
ヴァン・ヘイレン「Jump」で知られる「OB-X」の無料エミュレーションソフトシンセ「DiscoDSP OB-Xd」
音楽機材を紹介するメディア・MusicRadarが、アナログモデリングによるエミュレートシンセサイザーを紹介するシリーズを開始。シリーズ第1回目では、discoDSPによる無料のソフトシンセ「DiscoDSP OB-Xd」が紹介されています。
DiscoDSP OB-Xdは、アナログシンセの名機として知られる「Oberheim OB-X」を元に開発されたソフトシンセ。1979年、Sequential Circuits Prophet-5の対抗機として市場に投入されたOB-Xは、ファットで厚みのあるコード・サウンドが評価され、マドンナ、クイーン、プリンスをはじめ、多くのアーティストに使用されてきたモデル。その中でもヴァン・ヘイレンの名曲「Jump」のイントロはよく知られているのではないでしょうか?
OB-Xdの特徴は、ソフトシンセでありながらもアナログ特有の不完全性までを再現している点にあります。ソフトシンセに対しては、そのデジタル的な正確さが個性や音色の暖かみを損なうとの批判もあります。こういった批判の声は、1980年代半ばにデジタルシンセサイザーが登場して以来、今日まで議論が続いています。
アナログシンセサイザーは、ソフトシンセとは異なり、ピッチの安定性やオシレーターの微分音的なクセやズレがあり、チューニングに狂いが生じることも少なくなりません。またフィルター、エンベロープ、LFOは、それぞれの部品の品質によって独特なニュアンスが生まれ、それがその機体特有のクセになることもあります。
さらにフィジカル製品であるアナログシンセは、コンディション維持のメンテナンスの必要もあり、その面ではアコースティック楽器と近いものがあると言えるでしょう。一方で、アナログシンセをエミュレートしたソフトシンセにはそのような物理的な問題を解決するという側面もありますが、それ故に先述のアナログシンセならではの良さを損なうというデメリットにもなっていました。
しかし、近年はソフトシンセのひとつ、もしくは複数のパラメータに焦点を当てた高度で繊細なランダム化アルゴリズムやエミュレートされたアナログシンセのオーディオ信号経路と出力アンプの音色の色付けをエミュレートすることが可能になるなど、デジタル技術が大きく発展。これにアナログシンセの再現性が高まったことで実機とエミュレートシンセの音色のギャップもなくなりつつあります。
現在は、ArturiaやIK Multimediaなど、往年の名機と呼ばれるハードシンセを高い再現性を持ってソフトシンセ化する多くの機材メーカーは少なくありません。しかし、そのようなエミュレートシンセは通常、それなりの価格で販売されますが、DiscoDSPは忠実に再現したOB-Xのエミュレートシンセを非商用に限り、無料提供を行なっています(商用利用する場合は49ドルでライセンス購入する必要あり)。
なお、MusicRadarの記事では、OB-Xdのオシレーターやフィルター、モジュレーション、ボイス、コントロールなど基本的なパラメーターの概要や即戦力となるプリセットが紹介されています。特に「Bank 001 – J3PO Factory – Leap」もしくは「BANK 011- Dont Jump IW」は、先述のヴァン・ヘイレン「Jump」のサウンドを模したものになっており、今すぐその音色を使ってみたい人にはおすすめです。
DiscoDSP OB-Xdは、Mac/WindowsとiOS向けのアプリ版が用意されており、以下のリンク先からダウンロード可能です。
https://www.discodsp.com/obxd/
文:Jun Fukunaga
Fantastic (free) synths and how to use them: DiscoDSP OB-Xd | MusicRadar
https://www.musicradar.com/how-to/fantastic-free-synths-discodsp-ob-xd