2021.12.28

打ち込みのピアノをリアルにする方法【音楽制作TIPS by PIANO FLAVA ④】

トラックメイカーのPIANO FLAVA(@piano_flava)です。日々の制作で「これは役立つぞ!」と感じたTIPSを紹介するこのコーナー(過去の制作TIPSはこちら)。

第4回目は、打ち込みのピアノ音をリアルにする方法を紹介します。5つの段階を経て、以下のBefore→Afterへと調整していきます。まずはその違いを聴いてみて、頭に入れた上で読み進めていただければと思います。

Before(ベタ打ち)
After(調整後)

ベロシティのランダマイズ

ベタ打ちの状態だと、すべてのMIDIノートが同じ音量なため不自然に聞こえます。

(ノートの色の濃さが同じ=ベロシティが一定になっています)

まず、ベロシティ【註1】をランダマイズ(ヒューマナイズ)【註2】してみましょう。

私が使っているCubaseでは、ランダマイズしたいMIDIノートを選択し、「ロジカルエディター」【註3】を使うと便利です。

プリセット「Random Velocity between 60 and 100」を選択した後、ベロシティが70から90までの間になるように、パラメータ1を70に、パラメータ90に変更しましょう。

(Cubaseに付属する強力なMIDI検索/編集ツール「ロジカルエディター」)

そして、「適用」を押すと、ベロシティがランダマイズされます。

(色の濃さがノートによって微妙に異なっています)
ここまでの調整を施した音源

いい感じになりましたが、まだ少し不自然なので、手動でベロシティを調整しましょう。

(さらにベロシティを調整。青丸で囲った音を弱く、赤丸で囲った音を強くしました)
ここまでの調整を施した音源

タイミングのランダマイズ

続いて、ノートのタイミングもランダマイズさせましょう。同じく「ロジカルエディター」を起動して、以下のように設定、適応します。

(タイミングのランダマイズは、「実行対象」をポジションに、「操作」を相対的なランダム値を加算、で行います)
こまでの調整を施した音源

今回は0から10の間のランダムな値を加えましたが、0から20でも、-10から10でもOKです。

サステインペダルの打ち込み

実際のピアノ演奏ではペダルワークも重要です。

DAWでサステインペダル(ダンパーペダル)を打ち込みましょう。ADSR(アタック、ディケイ、サステイン、リリース)のサステインを調整するのではなく、「アコースティックピアノのペダルを足で踏む動作」をMIDIで打ち込むイメージですね。

(MIDIのコントロールチェンジ【註4】64番(CC64)がサステインペダルです。上側の線と点がサステインペダルを踏んだ状態、下側の線と点がペダルを離した状態になります)
ここまでの調整を施した音源

Mix

EQやリバーブを使うのも、ピアノ打ち込みをリアルに聞かせるには有効ですよ。音がこもっている印象なので、EQで中域~高域を持ち上げてみます。

(300Hzを下げ(③)、1kHz以上を持ち上げています(④・⑤・⑥))
ここまでの調整を施した音源

続いて、新たにリバーブをかける用のトラックを立ち上げ、元のトラックからセンド【註5】で送ってみます。

(リバーブはiZotopeの「PhoenixVerb」。なお、リバーブの後にもEQを重ねてかけています)
ここまでの調整を施した音源

また、ピアノにコンプレッサーも使ってみましょう。

(1176タイプのコンプレッサー・プラグインがおすすめです)
ここまでの調整を施した音源

いい感じになってきましたね。

エンハンサー

最後、全体にエンハンサー(エキサイター)【註6】を使って完成です!

(Wavesfactory「Spectre」は優秀なエンハンサー・プラグインです)
ここまでの調整を施した音源(完成)

以上になります。少しでも参考になれば幸いです!

文・音源: 三嶋 直道(PIANO FLAVA)

用語註(カッコ内は参照先のサイト名)

【1】ランダマイズ(sleepfreaks)

【2】ベロシティ(sleepfreaks)

【3】ロジカルエディター(Cubase公式)

【4】コントロールチェンジ(Wikipedia)

【5】センド(sleepfreaks)

【6】エンハンサー(sleepfreaks)