2022.01.28

Ninja Tune幹部、ストリーミングのロイヤリティ問題に対して「業界全体で解決に取り組むべき」との認識を示す

音楽ストリーミングサービスが普及する中で、音楽業界の世界的な収益は2014年から2020年にかけて、54%以上増加しました。しかし、そのような業界の成長にもかかわらず、自分たちがストリーミングから適正な収益を得られていないと主張するアーティストは少なくありません。この問題の背景にはアーティストと所属するレコード会社が結ぶ契約にあり、問題の核心は、ストリーミングのロイヤリティがどのように計算されているかにあります。また、ストリーミングサービスがどのようにロイヤリティを支払っているのかも、この問題を複雑化させる要因になっています。

そのことから現在では、アーティストが公平な収益を得られるように、ストリーミングにおいて、主流となっている収益分配システムの「プロラタモデル(比例按分方式)」を見直し、新たに「UCPSモデル(ユーザー主体支払方式)」や「アーティストグロースモデル」のような、より公平とされる収益分配システムの導入を検討する議論も進んでいます。

イギリスを拠点とする人気インディペンデントレーベルのNinja TuneのマネージングディレクターであるPeter Quicke氏とデジタルオペレーション責任者のTom MacDonald氏の2人は、最近のMusicTechのインタビューで、インディペンデントレーベルが直面する課題として、ストリーミングのロイヤリティ問題に対する自分たちの立場からの考えを語っています。

Tom MacDonald氏は、この問題について業界全体で解決に取り組むべき問題であるとの認識を示しており、「デジタル音楽以前の時代に作成された契約書が、現在必ずしも目的に合っているとは限らず、支払われるロイヤリティの割合に関する議論の余地があります」と述べています。

また、Peter Quicke氏は「インターネットはこの数十年でさまざまなことを変化させたため、今では古い契約が悪い契約のように見えることもあります。しかし現実はもっと複雑なのです」と説明。「アーティストがレーベルに多くの仕事や自分たちに投資をさせたいのであれば、レーベルが何らかの権利の所有権を持つことは不合理なことではないでしょう。ここで重要なのはアーティストとレーベルが透明かつオープンに契約を結ぶことです」と述べています。

その上でTom MacDonald氏は「Ninja Tuneは、これまで常に50/50のレコード契約に基づき、アーティストと公平かつ、オープンで平等な関係性を築いた上で仕事をしてきました。今後もそのスタンスを継続していくつもりです」とレーベルのスタンスを改めて表明しています。

イギリスは音楽ストリーミング経済とアーティストの収益をめぐる議論を先導しており、昨年7月には、イギリス下院デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会(DCMS委員会)によって、政府に提出する提言を盛り込んだ報告書が公開。昨年12月には、アーティストやソングライターに、現代の音楽ビジネスの文脈では不公平と思われる古い契約を再交渉する権利を与えることを指す“契約調整”の権利なども盛り込まれた著作権(ミュージシャンの権利と報酬)法案も明らかになっています。

文:Soundmain編集部

【参考サイト】

Unlabelled: Do you really need a record label to succeed in 2022? | MusicTech
https://musictech.com/features/opinion-analysis/unlabelled-do-you-really-need-a-record-label-to-succeed-in-2022/

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