
持続可能なクリエイターライフとは!? バンドマンと行政書士の“複業”を実践する 「LITE」ギタリスト・武田信幸さんに聞く【独立系クリエイターのための音楽著作権HOW TO! Vol.3】
2021年からスタートしたSoundmainの配信番組、【独立系クリエイターのための音楽著作権HOW TO!】も第3回を迎えました。今回のテーマはズバリ「持続可能なクリエイターライフとは!?」。スタートアップの融資や補助金等による資金調達の専門家でありながら、インストロックバンド「LITE」のギタリストとして国内外でのフェス出演やツアーをこなす「行政書士とミュージシャン」のパラレルワーカーである武田信幸さんにお話を伺いました。

日本には「ミュージシャンたるもの音楽一本で食っていってなんぼ」なんて風潮がありますが、ちょっと待って! それって本当にミュージシャンみんなが向かうべき人生の目的でしょうか? クリエイターであれば誰しもが感性の赴くままに表現したいことや、例えお金にならないとしても挑戦してみたいことがあるはず。
この多様性の時代で、独立系クリエイターがもっと自由にやりたいことを実現していくための人生のHOW TO!を教えてもらうべく、今回の配信に参加させていただいた私ガールズスカロックバンド「ORESKABAND」のドラムス・作詞担当のtaeが配信内容をレポートします。
二足のわらじのイキサツ
20代の頃はアルバイトをしながらバンド活動をされていた武田さん。「テレアポのバイトを12、3年やっていました。シフトの融通がきくんですよね。でも、年齢を重ねるにつれてこのまま一生いけるとは思えなくなって」と、バイトとバンドの生活に限界を感じはじめたことを機に資格を取ろうと考えたそうです。では、数ある資格の中でなぜ行政書士を選ばれたのでしょうか?
「周りのバンドマンたちが30代に差し掛かった時、軒並み音楽を辞めてしまったんです。その理由を聞いていくと「お金が……生活が……」というところだったんですよ。じゃあそのお金をなんとかできたら音楽を続けられるんじゃないかと。僕は同じ立場として共感できるからこそ、みんなをサポートできる何かがあるんじゃないかと思って、“お金”と“法律”に強い国家資格があるといいなと考えて行き着いたのが行政書士でした」(武田さん)
武田さん、なんて仲間想いな! 実際バンドマンって、年齢や世代ごとにみんな同じような悩みを共有しているんですよね。それって、その中の1つのネックを解消できたとしたら、何百人、何千人のバンドマンが救われるってことなんですよ。そこを真剣に見据えて行政書士を選ばれた武田さん、カッコいいです!
副業ではない“複業“で、時間も収入も増す!
クリエイター代表として今回も番組に参加した“明細の鬼”エンドウ.さんも、音楽を続けてきた中で「(報酬を)取りっぱぐれたくない!」という思いから(エンドウ.さん談)、自分で印税や著作権について調べているうちに自然と知識が増えて、ついには日本音楽作家協会の会長に就任されたとおしゃっていました。もう、なんか凄すぎて……だって、“日本音楽作家協会”ですよ!? 真っ赤な髪のパンクロッカーが! 探究心に溢れるエンドウ.さんの、まさに人徳のなせる業というやつですね。
そして、やまださんがおっしゃった「でも日本では、ミュージシャンがお金の話を始めると『そんな話してる暇があるんだったら、もっとイイ音楽作った方がいいんじゃない?』とか言われるじゃないですか」の言葉に一同共感。そして「イイ音楽を作るための、そのためのお金なんですよね」と語る武田さん。そうなんです! 音楽を“続けていく”ためにも、お金にはきちんと向き合ってこそ健全な活動なんです!
武田さんは出版された本の中で「これからは“副業”ではなく“複業”の時代」と提言されています。つまり、いわゆる“サブワーク”ではなく、「やりたい!」と思う“本業レベルの仕事”をいくつもやって、お金もきちんと稼いでいこうと。武田さん自身は現在、ミュージシャンと行政書士に加えてなんと、不動産投資という三足目のわらじもお持ちなんですよ。

