
人気EDMフェス「Tomorrowland」がライブストリーミングでドルビーアトモスを採用。オンラインライブはどう変わる?
現在、ベルギーで開催中の人気EDMフェスのTomorrowlandが、8月4日まで連日ライブストリーミングを実施中です。
コロナ禍の影響により、2020年と2021年の開催を延期していたTomorrowlandですが、3年ぶりとなる今回の開催では、従来の2度の週末にわたる開催から3度の週末にわたる開催へと変更されており、800組以上のDJが出演することも大きな話題になりました。
また2019年までは40万人の集客を誇っていた同フェスですが、今年は日程が増えたこともあり、その集客人数も大幅に増加。60万人の集客があると発表されています。
今年のライブストリーミングは、8月4日まで21日連続で行われますが、この試みはTomorrowlandとしても初とのこと。
ライブストリーミングは、Tomorrowlandの公式サイトとTomorrowlandのアプリ、YouTubeを通じて行われており、イベントがある当日はその様子がリアルタイムで配信。それ以外の月〜木はアーティストのインタビューや週末のリプレイ動画が配信されるなど、ダンスミュージックファンにとって見応えのあるものになっています。
また今回Tomorrowlandは、ドルビーアトモスに対応したライブストリーミングを実施しています。
ドルビーアトモスは、映画館などで採用されている立体音響技術で、これにより従来のステレオ再生より立体的で臨場感あふれるサウンドが体験可能となります。
音楽シーンでは現在、Apple MusicやAmazon Musicがこの技術を採用しており、ドルビーアトモスによる空間オーディオ対応の音源を配信。空間オーディオの特徴は左右に加えて高さ方向も含んだ立体的な音空間を音楽リスナーに提供できるところにあり、これによってアーティストの生演奏をその場で体験しているような没入感のあるサウンドで音楽を楽しめます。
Tomorrowlandによるとヨーロッパの音楽フェスがライブストリーミングにドルビーアトモスを導入するのは初とのことですが、最近ではこのようなダンスミュージックシーンでもドルビーアトモスのような立体音響にアプローチするアーティストが増えつつあります。
例えば、日本を代表するテクノDJ/プロデューサーのKen Ishiiは、今年5月にソニーの立体音響「360 Reality Audio」でリマスターした過去作品をリリースしたほか、今年7月には新たに新曲「Liver Blow」を同フォーマットでリリースしており、ダンスミュージックの分野から立体音響にアプローチするという新たな試みを行なっています。
またApple Musicでは、空間オーディオ導入により、各アーティストのリスナー数が増加する例も見られています。Billboardのインタビューによると、そのような傾向は新譜に限ったことだけではなく、旧譜で50%増加する例も見られているとのことです。
このように現在、空間オーディオをはじめとした立体音響音源はリスナーのリスニング体験を変化させるだけでなく、アーティストのセールスにも影響を及ぼしつつあります。
また昨年、AppleのDAW「Logic Pro」に空間オーディオ制作のためのオーサリングツールが追加されるなど、現在は立体音響音源制作にアーティストがアプローチしやすい環境も少しずつ広がっています。
Tomorrowlandのような世界的音楽フェスがライブストリーミングでドルビーアトモスを導入にしたことで、今後、アーティストの間でもそのような立体音響に対する興味関心がより高まっていくことになりそうです。
なお、Tomorrowlandのドルビーアトモスによるライブストリーミングは、現在、Tomorrowlandの公式サイトと公式アプリを通じて、無料で体験可能です。立体音響に興味ある人は一度視聴してみてはいかがでしょうか?
文:Jun Fukunaga
【参考サイト】
Follow the magic of Tomorrowland via One World TV & One World Radio
https://tomorrowlandbelgium.press.tomorrowland.com/follow-the-magic-of-tomorrowland-via-one-world-tv–one-world-radio