
Tracklibが2021年度のサンプリング事情をまとめたレポートを公開。ヒットチャートにもサンプリングが大きな影響
サンプルクリアランスサービスのTracklibが、2021年度のサンプリング事情をまとめた年次レポート「State of Sampling」を公開しました。
レポートでは、Billboard Hot 100の数々のヒット曲、サンプリングのトレンド、重要なクリアランス事例などが紹介されていますが、特に以下のようなデータは興味深いのではないでしょうか?
- グラミー賞の最優秀ラップアルバムにノミネートされた作品の48%にはサンプルが含まれている
- 2021年中にBillboardチャートにチャートインしたアルバムの54%に他の既発曲のサンプルが含まれている
- ドレイクのアルバム『Certified Lover Boy』はBillboardチャートにチャートインしたアルバムのうち、最もサンプリングを活用したアルバムであり、アルバム全体で15サンプルが含まれている
このようなデータから、サンプリングを駆使した音楽制作の需要が再び伸びつつあることがわかりますが、注目したいのはレポートで言及される楽曲のいくつかは、サンプリングクリアランスを得るのが難しいデ・ラ・ソウルのアルバム『3 Feet High and Rising』収録曲のような、数年前には主流ではなくなっていた他の楽曲のサンプリングをベースに構築された楽曲になっている点です。
また、レポートでは「90年代や90年代初期のサウンド、特にクラシックなヒップホップやR&Bのヒット曲をサンプリングする新世代のプロデューサー」が存在することも指摘されています。しかしそのような傾向に対して、Musicallyは、そういったプロデューサーがサンプリングした90年代半ばのR&B曲は、80年代後半のヒップホップ曲をサンプリングしたものであり、その曲自体も70年代のソウル曲をサンプリングしたものである場合が考えられるなど、現在の90sリバイバル的なトレンドのサンプリングにはサンプリングクリアランスの面での複雑さがあると言及しています。
一方で、今年のヒップホップシーンでは、サンプルパックの音ネタを使ったTrippie Reddの「Miss The Rage」がヒットを記録。同曲のようなスタイルを指す新たなサブジャンル「レイジ」への注目度も高まるなど、著作権フリーのサンプルパックがヒット曲を生み出す原動力になりました。
来年はこのようなサンプリング事情がどう変化していくのか、そして、それがどのように音楽シーンに影響を与えていくのかにも注目していきたいところです。
なお、「State of Sampling」の全文は以下のリンク先で閲覧可能です。
https://www.tracklib.com/blog/tracklib-presents-state-of-sampling-2021
文:Soundmain編集部
【参考サイト】
“State of sampling in 2021” report hints at resurgence – Music Ally
https://musically.com/2021/12/10/state-of-sampling-in-2021-report-hints-at-resurgence/