
音楽分析プラットフォームViberate、音楽ビジネスのトレンドを占う大規模調査の結果を公開
音楽分析プラットフォーム・Viberateが、音楽ビジネスのトレンドを占う大規模調査の結果を公開しました。これは、5万組のアーティスト、10万個のSpotifyプレイリスト、500万弱の楽曲とミュージックビデオ、500種類の音楽フェスティバル、そしてSpotifyやTikTok、Instagram、Beatport、ラジオなど、主要なソーシャルメディアと音楽チャンネルのデータを分析したもので、以下のページよりダウンロードできます(英語)。
Viberate | 2022 State of Music
https://report.viberate.com/
主要なトピックは次の通りです。
「すべてをひとりひとりに向けて」
2021年に成功したアーティストは、オーディエンスを育てることを大切にしているようです。
プロモーション、マーチャンダイジング、限定公開など、ファンを第一に考えた特別なアプローチをすることが、アーティストの成功の原動力となります。
Twitterでは、Ariana Grandeのファンダム「Arianators」やBTSのファンダム「ARMY」のサポートが、新作を何百万ものストリームに押し上げ、メディアに取り上げられる機会も増えました。
「英語以外の楽曲がメインストリームに」
BTSはほぼすべてのプラットフォームでトップ5に入り、アジアンポップとラテン音楽(特にレゲトン)はYouTubeで素晴らしい年となりました。
多言語音楽はゲートキーパー(※)のいないチャンネルで盛り上がり、英語を話さないアーティストを徐々にメインストリームに押し上げています。
※ゲートキーパー
メディアにおいて、情報を取捨選択する立場の人々のこと。出版、放送、インターネットなどにおける編集者やオーナーを指し、広告主なども含まれる。
「ロックの復権」
特にラジオで、ロックの人気が復活しています。
パンクロックがTikTokで話題になったおかげで、一般的にはジャンルを代表するとは考えられないようなアーティスト(Olivia RodrigoやMachine Gun Kellyなど)が代表を務めていても、そのサウンドは新しい世代に届いています。
「ジャンルの境界線があいまいに」
2021年にブレイクしたアーティストたちは、ジャンルを超えた音楽がかつてないほど人気であることを証明しました。
アーティストとそのリスナーは、従来のジャンル表示よりもムードを好み、その傾向は、特定の場面(ドライブ、勉強、リラックスなど)に合わせて曲を集めた人気のプレイリストにまで及んでいます。
「TikTokでブレイク、Spotifyでキャリアを決定的に」
TikTokが、キャリアの出発点として機能しているようです。
またストリーミング市場ではSpotifyに大きなポテンシャルがあるため、TikTokはストリーミング数の「ブースター」の役割を果たしています。
新進気鋭のアーティストは、戦略的なクロスチャネル・プロモーションを採用しており、TikTokのヒットを確かなストリームに変えたアーティストは、本当の可能性を秘めていると言えるでしょう。
今後はTikTokやソーシャルメディアに焦点を当てた人材発掘やプロモーション活動が増えていくことが予想されます。
「フォーマットとしてのショートビデオ」
TikTokや、Instagram Reels、YouTube Shortsは、理解しやすいのが特徴です。
完璧に洗練されていなくても、視聴者はDIY的なアプローチを歓迎します。
アーティストにとっては、大量のコンテンツの中で目立ち、自分の音楽を宣伝し、ファンベースを増やすために最も有効なフォーマットとなるでしょう。
「デジタルマネタイズの高まり」
2020年以降、ライブイベントやフェスティバルが減少したことで、業界は代替となる収益源を求めてオンライン化を進めました。
2022年には、デジタルマーチャンダイジング、サブスクリプション、パーソナライズされた体験、チップ、NFTなど、マネタイズされたコンテンツの採用が拡大し、デジタルへの没入が進むと予想されます。
「データ分析は新人アーティストの突破口となる」
ストリーム、ソーシャルメディアでのエンゲージメント、ファンベースの増加の大半は、分析された上位1%のアーティストに属しています。
新興アーティストでも広く利用できるようになってきたデータ分析は、誰もが競争力を保つための最も簡単なツールとなるでしょう。
なお、レポートではSpotify、YouTube、SoundCloud、Instagram、Twitter、TikTok、Beatport、ラジオにおける、人気の音楽アーティストや流行している音楽ジャンルの傾向も掲載されています。
例えば、以下はSpotifyとYouTubeそれぞれの分析結果ですが、Spotifyと比べるとYouTubeではラテン音楽が強いことがわかります。


全体的に、音楽業界の2022年におけるキーワードになりそうな点がうまくまとまっており、また各プラットフォームの特徴も丁寧に分析されていると感じました。音楽活動の指針として大変参考になるのではないでしょうか。
文: 三嶋 直道(PIANO FLAVA)
【参考サイト】
Viberate State of Music Report
https://www.digitalmusicnews.com/2022/01/24/viberate-state-of-music-report-on-music-trends/