2022.12.09

トラックメイカーのための音楽理論 | 第7回 メロディの理論② コードとの位置関係

前回でコードをつなげて「コード進行」を作るというところまで話が進みました。そうして作ったコード進行にメロディを乗せて曲を完成させるというのが、非常にスタンダードな作曲法のひとつです。そこで今回は、コードとメロディをいかに噛み合わせるかについて見ていきます。

インターバル

さてここからはコードに対するメロディの位置取りという、音と音との距離関係を論じることになるので、音の距離に関する表現を先に少し学んでおく必要があります。

音楽理論では音どうしの距離をドレミの数で計測する方法があって、例えばドとミだったら「ド・レ・ミ」と3つぶんの音にまたがる距離となるので、これを「3度」と呼ぶ決まりになっています。

あるいはレとラだったら「レ・ミ・ファ・ソ・ラ」と5音またがるので「5度」となる。

非常にシンプルな尺度です。ただ実はこの数え方はちょっと変わっていて、この方式でいくと同じ音である「ドとド」の距離となった場合も、「ド」の1音をまたがるので「1度」となります。

直感的には“ゼロ距離”ですが、音楽理論上はこれが「1度」で、「0度」は存在しません。なんだかモヤモヤしますが、これが何百年も続く慣習なので仕方ありません。このように「度」という単位で表現された音の距離のことを、【インターバル】といいます。「間隔」という意味を持つ英単語ですね。

なお英語の場合は2度なら「2nd」、3度なら「3rd」というように序数で表す決まりになっています。セカンド、サードというと野球を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、音楽理論で序数が出てきたらまず音程の話をしているのだと思ってください。

コードの構成音と度数

コードを構成する各音についても、このインターバルを使って指し示すことができます。例えばドミソシのコードの場合、ミの音は底であるドからみて「ド・レ・ミ」と3度ぶん離れた距離に位置しているので、この音は「3rd」の音と称されることになります。同様にしてソは「5th」、シは「7th」となります。

また距離を測る基準となる底の音、ド自身については「1st」とは呼ばず、英語で“根っこ”を意味する【ルート】という特別な名称で呼ばれます。

ちなみに第5回で「セブンスコード」という用語について紹介した際、「(そのコードの中の)一番低い音から数えて7番目の音が乗るから」と説明したのですが、実は厳密には「ルートから見て7thとなる音が乗るから」というのが正式な説明になります。

コードはひとつ飛ばしで重ねるのが基本ですから、コードの構成音は下から順にルート(1度)・3rd・5th・7thといった風に軒並み奇数のインターバルになりますね。コードの基本メンバーは奇数度。これが今回のカギになります。

用語の準備が整ったところで、本題に入っていきましょう!

奇数か偶数か

さてコードの上にメロディを乗せるという話ですが、その時にはメロディとコード構成音との親和性がかなり重要なファクターになってきます。

例えばコードがドミソシの時には、メロディもドミソシのうちいずれかを鳴らせばコードとよく馴染むし、そうでないレファラの音を選べばコードとのぶつかりによって音響はより複雑なものになります。

そしてどのコードであろうとコードの基本メンバーはみな奇数度という前提に立つと、「メロディが奇数度を鳴らせば馴染む、偶数度を鳴らせば濁る」というふうに言い換えられます。

ただし7度の音はそれ自体コードに若干の濁りをもたらすため、奇数度の中では少し特別な存在となりますが。それからここで言う“濁る”というのは決して悪い現象ではなく、音楽に良い刺激をもたらす必要不可欠なものです。実際の曲でこの“馴染み”と“濁り”を聴いてみることにします。

(以下、Soundmain Studioに搭載されたVoiSona「知声」による歌声合成機能でメロディを歌わせています)

奇数度のみ使用

こちらは「こいぬのマーチ」とか「みつばちマーチ」と呼ばれる曲の冒頭ですが、和音ドミソに対して「ミドミドミソソ」というメロディを選んでいて、完全に奇数度のみのフレーズになっています。これがコードとの調和率100%の状態、一切の濁り無しのすっきりしたサウンドをもつメロディの形です。

バランスよく使用

こちらは童謡「こいのぼり」の冒頭で、コードは同じくドミソの和音です。分析すると、奇数度と偶数度がちょうど交互に登場していることが分かります。

まあ隣の音へ進めば偶奇が入れ替わるのだから、交互というのは決して珍しくなく、むしろ自然なことです。

メロディが偶数度の音に進むことにより音楽には刺激が生まれ、それが今度は奇数度に進んで解消されることで音楽に平安がもたらされる。そのような安定-不安定の波の繰り返しでメロディのストーリーが構築されていきます。

隣接した音へ進むメロディは歌いやすく聴きやすいので、メロディ作りの基本でもあります。童謡に限らず現代のポップスにおいても主軸となるメロディの動きですね。

偶数度を多めに使用

偶数度が濁りを生むとはいっても、上例のように「ミレド」と通過していく中にちょこんと偶数度が鳴っている程度では大した刺激ではありません。もっと大胆に偶数度を使用した例を見てみます。

TWICEの「LIKEY」は、ひたすらラの音でlikeyという単語をリピートするユニークなメロディを持った曲です。

コードに着目すると最初は「ラドミ」の和音を選んでいて、これはラの音がしっかり構成音に入っていますから、調和して安定した状態からスタートしています。しかしそこからコードは「ドミソ」そして「ミソシ」へと移っていき、それによってラの立ち位置は偶数度へと変わり、一転して刺激的なメロディとなります。

