
どれだけ知ってる? エレクトロニックミュージックを変えたサンプリングCD 10選
DAWやシンセ、ドラムマシンといった機材とともに現代の音楽クリエイターにとって必要不可欠なものとなりつつある、著作権フリーのサンプルパック。
昨年は、ヒット曲となったTrippie Redd「Miss the Rage」でサンプルパックに収録されているシンセのループが使われていたことが話題になりましたが、2000年代にもRihannaの代表曲「Umbrella」でGarageBandのドラムループが使われるなど、ヒット曲とフリー素材のサンプルの結びつきは長い歴史を持っています。
現在、音楽クリエイターはサブスクリプション型や買い切り型の著作権フリーのサンプルパックをダウンロードする形で利用できますが、実は一昔前までは多くの音楽クリエイターはそういった音源が収録されたサンプリングCDを利用していたことをご存知でしょうか?
そんなクラシックな存在であるサンプリングCDに焦点を当てた特集記事が、音楽機材メディア・MusicRadarによって公開されました。
その記事、「10 classic sample packs that changed electronic music」では、90年代〜00年代の間に発売されたハードコアなジャングルブレイクからジャンルを超えたクラブサウンドまでの10枚の印象的なサンプリングCDを紹介されています。
記事で紹介されているのは、以下の10枚です。
1. Zero-G Datafiles 1-3(1991)
現在でも多くのサンプルパックを販売しているサンプルパックメーカーのZero-Gの設立者によって、レコードからサンプリングされたサンプル音源を収録したもの。その多くはサンプルのクリアランスを取得していないため違法だが、絶大な人気を誇り、90年代初頭の黎明期にあったダンスミュージック・シーンにおいて、ブレイクビーツ、ベース、ボーカルサンプルの事実上の供給源となった。
2. Polestar Magnetics The X-Static Goldmine(1992)
90年代のDJやプロデューサーにとって定番となっていたサンプリングCDで、こちらも先述のZero-G Datafiles 1-3と同じくサンプルのクリアランスを取得していないものがほとんど。しかしながら、クラシックなヒップホップのブレイクやシンセのスタブをはじめ、ローファイな質感の楽器やボコーダーループまで、数々の秀逸なサンプルが収録されている。ちなみに調べてみると1998年に復刻されており、日本でも発売されていた模様(現在は廃盤)。
3. Zero-G Ambient(1995)
1990年代のUKレイヴシーンの多幸感あるバイヴスとは反するダークなアンビエントのためのサンプルを収録したもの。その素材の多くは、90年代半ばに勃興した初期のドラムベースへと発展する、ダークで知的なハードコア系の曲で聴くことができる。
4. Spectrasonics Distorted Reality 1(発売年不明)
かつてRolandのチーフサウンドデザイナーを務め、ソフトシンセ「Omnisphere」の開発元であるSpectrasonicsを設立したEric Persingによるサンプル集。そのサウンドは現在もOmnisphereの音源ライブラリーの一部として受け継がれているとのこと。
5. Creative Essentials Jungle Frenzy(1996)
ジャングルに特化したサンプル集。当時人気のあったジャングル向けサンプリングCD「Jungle Warfare」の後続シリーズとして、それよりも低価格で提供されたことが特徴。しかしながら、収録されているサンプルは、前作よりも良質で幅広いサウンドになっており、ドラムやベースだけでなく、アドリブ・ラガボーカルのサンプルなどもあり。
6. Zero-G Planet of the Breaks(1998)
マルチインストゥルメンタリストで知る人ぞ知るビート職人・Shawn Leeによるブレイクビーツ集。著作権フリーで合法的に使用できることも特徴のひとつ。その後3つの続編もリリースされている。
7. Ueberschall Houseworx!(1999)
ハウスクラシック「Horny」で知られるMousse T.によるサンプル集。セッションミュージシャンによって本物の楽器で演奏されたループが収録されており、初期のハウス向けサンプリングライブラリの傑作。質の高いボーカルやバウンシーなビート、使い勝手のいいマルチサンプルなど、生音系のハウスに最適な内容になっている。
8. Best Service Horny Clubsounds(1999)
先述の「Houseworx!」同様、ハウス向けのサンプル集。ハウスの定番系サンプルが数多く収録されていることが特徴だが、オルガンのスタブやエレピのコードといったサンプルの質は高い。
9. Vengeance Essential Clubsounds Vol. 1(発売年不明)
トランス、ハードトランス、ハードスタイルなどに特化したサンプル集。ループ、ボーカル、FXの質も高いが特にドラムサンプルに定評があり、ダンスミュージックのサウンドを変えたライブラリとして評されている。
10. Goldbaby Tape808(2007)
Rolandのドラムマシン「TR-808」の実機からサンプリングされたドラム音源集。テープレコーダーのAMPEX 351で録音された本物のアナログサウンドを楽しめる。
これらのサンプリングCDのほとんどは現在廃盤になっているため入手は困難ですが、近いテイストのサンプルパックはSoundmainのストアをはじめ、その他のサンプルプラットフォームでも発見できるはず。
今回、ご紹介したサンプリングCDのことが気になった人は、MusicRadarの元記事でより詳しい情報をキャッチアップしてみてはいかがでしょうか?
文:Jun Fukunaga
【参考サイト】
10 classic sample packs that changed electronic music | MusicRadar
https://www.musicradar.com/news/10-classic-sample-packs-changed-electronic-music-1