こちらのグラフからもバンドに充てられる時間と収入が年々増えていることがわかります。収入が増えることで経済的不安から解放されて精神面が安定し、増えた時間を使って自分のクリエイティビティをさらに高められるという、まさに理想的なクリエイターライフですよね!
持続可能なクリエイターライフの大きな味方は「補助金・助成金」
行政書士になったことで音楽の分野で使える「補助金」や「助成金」があることを知った武田さんは、自身のバンドでも補助金を活用して海外ツアーを行ったそうです。しかもなんと、しっかりちゃっかり黒字になって帰ってきたんですって!!
エンドウ.さんもおっしゃっていましたが、バンドで海外ツアーするのってものすごーく経費がかさむんですよ。しかも、集客や売上の見込みが想定しづらくて行ってみないとわからないことだらけ。そのドキドキがまた楽しかったりもするんですけどね。でも、やっぱり避けては通れないリスクがある……はずだったんですが! もしかしてそのリスク、避けて通れちゃうんですか!? 詳しく教えて、武田先生!
ということで、そんな私たちのために武田さんは今回、独立系クリエイターが今、活用できる3つの補助金・助成金を紹介してくださいました。それぞれに募集期間や条件があるので、詳細は各ウェブサイトを確認してみてくださいね。
①事業復活支援金

②ARTS for the future!

③アーツカウンシル東京のスタートアップ助成

補助金の審査って何を見られているの?
「ところで補助金の審査って、いったい何を見られているの? 審査基準は何なの?」と、疑問が浮かんできませんか? 私も過去に補助金の申請をして通らなかった経験があり、とっても根に持っ……いや、気になっていたのでここぞとばかりに武田さんに聞いてみたら、このように教えてくださいました。
「実は答えは書いてあるんです。補助金には『募集要項』という補助金の内容について詳しく書かれた長い文章があって、その中に『審査項目』とか『補助金の目的』というのが必ず書いてあります。審査では、その『趣旨に沿った内容であるか』が重要視されるので、申請する活動や企画の内容が補助金の目的に合っていることをしっかりアピールすることが大切です」(武田さん)
なんと、そうなんですね! たしかに私が企画書を作ったときは、ついつい自分の熱い想いを伝えることに注力しすぎていたのかもしれない。一方通行のラブレターじゃダメなんですね……次回からは、ちゃんと相手のことも考えながら書いていくようにトライしてみます!
最終的には“福業”に
番組終盤でやまださんは「クリエイターたちが補助金を活用して、やりたいことにどんどん挑戦していけるって、夢があるなと思いました。みんなやりたいことをやって“幸せ”になりたいから、そのためにお金のことをきちんと考えて、生活にも向き合っていく。だから、“複業”も最終的には“福業”になっていくと思う」とコメント。いただきました、パワーワード、“福業”! 胸に刺さります。
さらに武田さんも「80~90年代の頃はバンドも第一線で“食える”職業でしたが、僕は逆にその時期が特殊だったように思います。時代を遡ってみても、バッハのような歴史的な音楽家たちもパトロンからの支援を受けて活動していたんですよね。そして今、音楽はそこに戻ってきているんじゃないかと考えたりします。だから音楽を続けながら、音楽から繋がっていく何か好きなことを突き詰めていけば必ず形になると信じていますし、それこそが“福業”になっていくと思います」と締めくくられました。
今回、私もこのブログのライターとして、さっそく複業ならぬ“福業”をさせてもらうことができました! 配信に参加させていただいて、これからのクリエイターたちが複業化することって、個々の収入や時間を増やすだけじゃなく、何かあったときにクリエイター同士が互いに助け合える様々なスキルを持つことにもなるんだと気付かされました。そうやって協力し合いながら新しいものを作っていく。そんな強靭で豊かなクリエイターコミュニティーをみんなで築いていけたらいいなと思いました。
最後に改めて、武田さんの本のご紹介を。「難しい本は苦手〜」という方にこそおすすめしたい!「そんなあなたのこと、わかってますよ!」と言わんばかりに、今回番組内でお話しされた「複業」「補助金・助成金」について、メチャクチャわかりやすく書かれています。配信を観て少しでも興味を持たれた方は是非ご一読を!

さて、3回目の【独立系クリエイターのための音楽著作権HOW TO!】、いかがでしたか? 私たちには「複業=好きな仕事をいくつもやる」という生き方を選ぶ自由があって、それは「自分らしさ」を追求していけるということ。 その個性が、これからの表現や創作活動にどんな影響を与えていくのか楽しみでなりません! これからも共に充実したクリエイターライフを目指していきましょう! それでは、またどこかで〜!
文:tae(ORESKABAND)