
AIを使った音楽制作の可能性は広がるか? SpliceがAIベースの無料ループ作成アプリ「CoSo」を発表
近年、音楽制作におけるサンプルパックとAI作曲支援ツールの重要性が増している傾向が見られます。
最近ではサンプルパックに含まれている既存のサンプルループを使用したTrippie Reddの「Miss The Rage」のようなヒット曲が生まれているほか、
AIを搭載したコード進行作成やマスタリング、サンプル管理のための作曲支援ツールも増えています。
そんな中、サンプルプラットフォームのSpliceは今月、ランダムに割り当てられたSpliceのサンプルを重ねて短いループを作成できる「CoSo」を発表しました。
Spliceが“音楽制作者に力を与えるもの”であり、“音の発見のプロセスをひっくり返す”と説明するCoSoは、AIを活用した作曲支援サンプラーアプリ。
ユーザーはアプリ上でジャンル、キー、テンポを選択後、ベースサンプルの上にドラムサンプルを重ねたり、パーカッションサンプルの上にボーカルやシンセのサンプルを重ねるなどして、ループを制作することができます。またスワイプしてサンプルを削除したり、長押しして特定のサンプルをソロにするといった操作も可能。さらにそこで作ったループをDAWに取り込んだり、書き出したループをTikTokにオリジナル音源としてアップロードすることもできます。
SpliceのML&Audio Science Innovationチームのリーダーを務めるAle Koretzky氏は、「この技術を通して、より豊かで多様な音の選択肢が湧き出すことで、驚くような新しいアイデアが生まれると信じています」とコメント。
また「ある人は音を発見するために、またある人は音楽を作るために使うでしょう。Spliceは、アーティストを擁護し、あらゆるキャンバスの中心に人間を据えています。インテリジェントな発見、キュレーション、創造を統合することで、クリエイターがどこにいても瞬時にインスピレーションを得られるよう支援したいと考えています」と述べています。
ちなみに今年2月にはここ日本でもプロデューサー/DJのCarpainterが、作曲時にソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)のAIアシスト楽曲制作ツール「Flow Machines」を取り入れたシングル『Answers』をリリースしています。
また楽曲制作時のFlow Machinesの印象については、「操作よりも“共作”という感覚がありました」と語っていますが、筆者としてはここにAIと生身の音楽クリエイターの良き関係性が表れているように思いました。
確かにひと昔前までは、“AIは生身の音楽クリエイターの仕事を奪うかもしれない”という危機感があったと思います。しかし、AIを使ってできた音楽と言っても全てAIが作曲しているわけではありません。
「Plugin Boutique」のジョシュア・キャスパー氏が語るように、現状はAI作曲支援ツールを使用したとしても、曲をどう構築していくかに関してはまだまだユーザーである音楽クリエイターに委ねられている部分は大きいと言えます。
AIはあくまで作曲を手伝ってくれる便利なツールと捉えておくと、不必要にAIを懸念する必要もなくなるのではないでしょうか?
CoSoのアプリはiOSとAndroidともに無料ダウンロード可能。主な特徴は以下の通りです。
- Spliceのサンプルカタログが利用可能(プレミアムユーザーにはより多くのサンプルが提供される)
- サンプルのスタイル、キー、テンポの変更
- スタック(複数のトラックをまとめたもの)の作成、レイヤーの追加、スワイプ、タップ、タッチ操作
- 保存、送信、共有 – Spliceでサウンドを検索し、DAWで使用可能。またTikTokにアップロード可能
文:Jun Fukunaga
【参考サイト】
End your writer’s block with Splice’s creatively empowering CoSo app | MusicTech
https://musictech.com/news/splice-coso-app/