
Abletonがオフィスを開放して「テックラウンジ」を開催! アーティストによる講義やハードウェアとの連携方法を学べるワークショップをレポート
音楽制作ソフトウェア・ハードウェアメーカーのAbletonが、9月30日(金)より期間限定で東京・中目黒のAbleton Japanオフィスにて、エンドユーザーにオフィスを開放する「Ableton テックラウンジ」を開催中です。
Abletonは近年、アーティスト、ミュージシャン、技術者、教育者など、幅広い人たちを音楽全般の分野から招いて開催する音楽関係者のためのサミット「Loop」や、オンラインを組み合わせた「Loop Create」といったイベントを開催しています。また、ウェブブラウザで動くシンセを触りながら音楽やシンセについての基礎知識を学べる無料学習サイト「Learning Music」や「Learning Synth」を公開するほか、ここ日本でもMUTEK.JPとのコラボレーションによる音楽制作ワークショップ、渋谷のイベントスペース・GAKUと連携した10代向けの音楽制作ワークショップを行うなど、音楽教育にも注力しています。
現在開催中のAbleton テックラウンジは、日本の音楽クリエイター、またはこれから音楽を作り始めたいすべての人が気軽に訪れ、意見交換を図れるスペースにとってリラックスできるようなスペースであることがコンセプト。期間中はAbletonの製品スペシャリストに直接Ableton製品に関する質問を行える「テックコンサルタントルーム」(予約制)や、様々なワークショップが行われます。
これまでのAbleton テックラウンジでは、グラミー賞最優秀リミックス部門にノミネートされたstarRoさん、Nina Kravizのレーベル「трип」をはじめ、名だたる海外レーベルからリリースを重ねるDJ SODEYAMAさん、ビートメーカーであり作曲家のYuria Sannodoさんといった有名アーティストが登壇するワークショップが行われました。
また直近では今年10月に発売され、音楽クリエイターの間でも大きな話題になったAbleton初のiOSアプリ「Note」や、Liveユーザーの中にも利用者が多いMax for Liveの使い方を解説するワークショップなども行われています。
Soundmainでは昨年、先述のGAKUとAbletonによる10代向けの音楽制作ワークショップ「Music Making Workshop」を取材しましたが、今回は10月15日のワークショップ「Ableton x Novation コラボレーションプロダクションワークショップ Pt2」のうち「Ableton Live x Novation Launchkey」に参加しました。
🔵 Launchkey × Live ビギナー講座 by Marty Hicks 🔵 @AbletonJP
— NovationJP (@NovationJp) October 6, 2022
サウンドデザイナーのMarty Hicksさん @martyhicksmusic を迎えAbleton LiveとLaunchkeyを使用したビギナー向け講座を開催🙌 ビートメイキングを行いながら作曲テクニックやTipsをご紹介👍
↓ 予約はこちらhttps://t.co/04mc7UrPPs pic.twitter.com/Mvu3JLlCM3
ワークショップでAbletonとコラボレーションしたNovationは、1992年にイギリスで創業された、シンセサイザー、MIDIコントローラ/キーボード、ソフトウェアを開発している音楽機材メーカー。1993年にリリースされた「Bass Station」をはじめ、その後継モデルであり、2019年のアップデートでAphex Twinにインスパイアされた「AFX Mode」が追加されたことも大きな話題になった「Bass Station II」やNovaシリーズといった数々のシンセサイザーの名器を生み出し、多くのユーザーやアーティストから支持を得ています。
そんな同社は、2009年に8×8グリッドのRGBパッドを搭載し、Ableton Liveのクリップの再生やドラムラックの演奏、メロディーの作成といった操作も行えるMIDIグリッドコントローラー「Launchpad」を発表するなど、早くからAbleton Liveとの統合性を高めた機材の開発に取り組んできました。
「Ableton Live x Novation Launchkey」では、ピアニスト・作曲家・サウンドデザイナーとして、日本を拠点に活動するマーティ・ヒックスさんを講師に迎え、Ableton LiveとNovationの「Launchkey」を使用したビートメイキングや作曲テクニックが紹介されました。