メロディ自体は一切動いていないのに、背景のコードが変わることで音の立場が変わっていくという、実に巧妙なテクニックが使われているのです。

もし「ドミソ」「ミソシ」のようなコードに合わせるなら、例えば「ラ→ソ」とメロディを動かせば音楽を安定させることができますが、ここではあえてそうせずラを維持する選択をしています。古典的なメロディでは見られないスタイルですが、刺激を求める現代ではこれも十分ありうる選択です。

もしかしたらメロディはコードの音を主に使っていないとダメというイメージを持っていたかもしれませんが、実際にはそうではなく、このように多様な選択肢が存在しています。奇数/偶数の比率によって刺激量をコントロールするようなイメージを持つとよいでしょう。

メロディにコードをつける

もし逆の順序で、メロディを先に作ってそこにコードをつけるという場合にも、この奇数/偶数という分類論理はひとつの指標になります。

例えばこんなメロディができたとします。これに対するコードの付け方は本当にたくさん考えられますが、まずは複雑に動くメロディのうち枝葉を無視して、重要になる音を見定めるとよいです。重要な音というのは強い音、高い音、多くの割合を占める音などで、今回だと大枠では「ミ→レ→ド→シ」という流れがメロディの“幹”のように横たわっています。

これら幹の音との相性を最優先に考えながらコードを選んでいきます。例えばミの音のゾーンにどのコードを持ってくるか、改めて基本の「ダイアトニックコード」を眺めてみましょう。

今回もまた番号で説明していくと、ミを構成音に含むのは❶❸❻の和音と、セブンスコードまで視野に入れるとも加わります。

ですから❶❸❻のいずれかをあてがえば音響的にとても安定した状態になり、は多少の濁りを生むため若干不安定、そして❷❺❼にとってミは異物なので刺激の強い状態が生じる……というふうに方向性が分かれます。

同じ要領で、以降のメロディについてもコードをあてた時の調和の度合いを測ることができます。

また、このコード/メロディ関係論とは別に、前回やったコード単体の「機能」の話もありましたね。そこも含めて総合的に、パズルのようにコード進行を考えていくことになります。実際の例をいくつか聴いてみましょう。

奇数度のみ使用

まず初めに、❶-❺-❻-❸とコードをあてた場合。そうすると大枠の「ミ→レ→ド→シ」という4つの音がいずれも背景のコードの構成音に含まれた、完全な調和状態となります。

コードの「機能」についても軽くふれておくと、安定感のあるから始まるので、いかにも明るく元気な感じに仕上がっています。かなり分かりやすさ・親しみやすさ重視のアレンジと言えます。

7thを多く使用

次に、❹-❸-❷-❻とコードをあてた場合。そうすると❹-❸-❷のところはいずれも、メロディが7thの位置となり、先ほどと比べると響きが複雑です。

そして最後ののところも偶数度ですので、あえて落ち着かない感じでフィニッシュするという、ちょっと一味ひねったスタイルになりました。

偶数度を多く使用

最後は❷-❹-❻-❶とあてた場合。前半の❷-❹のところが続けて偶数度となるので、サウンドとしてはかなり複雑で刺激強めのチョイスとなります。

攻め気味の選択ではありますが、「LIKEY」の例でも見たように、こうした偶数度中心の位置取りも現代的なスタイルとして全然ありえます。ただあまりにも偶数度ばかりだとコードとメロディが分離しすぎて変に聴こえてしまうリスクもあるので、その辺りのバランスに注意は必要ですね。今回はのコードのところで一旦奇数度になることで場を落ちつけています。

このように、同じメロディでもコード次第でかなりその装いを“着せ替え”させることができます。そしてその鍵を握るのが、インターバルの奇数/偶数という観点なのです。

まとめ

コードにメロディを、そしてメロディにコードをつける際の考え方を解説しました。やり方に決まりがあるわけではなく、馴染みをとるか濁りをとるかの選択の連続で音楽が形作られていきます。

音楽理論をより深く学んでいくと、「このコードにこの音を合わせるとこうなる」という組み合わせ論はかなり詳細に掘り下げていくことになるのですが、奇数/偶数という指標があるだけでもかなり役に立つはずです。

★本記事中の音源にはSoundmain Storeで販売中の素材が使用されています。使用した素材を収録したパックはこちら!

著者プロフィール

吉松悠太(Yuta Yoshimatsu)
サウンド・GUIデザイナー/プログラマー、ピクセルアーティスト、音楽理論家。慶應義塾大学SFC卒業。在学中に音楽理論の情報サイト「SONIQA」を開設。2018年に「SoundQuest」としてリニューアルし、ポピュラー音楽のための新しい理論体系「自由派音楽理論」を提唱する。またPlugmon名義でソフトウェアシンセのカスタムGUIやウェイブテーブル、サウンドライブラリをリリースしている。2021年にはu-he Hive 2の公式代替スキンを担当。Soundmain Blogでは連載「UI/UXから学ぶDAW論」も執筆。

Twitter
SoundQuest: https://twitter.com/soundquest_jp/
Plugmon: https://twitter.com/plugmon_jp/

Website
SoundQuest: https://soundquest.jp/
Plugmon: https://plugmon.jp/

連載「UI/UXから学ぶDAW論」バックナンバー
https://blogs.soundmain.net/tag/ui-ux-daw/