
音楽制作テクニック「サイドチェイン」とは? 多様なジャンルに設定可能な専門プラグイン「Kickstart 2」を通じて解説
現代の音楽制作において欠かすことのできない制作テクニックのひとつが、「サイドチェイン」を活用し、グルーヴを生み出すテクニックです。
サイドチェインとは、エフェクトのかかり具合を、エフェクトをかける対象の音とは違うトラックの音で定めること。たとえば、ベースにかけるコンプレッサーのかかり具合をキックの音で定める場合、キックが鳴る瞬間だけ音量が絞られるようになります。これにより単調に鳴っているベースに対し、キックの音と同期したビート感が付与。トラックにウネリが加わり、グルーヴ感が生まれます。
現在サイドチェインは、さまざまな音楽ジャンルの楽曲制作で使用されており、ボーカルやウワモノに対しても使用されています。しかし、先述のベースとキックの組み合わせにおいてわかりやすく効果が現れることもあって、EDMを始め、テクノ、ハウスなど4つ打ちジャンルのグルーヴ感を出す目的で多用されている印象があります。
サイドチェイン自体は、一般的なDAWに付属するコンプレッサー・プラグインでも使用可能ですが、その効果をより簡単に得られるようにしたのがサイドチェインに特化したプラグン「Kickstart」です。
Kickstartは、EDMシーンを代表するプロデューサー/DJのNicky RomeroとプラグインメーカーのCableguysが共同開発したプラグイン。これまでに有名EDMプロデューサーから趣味でDTMを楽しむアマチュアトラックメイカーまで多くのユーザーに愛用されてきたことで、今ではこの手の定番プラグインとして知られています。
そんなKickstartの最新モデル「Kickstart 2」が最近リリースされました。
まず、前身モデルと同じく簡単にサイドチェイン・コンプレッションによるダッキング効果(ある音を避けるように音量をコントロールする効果)を自分のトラックに与えることができます。
またプラグイン使用時には16種類の波形プリセットから任意の波形を選択できるほか、サイドチェインのかかり具合と原音のミックスバランスの調整や、1小節に4回、8回といった具体でサイドチェインがかかった音をウネらせる回数設定などが可能です。
新機能としては、キックの長さに合わせたサイドチェインが可能な可動式スロープが追加されました。また自動的にキックパターンを追従できる機能が追加されたことで、4つ打ち以外のより複雑なリズムパターンのキックに対してもより効果的にサイドチェインが使用できるようになっています。
さらに注目したいのが、帯域スプリットが可能なマルチバンド機能の内蔵です。この機能により中高音域はそのままに、低音域のみにサイドチェインを簡単にかけることができます。
また、プラグインのディスプレイにビジュアルキックビューが追加されたことで視認性も向上。これによりユーザーはサイドチェインのかかり具合をキックとベースの波形で確認できるようになりました。
DTMを始めたばかりで知識や使用経験が少ない初心者の場合は、プロの音源を聴いた時に感じるようなウネりのあるグルーヴ感を出すことはなかなか難しい。知識や複雑な設定を必要とせず、簡単にサイドチェイン・コンプレッション効果が得られるKickstartのような専用プラグインは、そうしたニーズに応える心強い味方になるはずです。さらに新機能を追加し、より多くのジャンルにサイドチェインを適用させやすくなったKickstart2は、4つ打ちダンスミュージック以外のクリエイターも試してみる価値があるのではないでしょうか。
Kickstart2の販売価格は16ドル(約2030円)となり、Kickstartの公式ウェブサイトで購入できるほか、前モデルのユーザーは5ドル(636円)でアップグレードも可能です。現在はNicky RomeroによるKickstart 2の機能解説動画やCableguysによる5分間で基本的な使い方が学べるチュートリアル動画も公開されているので、気になった場合は、事前にそちらをチェックしておくこともおすすめします。
文:Jun Fukunaga
【参考サイト】
Nicky Romero and Cableguys push out Kickstart 2, bringing MIDI and audio triggering capabilities | MusicTech
https://musictech.com/news/nicky-romero-cableguys-kickstart-2-plug-in/