
小室哲哉NFTの二次創作に見る、NFT作品から生まれるアーティストとファンの新たな関係性
音楽プロデューサーの小室哲哉氏が昨年、初めてNFTマーケットAdam byGMOに出品したNFT作品「Internet for Everyone」を通じて、アーティストとファンの間で興味深い交流が生まれています。
「Internet for Everyone」は、元楽曲をパートごとに6トラックに分解したステムデータをNFT化したもの。保有者限定コンテンツとして新たに弾いたシンセサイザー音源を提供することで、1つの曲が6つの新曲に生まれ変わるという実験的な試みが行われた作品でした。
また同作には保有者限定コンテンツとして、「Internet for Everyone」の各ステムに合わせた「小室哲哉が新たに弾いた音源」も特典として付属していますが、興味深いのはその保有者限定コンテンツからファンの二次創作作品が生まれているという点です。
「Internet for Everyone」の保有者限定コンテンツを二次創作するプロジェクトは、「Internet for Everyone」購入者で、ドラムパートのNFTを所有者するAmena氏によって、小室氏のファンクラブ「Fanicon : Tetsuya Komuro Studio」の会員限定イベント「TK Friday」内で立ち上げられました。
その公開打ち合わせでは、東京のスタジオにいる小室氏とAmena氏を電話で繋いで行われ、新たなシンセサイザーパート「Add Track」を両者がコラボ制作。それを元に「チームあめなー」と称したファンメンバー12名にハリウッドで活躍するミキシングエンジニアMike Butler氏を迎え、新しいボーカルソングに生まれ変わらせた音楽映像作品第一弾が今年4月にYouTubeなどで公開されたことを皮切りにこれまでに全世界で制作された様々なジャンルの二次創作楽曲が数曲公開されています。
小室氏の「Internet for Everyone」は、先述のとおり、実験的な要素を持ったNFT作品でしたが、その“実験”は、1つの曲が元々の作曲者である小室氏の手を離れ、ファンの手によって別の楽曲に生まれ変わるという結果につながりました。
2021年にNFTブームが起きた当初は、音楽シーンでのNFTの活用の可能性について、データの改ざんが難しいことや二次流通時も製作者に取引額の一部がロイヤリティとして支払われることなどが優位性として、よく挙げられていました。
しかし、最近ではThe Chainsmokersが自分の音楽の小口所有権をNFT化してファンに提供し、ストリーミングのロイヤリティの一部を分配するほか、若手SSW・Arden JonesがストリーミングサービスのPre-saveの特典としてNFTを配布し、プロモーションに活用するなど、音楽シーンのNFT活用の幅は以前よりも拡大。NFTを、販売するアーティストに利益をもたらすものやファンのコレクション欲を満たすものとして捉えるだけでなく、アーティストとファンの“新たな関係性を築くもの”として利用するケースも見られるようになってきました。
その点では、実際に購入したファンによって二次創作楽曲が制作され、それを公認している小室哲哉氏も、NFTを通じてアーティストとファンの新たな関係性を構築していると言えるでしょう。
今後NFT作品を販売したいアーティストは、今回例に挙げたアーティストたちのように、自分のNFT作品がいかにファンとの関係性を深めるものになるかを考えることで、ファンにとって所有する価値があるNFT作品を提供できるようになるのではないでしょうか?
文:Jun Fukunaga
【参考サイト】
小室 哲哉氏による楽曲NFTをNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」において販売開始!/GMOアダム | GMOインターネット株式会社
https://www.gmo.jp/news/article/7528/
世界初公開!小室哲哉氏の最新アルバム『JAZZY TOKEN』未収録デモ18曲のNFTを、NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」で販売開始 | GMOインターネット株式会社
https://www.gmo.jp/news/article/7895/