Launchkeyは、様々なDAWのワークフローと統合するMIDIキーボードコントローラーで、特にAbleton Liveの操作を柔軟に行うためのワークフローに最適な設計が行われていることが特徴。
また同機では、クリップ・シーンの再生をはじめ、ミキサーコントロール、キャプチャーMIDI、トラックアーム、クオンタイズ、クリックおよびループコントロールなどAbleton Liveの様々な機能に特別な接続設定を行うことなくアクセスが可能です。
ワークショップではまず、Launchkeyにバンドルソフトウェアとして付属するAbleton Liveの機能限定版「Ableton Live Lite」を使ったビートメイキングの方法をマーティさんが解説。
そのほか、Launchkeyに搭載されている8×2グリッドのRGBパッドを使用したフィンガードラムによるビートの打ち込み方法や、Live Liteの内蔵ピアノ音源を内蔵エフェクトで加工しながらの音作り、鍵盤でリアルタイム演奏したピアノやベース、リード音源をキャプチャーMIDIを使ってクリップ化していく方法、Ableton Liveの上位エディション「Live Suite」を使って楽曲をより洗練させていく方法なども解説されました。

また当日はAbleton LiveとPushが展示されている常設のワークステーションバーにLaunchkeyやLaunchPadも展示され、参加者は自由にそれらの機材を触りながら機能を試すこともできました。

このようなAbletonとの取り組みについて、Novation Japanの小山田耕平さんは次のように語ってくれました。
NovationのLaunchpadはAbleton Liveに特化したMIDIコントローラーとして生まれた経緯を持つなど、NovationとAbletonさんは本国でも非常に距離が近い関係にあります。
LaunchpadやLaunchkeyはLogicやCubaseといった他のDAWでも併用できますが、Ableton Liveは特に親和性が高いデバイスであるため、今回のワークショップのような教育的コンテンツなど、様々な面で協業が可能だと考えています。
海外ではYouTubeなどに多くの教育的コンテンツがアップロードされており、使い方を学ぶ機会がたくさんあります。しかし、日本向けのそういったコンテンツは海外と比べてまだ少なく、Ableton Liveと連携させる方法がわからないままなんとなく使っている人も少なくないと思います。そういった使用方法に関する疑問を持っている方に対して、より製品を知ってもらう場を設けることでそこで学んだ知識を音楽制作に役立てていただければということで、今回Abletonさんと共同でこのような取り組みを行わせていただきました。
NovationではLaunchpadやLaunchkeyのほかにも、グルーヴボックスの「Circuit」シリーズやシンセなど、色々な機材をラインナップしています。今後もこういった場を通じて、実際に製品を触ってもらったり、講師を迎えてレクチャーを行ったりすることで日本のユーザーさんの声を吸い上げて、今後の製品開発に活かしていきたいと考えています。
音楽制作の分野において、アジアにはまだまだ発展の余地があると考えています。そのことを踏まえて、まずは他のアジア諸国に比べて音楽シーンが成熟している日本からローカルの音楽カルチャーに根ざした活動にNovationとして取り組んでいきたいと思っています。
近年のDAWには、ハードウェア機材のように直感的に扱えるインターフェースや、音の選択にランダム性を導入する機能が搭載されており、より楽器的なフィーリングで音楽制作を行えるようになっています。それだけにそういったDAWのポテンシャルを損なうことなく操作するための統合性の高いキーボードやコントローラーの需要も、これまで以上に高まっているように思います。
またテクノロジーの進化とともにDAW自体も多機能化し、できることが増えたことで音楽制作の可能性が広がった一方で、少し扱い方が難しいと感じる初心者も増えたようにも思います。そういった人にとって、DAWの扱い方が効率的に習熟できる音楽機材メーカー主催のワークショップは、非常に魅力的なイベントではないでしょうか?
もし最近、DAWを購入したばかりで扱いに困っているという人は今後、こういったワークショップに積極的に参加して、操作方法を学んだり、自分がDAWの扱いに関してつまずいているところを相談してみることをおすすめします。
なお、Ableton テックラウンジは11月も開催が予定されており、引き続きテックコンサルタントルームやワークショップが開催される予定です。興味を持った人はAbletonの公式サイトで今後の開催日程とワークショップの内容をチェックして、参加してみてはいかがでしょうか?
Ableton テックラウンジについて、詳細はこちらから:
https://www.ableton.com/ja/ableton-techlounge/
取材・文:Jun Fukunaga