2022.02.25

Apple Musicでの空間オーディオ導入により、各アーティストのリスナー数が増加。旧譜で50%増加する例も

昨年6月から提供が開始されたApple Musicの空間オーディオが、現在、音楽チャートにも影響を与えていることがBillboardのインタビューでわかりました。

Appleは提供する空間オーディオ音源の数について、正式な数字を公表していません。しかし、Billboardによると、昨年数千曲でスタートしたこのフォーマットの音源数は現在、7倍になっているとのことです。

また、インタビューでAppleは、空間オーディオフォーマットにリマスターした音源を提供するレコードレーベルの音源は、リスニング数が大きく増加していると説明。

例えば、ザ・ウィークエンドは、2016年のアルバム『Starboy』を空間オーディオフォーマットで再リリースしたところ、リリース8週間前とリリース8週間後とでは後者の初回リスナー数が20%増加したとのこと。

その傾向は他のアーティストにも見られるといいます。同じ指標で見た場合、ビリー・アイリッシュの2019年のアルバム『When We All Fall Asleep, Where Do We Go』も同じようなリスナー数の伸びを見せているといいます。さらにポスト・マローンの『Hollywood’s Bleeding』では40%、テイラー・スウィフトの『Lover』では50%のリスニング数が増加しているとのことです。

ちなみにこれらの傾向は比較的最近リリースされた音楽に限ったことではなく、旧譜にも見られます。例えば、空間オーディオフォーマットにリマスターされたビートルズの「Here Comes the Sun」は、初回リスナー数が50%増加しており、そのうちの40%のリスナーは、さらにビートルズの音楽を再生するようになったといいます。

このような空間オーディオとリスナー数増加の関係について、Apple Musicの編集・コンテンツ部門のグローバル責任者であるRachel Newman氏は、「アーティストのバックカタログが、新しい音楽の聴き方によって再び音楽ファンの興味を引いていることがリスニング数の大幅増加からわかります。また、空間オーディオがあらゆるレベル、種類のアーティストにとって非常にアクセスしやすいものであることを確認することは、我々にとっても今後の戦略を考える上で重要なポイントのひとつでした」と述べています。

Apple Musicでは現在、カタログにある全ての楽曲をロスレスフォーマットで再生することもできます。しかし、Apple Music及びBeats担当副社長のOliver Schusser氏は、ロスレスフォーマットをニッチなものだと捉えています。現時点ではロスレスフォーマットの音源を再生できるBlooth接続やワイヤレスのデバイスが存在しないからです。

Oliver Schusser氏は、「私たちは一般市場向けにほとんどすべてのデバイスで動作し、人々が違いに気づくような機能を持たせたいと考えました」と述べており、「現在、全世界のApple Musicの加入者の半分以上が空間オーディオで音楽を楽しんでいますが、実際にその数は本当に急速に増えています。私たちはこの数字がもっと増加することを望んでいますが、今後、その数字は間違いなく私たちが期待する以上のものになるはずです」と今後の展望についても言及。

これらの発言から、現在Appleでは競合他社との差別化要因として、空間オーディオをロスレス配信よりも重要視する戦略をとっていることがうかがえます。

なお、昨年Appleは、自社のDAWソフト「Logic Pro」の最新版に空間オーディオ制作ツールを導入しています。

空間オーディオの活用は、今後アーティストにとっても自分の音楽を広げていくための鍵のひとつになっていきそうです。

文:Soundmain編集部

【参考サイト】

Apple says Spatial Audio is a hit, drawing more listeners to Apple Music | AppleInsider
https://appleinsider.com/articles/22/02/15/apple-says-spatial-audio-is-a-hit-drawing-more-listeners-to-apple-music