2022.06.20

見過ごされがちな“プロデューサー”のキャリア向上を支援。新たなビート販売プラットフォーム「BeatExchange」に注目

タイプビートとサンプルパックを利用するアーティストや音楽クリエイターは年々増えていますが、それに伴い、それらを取り扱うオンラインマーケットプレイスの需要や市場規模も拡大しています。

その中でも注目したいのが、インディペンデントアーティストを中心とする音楽配信プラットフォームの「UnitedMasters」が新たに立ち上げたビートの売買のためのプラットフォーム「Beat Exchange」です。

現在、UnitedMastersを利用するアーティストは、Beat Exchangeを通じて、NasやDrake、Beyonceなどを手がけるグラミー賞受賞プロデューサーのHit-BoyやLil Durkのヒット曲「Headtaps」を手がけるDavid Morseなど、ヒップホップシーンの有名プロデューサーや新進気鋭のプロデューサーが提供するビートの購入やライセンスを利用することができます。

デスクトップアプリとモバイルアプリ(iPhoneとAndroid)で利用できるBeat Exchangeの特徴は、「特定のサウンドを探す時のビートのブラウジングを簡素化し、新進気鋭のプロデューサーと定評あるプロデューサーに焦点を当てたプレイリストを通じて発見を促す」ようにデザインされているところにあります。

またビートを販売するプロデューサーには、UnitedMastersの「SELECT」というプログラムに参加することでビートの売上を100%保持するか、前払金なしで売上の90%を保持するかのオプションが提供されます。

さらに「Non-Exclusive(非独占)」「Exclusive(独占)」「Buyout(買い切り)」の3つのライセンスを選択でき、プロデューサーは価格や利用期間の長さなど“販売ニーズ”をカスタマイズすることも可能です。

UnitedMastersによると、その他にもBeat Exchangeは、ESPNやNBAのような「世界最大のブランド」とテレビ番組、映画、ビデオゲームでビートを紹介する機会やプロデューサーに収益化またはライセンス供与する独占的な機会を提供するとのことです。

またUnitedMastersは、Beat Exchangeの立ち上げと同時に現在シーンで活躍するトッププロデューサーにスポットを当て、彼らが成功するきっかけになった最初のヒット曲の裏話を紹介する「Who Made The Beat?」というコンテンツシリーズも開始しています。

UnitedMastersの創設者兼CEOのSteve Stoute氏は、Beat Exchangeについて、以下のように述べています。

「プロデューサーは時代のサウンドを決定する存在でありながら、見過ごされがちです。私たちの目標は、インディペンデントアーティストに、音楽業界でのキャリアを築くだけでなくそれを持続可能なものとして成功させるための最高級のツールを提供することでした。今、私たちはプロデューサーにアーティストへのアクセスだけでなく、クリエイターとしてふさわしい評価を与えています。Beat Exchangeは、優秀なアーティストとプロデューサーを直接結びつけることで、彼らが自分のクリエイティブな旅のオーナーシップを持ち続けられるようにするという、現状、私たちが挑戦するべきもう1つの方法です」

またベッドルームでビートメイキングを始め、Myspaceでそのトラックを公開することからプロデューサーとしてのキャリアをスタートさせたHit-Boyも以下のように述べています。

「新進気鋭のプロデューサーとしての苦労や大変さはよく分かっています。UnitedMastersと一緒に仕事をすることで、若いプロデューサーやアーティストに、私が手に入れられなかったものを手に入れてほしいと思っています」

近年は、Spotifyがアーティストに楽曲を提供するソングライターやプロデューサーにフォーカスした公式プレイリストの「Works」や「Written by」を公開するなど、これまでアーティストに比べてスポットライトが当たりにくかった音楽制作の裏方も同様に評価する動きが見られるようになりました。

また昨年SpliceとSoundCloudは共同で新鋭アーティスト、プロデューサー、サウンドデザイナーを支援するためのコンテスト「Nova」を立ち上げ、受賞者にSpliceでのオリジナルサンプルパック販売の機会を与えるなど、多角的に音楽クリエイターのキャリアを伸ばすための取り組みを行っています。

今ではTikTokを始め、SNSでのバイラルヒットをきっかけにブレイクする無名の新人アーティストはそう珍しくなくなりましたが、そのようなアーティストにトラックを提供したことでキャリアの成功のきっかけを掴む音楽クリエイターも増えています。そういった状況に音楽ビジネスシーンが注目し、継続的に支援していく体制が整えられていることは音楽クリエイターにとって非常にポジティブな動きだと捉えることができるのではないでしょうか?

Beat Exchange
https://unitedmasters.com/beat-exchange

文:Jun Fukunaga

【参考サイト】

UnitedMasters, valued at $550m, just launched its own beat marketplace – Music Business Worldwide
https://www.musicbusinessworldwide.com/unitedmasters-valued-at-550m-just-launched-its-own-beat-marketplace/