
ガジェット系シンセにRolandが参入! 知識ゼロでもコードが鳴らせる機種も「AIRA Compact」
近年、DAW以外にモジュラーシンセをはじめ、シンセやドラムマシン、サンプラーなどのハード機材を駆使しながら、音楽制作したり、マシンライブに取り組む人が増えています。
その一方でハード機材はDAWと比べて機材購入のコストが高いイメージがあり、気軽に始めるのは難しいと思っている人も少なからずいることでしょう。そんな人におすすめしたいのが、従来よりも気軽、かつ、リーズナブルにハード機材で音楽制作ができるガジェット系シンセです。最近、最新モデルの「Volca FM2」が話題になったことも記憶に新しいKorgのVolcaシリーズや、teenage engineeringの「pocket operators」シリーズ、IK Multimediaの「Uno」シリーズなどが代表的な機材として知られていますが、これらはコンパクトなサイズ感やリーズナブルな価格帯にもかかわらず、本格的な機能が搭載されているのが特徴です。
そんなガジェット系シンセシーンにRolandが新たに参入。「AIRA Compact」シリーズとして3機種、「T-8」(ビートマシン)、「J-6」(コードシーケンサー)、「E-4」(ボイス・トゥウィーカー)を発表しました。
Rolandは、これまでにも「TR-808」や「TB-303」などの往年の名機にモダンな機能を加えつつ、コンパクト化したシンセシリーズ「Roland Boutique」を展開していましたが、今回の「AIRAシリーズ」ではこれまでになかったコンパクトなサイズ、手ごろな価格を実現。同社が長年にわたって蓄積してきた電子楽器のノウハウと本格的なサウンドを凝縮して搭載したAIRA Compactの3機種は、シンプルな操作で気軽にエレクトロニック・ミュージックの演奏や制作を楽しめる、新しいコンセプトの電子楽器になっています。
T-8では、音を鳴らしながら直感的な操作でドラムやベースのフレーズを作り出すことができます。アナログ時代の電子楽器を最高の状態で現代に蘇らせるRolandの技術「ACB」で再現されたRolandのドラム/ベースサウンド(リズムマシンTR-808、TR-909、TR-606とベース・シンセサイザーのTB-303)が、どこにでも持ち運べるコンパクトなボディに搭載されており、それらを組み合わせて楽曲を構築することができます。

リズムを打ち込むドラムシーケンサーは、6つのトラックを持ち、Rolandの「TRシリーズ」で採用された「TR-REC」と呼ばれる操作システムを装備。操作を止めずにアイデアを形にできるところがポイントです。また「ステップループ」、「パターンシフト」、「プロバビリティ」などのさまざまな内蔵ツールを駆使することで、ダイナミックなパフォーマンスを実現。さらにTB-303から受け継いだノコギリ波・矩形波と操作性で、特徴的なベースサウンドを直感的に調整・加工することもできます。
J-6では、あらかじめ搭載された多彩なコード(和音)を選び、思いついたリズムでボタンを押していくだけでフレーズを作成することができます。

「ACB」で再現した往年の名シンセサイザー「JUNO-60」のサウンドを備えるシンセエンジンを搭載したJ-6では、音楽のコードや理論の知識がなくても、幅広いジャンルに対応する100種類の内蔵コードセットから呼び出し、キーボードを押すだけで自然なコード進行を構築することができます。特にコードの演奏は音楽制作初心者がつまずきがちな部分だけに、これからガジェット系シンセで音楽制作を始めてみたい人にとっては心強い機能だと言えるでしょう。
また、内蔵のコードに動きをつけるアルペジオやリズミカルなフレーズがコードごとに108種類用意されており、ステップ入力によって素早く進行を組み立てることが可能。さらに専用の「フィルター」と「エンベロープ」の操作でサウンドを微調整しながら、「ディレイ」と「リバーブ」のエフェクトでサウンドを自分好みに仕上げることもできます。
E-4は、マイクで入力した音声を印象に残る強烈なサウンドに変化させるなど、用途の幅広い音声の加工ツール。「ピッチ」と「フォルマント」のスライダーを操作してボーカルの音声の高さを調整したり、ロボットボイスに変化させたりすることもでき、「オートピッチ」、「オートハーモニー」、「ボコーダープロセッサー」、「リバーブ」、「ディレイ」などのエフェクトも搭載。また、その場での多重録音によってパフォーマンスを作り上げられるルーパーが内蔵されており、サウンドを切り刻んでユニークな効果をかける「スキャッター」機能も備えています。

ちなみにルーパーを使ったパフォーマンスは、近年ヒューマンビートボックスの世界大会でも種目のひとつになるなど、ビートボクサーの間でも人気になっています。また、人気歌手のアリアナ・グランデもRolandのルーパー「BOSS RC-505」を使用したパフォーマンス動画を公開するなど、ライブパフォーマンスでの使用でも人気になっています。
「AIRA」3機種はそれぞれ個別でも使用可能ですが、シンセサイザーやパソコン/スマートフォンなどの音楽制作アプリ、音楽ガジェットとの接続にも柔軟に対応する拡張性が高いことにも注目です。手持ちのハード機材やDAWと組み合わせて使用すれば、単体で使うよりも作り出せる楽曲の幅を広げることができそうです。
発売日はいずれも2022年5月27日(金)で価格はオープンプライス(市場価格は税込21,890円前後)。これからハード機材で音楽制作してみたい人にとってはそのための最適な入門機になりそうです。
文:Jun Fukunaga
【製品情報】
T-8:https://www.roland.com/jp/products/t-8/
J-6:https://www.roland.com/jp/products/j-6/
E-4:https://www.roland.com/jp/products/e-4/