
JASRACが「フィンガープリント技術」を用いた楽曲特定のトライアルを実施、店舗での安心なDJ利用にも期待
JASRAC(日本音楽著作権協会)が、フィンガープリント技術を用いて利用楽曲を自動的に特定するデバイス「Audoo Audio Meter」を店舗などに設置し、楽曲特定における精度の検証と運用面の課題等を把握するためのトライアルを実施することを発表しました。
演奏権分野において、JASRACがフィンガープリント技術を用いて利用曲目の収集を行うのは、今回が初となります。
フィンガープリント技術とは
フィンガープリント技術とは、指紋による人物の特定と同様に、音や映像から抽出した特徴データ(フィンガープリント)同士を高速に照合することで、音や映像を特定する技術です。
この技術を提供する事業者にフィンガープリントデータを提供することによって、放送や配信における利用報告精度が高まることで、アーティストらに対する収益の還元もより適正で正確に行うことができると期待されています。
Audoo Audio Meterについて
Audoo Audio Meterは、ロンドンのスタートアップ企業「Audoo Limited」が開発・提供するもの。同デバイスは、高性能の集音マイクとモバイルインターネット通信機能を備えており、音声そのものを録音・送信することはなく、楽曲のフィンガープリントのみを取得して、データベースとの照合を行うことができます。
Audoo Audio Meter導入により、店舗などで再生される楽曲のフィンガープリントを常時取得し、データベースとの照合によって特定できた楽曲タイトルを自動的にリスト化します。
トライアル実施にあたり、DJの社会的価値や文化的価値を高め、広く一般に広めていく事を目的とする一般社団法人JDDA(Japan Dance Music&DJ Association)の協力を得て、東京都渋谷区のDJバー「Shibuya CLUB BALL」と「THE ROOM」にデバイスを設置するとともに、JDDAが行うDJプレイ配信「Japan DJ.net-ONLINE-」の収録会場でも検証が行われる予定とのことです。
関係者コメント

JDDA代表理事・Watusi(COLDFEET)氏
あの時、あのクラブでDJがプレイしていた自分の曲。嬉しい反面その権利がそのまま自身に返ってくると想像する音楽家は少ないと思う。その理由でもある包括の裏側で実際どのように曲目が収集されているのか、問題点も様々語られてきたが、具体的な未来は見えてこなかった。今、JASRACが新たなデバイスを使ってそんな未来を切り開こうとしている。トライアルに名乗りを挙げてくれた老舗の音箱に感謝しつつ、一刻も早く具体性のある未来を感じたいと思っている。ブロックチェーンの時代にサンプリングは似合わないから。

Audoo Limited founder and CEO・Ryan Edwards氏
我々はJASRACとのパートナーシップの発表を心より喜んでおり、JASRAC、そして世界中の演奏権管理団体に最も正確なデータを提供することにコミットしております。緊密に連携し、最新のテクノロジーソリューションを提案することで、我々はアーティストへのより正確な報酬の支払いを実現します。 このミッションこそが我々のすべてなのです。
デジタルテクノロジーが音楽にまつわる著作権処理の問題を解決する事例として、今後の展開に注目です。
文:Soundmain編集部