している1人です。瀬戸氏のYouTubeチャンネルではAbleton Push 2でのパッド演奏方法をわかりやすく解説する動画も公開されているので、このスキルを修得したい人は一度チェックしてみてはいかがでしょうか?

文:Jun Fukunaga

【参考サイト】

Reverb director predicts grid tech to be “instrument of 21st century”
https://musictech.com/news/industry/reverb-justin-delay-director-grid-instrument-21st-century/

角田隆太:Push 2に見た鍵盤楽器としての可能性 | Ableton
https://www.ableton.com/ja/blog/ryuta-tsunoda/